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【特別対談】米国ペンシルベニア州在住の現役paramedicに聞く病院前の救急活動―COVID-19の対応を含めて―

ゲスト:二宮智将(NREMT-P, Medical Rescue Team South Authority)、
ピッツバーグ在住
インタビュアー:成川憲司(元パラメディック、現株式会社フィリップス・ジャパン CC TC クリニカル マーケティングスペシャリスト)

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勤務先の形態

成川:今回、対談ということで、アメリカのペンシルベニア州のparamedic(パラメディック)の二宮智将さんにお話を伺います。私も10年以上前にアメリカのカリフォルニア州のサンディエゴでパラメディックとして活動していたので、現場の最新情報を含めて、いろいろとお聞きしたいと思います。まずは二宮さんのご所属先についてお聞かせいただけますか?

二宮:私は、ペンシルベニア州のピッツバーグの南にあるMedical Rescue Team Southという組織で仕事しています。日本とはシステムが異なるため説明させていただくと、公共機関でもなく、民間企業でもなく、2つの要素が合体したような組織で、街から委託された救急のみの業務を担って仕事をしています。

成川:教育者としての資格もお持ちと聞いています。

二宮:ペンシルベニア州のEMSインストラクターという資格を取得して、EMTのリードインストラクターとしてEMTに教えています。

成川:パラメディック歴は何年になりますか?

二宮:EMTから数えると10年程度、パラメディックとしては、研修を含めると9年程度です。

成川:勤務体系はどのようになっているのでしょうか?

二宮:私の勤務先では、8時間または10時間シフトが基本で、通常、週に5日出勤することになっています。希望すればオーバータイム(追加の勤務)を得られるため、シフトに空きがあれば最長16時間勤務できますが、必ずシフト間に8時間の休憩を挟むことが義務づけられています。

成川:私がパラメディックとして勤務していたころは、シフトは24時間制でした。日本の消防も同じく24時間勤務であると思いますが、二宮さんの会社の勤務形態は最近の傾向でしょうか?

二宮:アメリカでも24時間勤務としている会社もありますが、出動数によって変動がみられます。24時間勤務としてしまうと途中で休憩する時間が取れなくなり危険である、と私の勤務先では考えられています。

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対談中の成川憲司氏(左)、二宮智将氏(右)

勤務内容

成川:先ほど、街から委託された救急のみの業務を担っているとおっしゃっていましたが、病院間搬送も行わないのでしょうか。

二宮:コール911(アメリカの緊急通報、日本の110番と119番の通報先)からの救急事案にしか対応しない組織です。

成川:通報内容はどのようなものがありますか?

二宮:私の勤務先では、外傷は少なく、medical(内因性)の患者が多いです。1シフトで平均4~5回出動しています。街中に待機ステーションが設置されていて、その建物の中で待機します。救急車内での待機は行われません。通報が同時に行われた場合、担当地域をカバーするために待機場所を移動したりして対応することになります。

成川:日本では緊急走行時にサイレンを鳴らすことが義務づけられていますが、ペンシルベニア州ではどのように対応されていますか?

二宮:ペンシルベニア州では、緊急走行すると一般車両がどう対応したらいいのかわからなくなるので危険、と認識されています。緊急性を要さない場合はサイレンを鳴らさずに現場に向かい、搬送時も8割から9割でサイレンを鳴らさないようにしています。

成川:コール911を指令台が受信して、救急車に出動命令が出されてから、現場に到着するまでのレスポンスタイム(現場到着時間)に制限はありますか? 私がサンディエゴの民間救急(AMR)で働いていたときは、市との契約で10分以内に現場に到着できない場合は、ペナルティが課せられていました。

二宮:基本的には緊急走行をしないため、時間の制限はとくに設けられていません。ボストンで勤務していた同僚によると、すべての通報に対しサイレンを鳴らしながら緊急走行をしていたとのことでした。地域によって異なると思います。

成川:重症、軽症を含め、一般的に救急車を要請するとどのくらいの費用がかかるのでしょうか?

二宮:出動内容や処置内容によって変わってきますが、搬送のみで治療をほとんどしなかった場合は、1,000ドル(≒11万円)で、心電図や薬剤投与が必要なALS対応がなされた場合は加算されていきます。また、搬送距離によっても加算されます。

成川:搬送先の選定はどのように行われるのですか?

