レタル展示会記録11:新作シャツを紹介します。
展示会は終了しましたが、現在Creemaさんで新作シャツの受注を6月17日の23時59分まで承っておりますよっ。
https://www.creema.jp/c/retar-amip/item/onsale
そういえば新作のシャツを紹介してないなと。
今回は“The Stories of the Twelve Apostles:the First Part”(12使徒物語:前編)というテーマで新作6点を作りました。
キリスト教の12使徒をテーマにしたので、日本基督教団王子北教会の沼田和也牧師にトークセッションで12使徒の解説をして頂きました。
実際のキリスト教徒の方もいらして下さり、テーマやシャツの名前に耳を傾けて頂くことも多かったです。
「なぜ12使徒なのか」というと、最初のから「12使徒で行こう!」というわけではなかったんです。
今回はシャツ1着1着に詩的な名前をつけ、展示会全体が、音楽で言えば1枚のアルバムを聴くような感覚で作り上げたかったのです。
デザイン画を描き、パターンを引き、名前を付けていく作業をしていくうちに、シャツそれぞれが個性を持ち、見えない“人物”を感じるようになりました。
もともとざっくり6型くらい新作を作るつもりでしたが、そのときにふと「12使徒とかいいなぁ」と思ったのです。
シャツってやっぱりヨーロッパのものなので、どうしてもそういうヨーロッパの伝統的なテーマを、自分でも切り離せないんじゃないかと思います。
なので、今回のシャツには12使徒一人一人の名前がついております。
※こちら12使徒が扱われる有名な絵画、レオナルド・ダヴィンチの『最後の晩餐』
ではでは一着ずつご紹介を。
“わたしは海を抱きしめていたい/ペトロ”
キリストの一番弟子であるペトロ。
このシャツも今回の展示会で一番最初に取り掛かったんです。
『わたしは海を抱きしめていたい』というのは、坂口安吾の小説の名前から拝借。
私は海を抱きしめる、というより、海に抱かれているような感じもしますが、波を纏うイメージで作りました。
ペトロは漁師であること、そして「岩」という意味の名前を付けられています。
波が打ち付けられる岩のようなイメージから、ペトロを選びました。
このシャツはタック部分が切り替えなしの、一枚の布で出来ています。
ボタンを留めるとフリルになる仕組みです。
また袖口もボタンを留めるとタック細くなる仕組みです。
今回額縁もオリジナルで友人に作成してもらいましたが、こちらはお寺などの波の装飾をイメージしました。
“現代の羊飼い/ヨハネ”
最初衿と袖口にリブを使ったスポーティーなシャツを作りたいな、と思ったのですが、リブの伸縮性を活かしてギャザーを寄せたらどうだろうかと。
そう考えているうちに、羊飼いの服のようなシルエットに。
後ろには昔のフランスの貴族達が着ていたローブ・ア・ラ・フランセーズのような太いボックスタックが入っています。
袖口にボリュームがあり、脇は深いスリットが入っています。
スリットのあきの部分に補強として、ダビデの星をステッチしたガゼットを付けました。
スポーティーな要素とクラシックな要素をミックスしたことから、“現代の羊飼い”と名付けました。
12使徒の構想のキッカケになったのはこのシャツです。
なんとなくこのシャツはヨハネ、とすぐ決まりました。
中性的な美少年のイメージがあるからかもしれません。
また、ヨハネはキリストのことを「神の羊」と言ったことがあるそうで。
そんなことを知って、あぁ、これはヨハネだな、と。
“白い吐息/アンドレ”
このシャツの着想はだいぶ昔からあったのですが、取り掛かったのは一番最後。
途中までユダをイメージしたシャツを作っていたのですが、それは後半に回そうと思い、こちらに差し替えました。
この編みのような部分はラティス・スモッキングという伝統的な技法で、なんとこれは私が文化服装学院に入って、最初の手芸の課題でやったものです。
そのときから、シャツに使ったら可愛いなと。
しかしまぁ、シャツに使うのはなかなか大変でした。
縫うのもさながら、構造を理解し、パターンをコントロールするのが難しい。
何度も試し縫いをしました。
ラティス・スモッキングはいわばタックの集合体なので、伸縮性があるのです。
私は最近「カットソーやニット感覚で着られるシャツ」をよく考えています。
その一つとして、このシャツがあります。
アランニットのようなざっくりとしたイメージで作りました。
