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【第3回】みずぼうそう

執筆:伊藤 舞美
   はしもと小児科看護師長
   日本旅行医学会認定看護師/保育士養成学校講師
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子どもの病気の代表格である「みずぼうそう」。いったいどんな病気なの?

 みずぼうそうは、「水痘(すいとう)」ともいわれ、水痘帯状疱疹ウイルスによって起こる急性の伝染性疾患です。おもな感染経路は、もっとも感染力のある空気感染です。空気感染とは、みずぼうそうの患者に接しなくとも、同じ部屋(空間)に一緒にいるだけで感染することです。みずぼうそうのほかに空気感染する代表的な病気に、「麻疹(はしか)」と「結核(けっかく)」があります。

みずぼうそうの症状は?

 みずぼうそうの症状は、発熱と特徴的な皮疹(湿疹)です。皮疹は、赤くはれた皮疹(紅斑:こうはん)が、ぷくっとした皮疹(丘疹:きゅうしん)になり、それが短時間で水を持った皮疹(水疱:すいほう)、膿(うみ)を持った皮疹(膿疱:のうほう)に変化して、かさぶた(痂皮:かひ)となって治っていきます。皮疹は、強いかゆみをともないます。
 皮疹は頭部から出はじめて、体幹、手足に広がっていきますが、体幹部分に多くみられるようになります。また、皮疹は数日にわたり次々に出つづけるので、からだには、紅斑、丘疹、水疱、膿疱、痂皮のそれぞれの段階の皮疹が混在して、1週間で全部の皮疹が痂皮となり治ります。
 水を持った皮疹が出るのがこの病気の特徴で、「みずぼうそう」の名前の由来にもなっています。ちなみに、みずぼうそうは英語で「chicken pox」(チキンポックス)といいます。poxは水疱や膿疱という意味で、poxがトリ皮のようにぶつぶつして出ているからでしょうか。

みずぼうそうの皮疹
 ① 紅斑:こうはん(赤くはれた皮疹)
 ② 丘疹:きゅうしん(ぷくっとした皮疹)
 ③ 水疱:すいほう(水を持った皮疹)
 ④ 膿疱:のうほう(膿を持った皮疹)
 ⑤ 痂皮:かひ(かさぶた)
 皮疹は①から⑤に順次移行して、1週間で治る

みずぼうそうの合併症「皮膚の細菌二次感染」

 みずぼうそうのぷくっとした皮疹のなかには、みずぼうそうのウイルスがたくさん詰まっています。この皮疹は強いかゆみをともなうため、ついついぼりぼりとかいてしまいます。そうすると、かいたところが傷となり、そこからブドウ球菌や溶血性連鎖球菌などの細菌が入り込んで、細菌の二次感染が起こります。皮膚の細菌による二次感染が起こると、皮疹は治りづらくなるばかりか、あちこちに細菌が広がって「とびひ」のような状態になります。そこで、病院では、皮疹を乾燥させて皮膚の再生を助けるような軟膏が処方されます。軟膏が処方されたならば、皮疹の一つひとつに、ていねいに軟膏を塗りましょう。
 みずぼうそうの治療には、みずぼうそうのウイルスに効果的な抗ウイルス薬が発売されています。ただし、症状を軽くする効果はありますが、完全に症状を抑え込むことは困難です。

免疫不全の子どもや妊婦がみずぼうそうにかかるのは危険

 白血病や悪性腫瘍(がん)の治療のため免疫力が低下している子どもが、みずぼうそうにかかると重症になります。また、妊娠20週までの妊婦がみずぼうそうにかかると、数パーセントの頻度で先天性水痘症候群(体重が少なく小さい、障害があるなど)として子どもが生まれるリスクがあります。それらのリスクを避けるためには、小さい頃に予防接種を済ませておくことが大切です。

みずぼうそうワクチン

 みずぼうそうワクチンは、2014年から定期接種の仲間入りをしたので、1~2歳の子どもは無料で接種できます。標準接種スケジュールは、1歳以降に1回目の接種をして、それから3~12カ月あけて2回目を接種します。3歳以上の子どもでも、みずぼうそうにかかっていない場合は、自分自身の感染予防、加えて、他人への感染予防のためにもワクチン接種を推奨します。
 現在使用されているみずぼうそうのワクチンは、効果的に免疫が付く、世界中でもまねのできない国産の製品です。

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水痘ワクチン 田辺三菱株式会社ホームページより

帯状疱疹について

 みずぼうそうと帯状疱疹は、同じウイルスが原因で発症します。一度みずぼうそうにかかると、ウイルスが神経のなかに数年から30年以上も潜伏して、体の抵抗力が弱まってくると神経に沿った形で皮疹が出て発症します。その際、神経にダメージを与えるため、皮疹が出る前は強い痛みを感じます。また、高齢になると神経の痛みが後遺症として残ることがあります。先に説明したみずぼうそうのワクチンは、帯状疱疹予防のためにも使用できるようになりました。

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帯状疱疹: 水痘に罹患した後数年~数十年後に発症

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【著者プロフィール】
・東京都立駒込病院消化器外科病棟
・東京都立八王子小児病院(現・東京都立小児総合医療センター)NICU主任
・1999年より、医療法人まなと会はしもと小児科にオープニングスタッフとして勤務
・へるす出版の月刊誌『小児看護』にて、連載「外来で役立つ小児看護技術」を2014年より約3年半にわたり執筆
・所属学会:日本外来小児科学会/日本ワクチン学会/日本旅行医学会/日本在宅医学会

伊藤 舞美さん近著:クリニックナースがナビゲート 子ども外来ケア

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へるす出版月刊誌『小児看護』

☆2020年9月号:病気や障害をともなう子どものきょうだい支援
☆2020年8月号:NICUに入院となった子どもの親のこころのケア
☆2020年7月号:小児看護における継続教育;2年目以降の看護師を対象に
★2020年7月増刊号:基礎疾患のある小児のフィジカルアセスメント

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