二宮:アメリカの場合、搬送先に許可を得ることなく搬送します。どこに搬送するかはパラメディックが症状から判断したり、患者の加入している保険に合う搬送先を考慮して決めています。

成川:新型コロナウイルス感染症によって状況が変わっているかもしれませんが、患者を病院に搬送したときに、救急車が待機させられることはあるのでしょうか?

二宮:基本的に待たされることはほとんどありません。長くても20分くらいです。病院のER(emergency room、救急部)の回転率を上げていく対応がなされているため、ERから院内の別の科にもすぐに移されています。

成川:ERで受付を行うのはRN(registered nurse、登録看護師、略称RN。日本では「正看護師」と呼ばれ、准看護師でない看護師のことをさす)でしょうか?

二宮:基本的には、ERでRNに申し送りを行いますが、重度の外傷や脳卒中、心筋梗塞などの場合は、医師が同席して一緒に引き継ぎ、内容を聞いている場合が多いです。心臓カテーテル室や、CT室などに直接運ぶときなどは、医師と歩きながら申し送りをすることが多いですね。

成川:日本では、ドクターカーやドクターヘリと救急車が救急現場でドッキングするケースもみられますが、ピッツバーグではどうでしょうか?

二宮:私の勤務先では、現場に医師を呼ぶことはないですが、市内では、大学病院が研修医をドクターカーで出動させて研修させていることもあります。患者が重症で手術が必要な場合などは、医師を現場に呼ぶことも可能ですが、すぐに現場に駆け付けてもらえるかはわかりません。以前に、転落事故で足を切断することになったときに医師が出動したケースはありました。ピッツバーグは病院が多く、長くても15分程度で搬送できるため、処置をしながら搬送するのが基本です。

成川:911のコール内容に地域性はありますか?

二宮:街の中心部に近い、または富裕層が多い地域では、麻薬やオーバードース(薬物過剰摂取)が多いですね。

成川:現場での死亡宣告のプロトコルについて教えていただけますか?

二宮:明らかに心肺停止で、ROSC(自己心拍再開)の見込みがない場合は、心電図の波形や死斑を確認して、死亡確認ができるようになっています。蘇生の見込みがある場合は蘇生を試みますが、20~30分経っても状態が改善されない場合は、MCのドクターに電話で報告を行います。ERで30分程度行われる処置は、投薬を含め現場でパラメディックが行うことになっています。

成川:DNR(do not resuscitation、蘇生処置拒否)についてはどうですか?

二宮:ペンシルベニア州の場合、医師の署名、患者もしくは後見人が署名しない限り効力がありません。現場で、署名されていないケースをよく見かけます。DNARがあったとしても、家族が現場で覆すことが可能なため、未だに対応にはグレーな部分が多いです。

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活動中の様子(患者から写真掲載の許可を得ています)

病院前の医療従事者の資格

成川:アメリカでは、EMT、パラメディックなどと資格が分かれていますが、最新の情報を教えていただけますか?

二宮:救急車に乗るためには、まずEMT(以前はEMT-basicやEMT-Bと呼ばれていた)の資格が必要です。止血、添え木などのBLS(一次救命処置)が行えます。その上にAdvanced EMT(以前はEMT-intermediateやEMT-Iと呼ばれていた)の資格があります。種類は限られますが投薬が行え、輸液、心電図の読解などのALS(二次救命処置)が行えます。そのさらに上にparamedic(EMT-paramedicやEMT-Pと呼ばれていた)の資格があります。病院前で利用可能なすべての薬剤の投与が行えます。フライトパラメディックなどの資格を取得すると、扱える薬剤の種類や処置の内容がさらに広がります。

成川:NREMT(The National Registry of Emergency Medical Technicians、全米救急救命士登録機構)が資格を定義しているのですか?

二宮:そうですね。NREMTが全米で統一した資格を管理しています。

成川:私が勤務していたときはパラメディック2名で救急車に同乗していましたが、二宮さんの勤務先ではどうですか?

二宮:EMT2名で同乗する場合は、BLS隊として活動します。EMTとA-EMTやパラメディックが同乗した場合はALS隊となります。地域によっては、BLS隊が先発し、ALS隊があとから現場に合流して処置することもあります。私の勤務先では基本的に、EMT1名・パラメディック1名で出動しています。

成川:自分の場合は、パラメディック2名(厳密にいうと、救急現場パラメディック2名体制)での出動であったので、安心感がありましたが、現場でパラメディック1名では、責任を感じませんか?