なので、こちらも袖口はリブを使用。
身頃がインパクト大なので、袖はシンプルにスッキリと。
ペトロの弟のアンドレは共に漁師であり、スコットランドの象徴的人物だったのだとか。
また象徴的なアイテムとして逆十字があり(スコットランドの国旗)、このスモッキングも逆十字であり、スコットランドの漁師の奥さんが作るアランニットのイメージもピッタリ。
スコットランドのイメージと白いシャツであることから“白い吐息”という名前にしました。
“リアリストの晩餐/フィリポ”
“現代の羊飼い”のところでも書きましたが、今回はクラシックなシルエットやディテールと、スポーティーさや、モダンさのあるイメージをミックスしたものを作りたく。
ドレスシャツの開きの部分がジップになっていたらカッコいいだろうな、と思ってそこから拡げた感じです。
ジップを使うなら、ボタンもスナップにしようと思い、サンプルではウエスタンシャツに使われるような、貝が組み合わされたスナップを使いました。
最初はタイトなシルエットにしていたこですが、パターン引いているうちに、違うんじゃないかな?と。
なので、レタルのメンズでは珍しくオーバーシルエットです。
ちょっとブルゾンと、シャツの合いの子みたいなイメージです。
こう、忙しい人や、合理主義な人、そんな人が着るドレスシャツ、みたいなイメージで“リアリストの晩餐”と名付けました。
12使徒を当てはめるのが大変だったのですが(ストーリーが少ない使徒もいるので)、フィリポは「キリストの一行の食材調達係であった」という記述を読み、これはフィリポだな、と。
“雨の音を聴いた/マタイ”
このシャツも構想は昔からありました。
雨に降られた瞬間のような染色をしてみたい。
グラデーションとは違う、雫のある感じ。
染色をすると、すごくコストがかかるので、今は敬遠してるのですが、このシャツは私自身で染められるので、思い切ってやってみよう、と。
形はごくシンプルにしました。
先に“雨の音を聴いた”という名前を付けて、あとから12使徒を当てはめたのですが、音という言葉から福音書と繋げました。
福音書は、ヨハネ、ルカ、パウロ、マタイの4名が残しているようなのですが、マタイのイメージが強くて。
そしてマタイは徴税人だったんですね。
私は徴税人っていうのが、どういう人間かよくわかっていなかったのですが、沼田牧師とのトークセッションでお伺いしたときに、随分と嫌われる仕事だったのだなと。
そういう“汚れ”みたいなイメージも、マタイと合ってるように思います。
“クールな反逆者/シモン”
まず私はキルトのプリーツスカートが好きなのですが、それをトップスにしても可愛いんじゃないか、というのが発端です。
キルトスカートは冬だけど、白いシャツだし、ノースリーブにして、思い切って爽やかな夏仕様にしよう、と。
プリーツスカートのパターンはそんなに難しくはいけど、いざシャツにするとなると、なかなかパターンが難しかったですね、レディスはバストもあるし。
音楽好きな自分にとって、キルトスカートというのはパンクスの象徴だったりします。
80年代パンクのときは、伝統への抵抗の表現として、ヴィヴィアン・ウエストウッドや、マルコム・マクラーレンが、伝統的なキルトスカートにダメージを加えたりしていましたね。
スカートであるものをトップスにしてしまう、というのは、ある種の逸脱行為かなと。
そんなことから、最初“伝統と逸脱”という名前にしようかと思っていました。
しかし、パンクスのイメージから“クールな反逆者”っていう名前はどうだろう?と。
そんなことを考えていたら、12使徒の中に「熱血党のシモン」がいることを知りました。
シモンは最初は熱血党に在籍していたものの、のちにキリストの元に弟子入りするのだとか。
そういう意味で伝統から逸脱した存在としても、シモンであろう、と考えました。
このシャツは、素材をレースにしても可愛いんじゃないかなと。
色々展開が考えられそうです。
さて、新作6型分は全てご紹介しました。
半ばこじつけなところもあるかもしれませんが、考えていく作業は楽しかったです。
次は後篇で、今回のようにテーマから決めるような0から作る苦労はない分、今回以外の残り6名の使徒をどう表現するか、今から頭を悩ませるところです。
後篇にはユダも作る予定です。
どうぞ後篇もお楽しみに。
そしてご紹介したシャツが気になる方はどうぞCreemaでご注文を。
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