二宮:基本的に現場では、パラメディックが責任者になって指揮をします。責任も大きいですが、EMTとパラメディックが一緒に働いているとうまく共同して作業できるようになります。例えば、パラメディックが心電図の波形を読んで判断しますが、EMTは心電図を装着できます。挿管もEMTがセットアップし、パラメディックが処置をする、といった具合です。

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NREMTのウェブサイトより

パラメディックの処置範囲

成川:パラメディックの処置範囲を教えてください。

二宮:NREMTが定めるパラメディックの処置範囲でいうと、処置可能な薬剤は80~90種類以上あると思います。資格取得時にすべての薬剤について学ぶ必要があります。ただし、それぞれの現場では、MC医師が扱う薬剤を決めているため、現在私の救急車には20種類程度の薬剤を搭載しています。IN(intranasal、経鼻)、IV(intravenous、静脈内)、IM(intramuscular injection、筋肉注射)、IO(itraosseous infusion、骨髄内輸液)、SC(subcutaneous injection、皮下注射)、PO(Per os、経口)、SL(sublingual、舌下)、transcutaneous(経皮)、inhalation(吸入)、PR(per rectum、直腸)による投与が可能です。アクセスが早く心臓マッサージから離れた部位から投与できるため、心肺停止のときによくIOを選択します。外科的な処置としては、気管切開が行えます。

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ペンシルベニア州でパラメディックが利用可能な薬剤リスト

成川:プロトコルが変わることがよくあるのでしょうか?

二宮:現場のパラメディックからMC医師に薬剤の取り扱い中止や導入などを提案し、検討してもらいます。例えば、毎回使用期限切れで捨ててしまっている薬剤がある場合は、もったいないので、救急車への搭載を続けるべきか廃止すべきかMC医師に状況を報告したりします。

成川:薬剤の管理はどうされていますか?

二宮:冷蔵保存が必要な薬剤は救急車に搭載していません。常温保管と鍵付きの保管です。

成川:それぞれの資格の給料の平均を教えていただけますか?

二宮:現在の勤務地では、平均してEMTが15~20ドル/時、パラメディックが20~30ドル/時だと思います。

成川:パラメディックから消防に異動するケースも多いですか?

二宮:ピッツバーグでは、消防から救急に異動するケースはみられますが、逆はほとんどみられないですね。現在、消防に入るためには最低限EMTの資格を取得していることが必要になっています。両方に所属して働いている人はほとんどいないです。

COVID-19への対応

成川:新型コロナウイルス感染症の感染防護について教えてください。

二宮:2020年3月ころに、N-95のマスクの着用が求められました。ただし、数が少なかったためcounty(郡)が災害用に備蓄していたN-95のマスクが緊急的に消防に配布されました。それでも数が不足していたため、1人3つ程度保有し、それぞれ3日間保管して再利用する、という形をとっていました。その後、私の勤務先ではP-100のフィルターを付けたレスピレーターを使用することになりました。ゴーグルも着用することになりましたが、曇って作業できなくなるため、自費でフルフェイスのレスピレーターを購入して使用することにしました。最近ではガウンも着用することとなっています。髪の毛の露出が気になるため、自分で水泳キャップのようなものを用意し、キャップを着用してからレスピレーターとガウンを着用しています。
 救急車内の装備に変化はありません。自分を守る体制を取っている状況です。自宅に帰った際も、ガレージに洗濯機を置いて衣服をそのまま洗濯できるようにし、持ち物は消毒して、家に入ってからすぐシャワーを浴びるようにしています。
 郡から各病院に消毒液が配布されたので、ERの入り口に消毒液が置かれています。患者搬送後、COVID-19の疑いがあればそれを利用して救急車を消毒しています。

成川:COVID-19のワクチン接種状況はどうなっていますか?

二宮:ピッツバーグの場合、2020年12月末にEMT/パラメディックを含む医療従事者への接種が開始されたので、ファイザー製のワクチンを、2020年12月と2021年1月に接種することができました。4月末時点で65歳以上の住民に対し、優先的に接種が行われていて、私もボランティアとともにワクチンセンターでワクチン接種業務を行っています。

成川:アルバイトとしてワクチン接種を行っているということでしょうか?

二宮:私の勤務先の管轄エリア内に郡がワクチンセンターを設置しているため、郡から勤務先に要請があり、業務として参加しています。ワクチンセンターに看護師は配置されておらず、登録や事務作業に赤十字のボランティア、ワクチンを打つのにパラメディックもしくはAdvanced EMT、ワクチン接種後の15分間の待機時の対応に備えてEMTが配属されています。5月以降は年齢制限なしで一般人もワクチン接種可能となる見込みです(4月時点)。

成川:COVID-19の患者数に増減はありましたか?

二宮:ワクチン接種後は新型コロナウイルス感染症の発症や重症化が減ると思われていましたが、どの会社のワクチンであっても、ワクチン接種完了後でも発症して入院に至るケースが増えていると病院関係者から聞いています。

成川:ワクチン接種の証明書などはあるのでしょうか?

二宮:ワクチンのロット番号などが記載されたワクチン接種済の証明書が渡されるので、常に携帯することになっています。今後、旅行時に携帯していないと隔離対象となる可能性があります。

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COVID-19ワクチンの接種証明書

災害時の対応

成川:ペンシルベニア州でのFEMA(Federal Emergency Management Agency、連邦緊急事態管理庁)などの国の対応はいかがでしょうか?

二宮:全米を管轄しているのがFEMAであり、ペンシルベニア州では州のみのPEMA(Pennsylvania Emergency Management Agency、ペンシルベニア州版緊急事態管理庁)という組織があります。PEMAが地域分けを行っていて、災害時に最小単位で活動できるようになっています。ピッツバーグではRegion-13というグループが作られていて、郡12とピッツバーグの合計13の地域から成ります。台風などの災害が発生したときはすぐにPEMAがRegion-13からボランティアを募り、必要な人員、特別車両などを集めてstrike team(先発隊)を派遣します。その後、ピッツバーグ内に作られているDMATのチームが後発隊として、現場に入ります。救急としてふだん勤務をしていれば、自動的にRegion-13に所属することになります。
 COVID-19のワクチン接種に従事する業務の人手が不足している場合は、Region-13が人員募集を行うこともあります。

成川:資器材などはどうしているのでしょうか?

二宮:FEMAは国の組織であるため、各地に備蓄されています。PEMAも公的機関のため、備蓄しています。Region-13はそれぞれの地域が管轄しているため、資格の単位などの管理も地域内で行われます。

資格の更新(継続教育)

成川:お話を伺っていて、アメリカのパラメディックの活動範囲が広いと思いました。学会などには参加されていますか?

二宮:学会は遠方での開催が多く、休みも取りにくいためなかなか参加する機会がないですね。地元の小さい学会には参加しています。継続教育の授業が提供されていることが多く、参加すると継続教育のポイントとしてもカウントされます。

成川:病院前の救急活動をよりよくしていくための流れはなんでしょうか?

二宮:ペンシルベニア州ではプロトコルが作成されていて、活動のベースとなっています。そのなかで、MC医師が実際の活動方針を決めています。パラメディックとして活動するなかで改善していきたい部分、新たに取り入れたいことがあれば、自分たちで検証して、その結果をMC医師に報告しています。州全体のプロトコルの修正や追加であれば、MC医師から上位層への報告がなされ、最終的には州が是非を判断することになります。
最近では、i-gel®を取り入れたいという意見が出されて、パラメディック間で検証をしているところです。

成川:日本では2年間で128時間の再教育が必要ですが、アメリカの継続教育について教えてください。

二宮:アメリカでは、パラメディックは2年ごとに資格を更新しなければなりません。州の資格の場合は36時間の受講が必要です。病院などがACLS、PALSなどの授業を開催してくれます。また、心筋梗塞の患者への対応の仕方や心臓カテーテル室での治療についての説明、脳梗塞であればCT室での処置の仕方について、院内での対応に関する授業も提供されます。

成川:アメリカでは、州の資格を更新するほかに、NREMTの資格も更新が必要だと思いますが、どのように更新するのか教えていただけますか?

二宮:NREMTでは細かくカテゴリー分類され、学ぶ内容も規定されています。NREMTの資格が更新されていれば、自動的に州の資格も更新されます。NREMTの資格は更新せず州の資格のみを更新していれば、その州内で働き続けることは可能ですが、ほかの州に移住した場合は授業を受ける必要が出てきたりします。私は両方の資格を更新しています。

パラメディックへの道

成川:パラメディックを目指したきっかけは何でしたか?

二宮:父が医療に携わっていたため、医療に興味を持っていました。救急現場での救命率が日本に比べアメリカが高いとの話を聞いて、アメリカの大学の在学中にEMTの資格を取りました。その後パラメディックの資格を取り、現在に至っています。

成川:パラメディックの学校で役に立ったことは何でしょうか?

二宮:アメリカは銃社会なので銃創が多いイメージがあると思いますが、ピッツバーグは治安がよいためか外傷は少なく内因性の患者が多いです。なので、cardiology(心臓病学)やpathophysiology(解剖生理学)などが役に立っています。

成川:内因性疾患は見た目で判断できないのが難しいですよね。

二宮:外傷は止血・輸液・搬送という手順、CPAはACLS(Advanced Cardiovascular Life Support、二次救命処置の中の二次心肺蘇生法)というプロトコルに従えばよいので対応は意外と簡単です。内因性は大元の原因が何で、このような症状が出ているのかを見つけ出すのが大変です。

成川:自分はパラメディックになるのに非常に苦労しましたが、二宮さんはいかがでしたか?

二宮:パートタイムで働きながらパラメディックの学校に通っていたので、病院実習、救急車同乗研修、仕事をこなさなければならず、スケジュール調整が大変でした。授業の内容も難しく、途中であきらめようと思いました。

成川:インターンシップはどうでしたか?

二宮:学校卒業直前にインターンシップを行いました。パートタイムの勤務先と重複してはならないため、遠方で知り合いがいない場所に通う必要があり、かなり大変でした。最後は、授業の一環として救急車に乗り、搬送先の選定や処置を行うのですが、すべての責任が学生である自分にかかってくるため、本当に大変でした。それを乗り越えて成長していったと思います。

キャリア形成(パラメディックの先)

成川:パラメディックから別の職種に移っていく方も多いですか?

二宮:自分の勤務先でphysician assistant(フィジシャン・アシスタント、医師の監督下で診断・治療を含む医療行為を行う事ができる医療専門職)や医師の資格を取ったパラメディックも何名かいます。アメリカの場合は、大学院から医学部の選択ができるため、パラメディックを経験してから医師、とくに救急医になるケースが多く、現場で遭遇すると自分たちの処置や考え方について理解してもらいやすく助かっています。

成川:パラメディックが学位として認められるようになってきているのでしょうか?パラメディックは初療の医師並みのことができる職種であると思っているので、今後地位として確立できればよいのですが。

二宮:数年前からパラメディックの授業については、国の認定機関が認めることになったため、カレッジレベルにしていこうという動きがあります。ほかの国ではすでにそのような体制になっているところもあります。

おわりに

成川:最後に、日本の救急隊員へ向けて一言お願いします。

二宮:新型コロナウイルス感染症が蔓延している状態で、われわれも大変な毎日を過ごしていますが、皆さんも自分と傷病者の皆さんを守るために努力されていると思います。お互い交流しながら、改善できることはしていけたらよいと思っています。何が正解か現時点ではわからないと思うので、できることをやっていけたらと思っています。

成川:長い時間ありがとうございました。

二宮:ありがとうございました。

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【ゲストプロフィール】アメリカ・ニュージャージ州生まれ。1991年岡山に帰国。2000年アメリカ・ピッツバーグに留学。2008年ペンシルバニア州 EMT-Basicを取得。2009年NREMT-B(現EMT)を取得。同年Medical Rescue Team South (現EMT)を取得。同年Medical Rescue Team South Authorityに就職。2011年NREMT-Paramedic (現NRP)を取得。2012年ペンシルバニア州EMS Instructorを取得。同年Community College of Allegheny County (CCAC)でEMSの非常勤講師。2016年CCACのEMT主任講師。
アメリカ(ピッツバーグ)と日本の医療システム、病院前医療システムが大きく違います。日本の救急隊員・救急救命士の方と交流をし、互いの知恵やアイディア、情報を交換していきたいと思います。

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【インタビュアープロフィール】日本の大学卒業と同時に単身渡米。目的は、救急医療最前線で働くParamedicになり、病院前救急医療の技術を日本に還元すること。アメリカ本土が初めての経験で右も左もわからないまま、すべてが手探りのなか難関であるParamedic資格を取得し、カリフォルニア州で他で得られない救急現場を経験する。

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現場で使える プレホスピタル実践英会話ポケットブック』の音声データの録音の一部を担当

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米国におけるEMT・パラメディックの資格、病院前の救急医療体制について、付録で解説しています。ぜひ以下の記事もご覧ください。

#EMT #paramedic #救急救命士 #救急隊員  

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