積田刀四郎は竜王を目指す
2015年 3年四組 積田 刀四郎
僕は正直、この3年間のうちでは勉強机よりも将棋盤と向き合ってきた時間のほうがずっと長かった。
体力に自信がない僕が、将棋部を選んだことに間違いはなかった。
純粋な頭脳のみによる一対一の勝負。
運が介入する要素は存在せず、たったひとつの誤りが即敗北に繋がる、そんなところが気に入った。
「将棋はパワーだ!」と指導してきた五里先輩には一度も負けなかった。
現状を正確に把握し、一手先ではなく二手三手、いや数十手先を予測する能力が日々磨かれて、放課後部室に行くのがたまらなく楽しくなっていった。
ただ、この能力があまり勉学に活かされなかったのだけは残念に思う。
僕はプロの棋士を目指すことにした。
何かを始めるのに遅すぎるとか間に合わないとか、そんなことはない。
部員の皆も、顧問の先生も僕を後押ししてくれた。
たいして役にも立たないのに毎日練習に付き合ってくれたことはずっと忘れない。
そんなこともあり、アマチュア初弾になるまでは早かった。
でもそこからが苦難の道。
初弾をかわされたら終わりなので一発で仕留めなければならず、将棋歴の長いベテラン、アマチュアなのにベテランというのも変だが、彼らには一向に歯が立たなかった。
まして二段の人たちは初弾をかわされてもすぐ次を撃てる。
この差は大きく、流石の僕も棋士をあきらめかけた。
何事も先達から学ぶことは大きい、僕の人生において非常に良い教訓になった。
苦難の末、一気に景色が変わったのは散弾に昇格してからだ。
散弾なのでまずかわされることがない。
引き金を引くだけで勝てる。
僕の生きる道はこれなんだと確信した。
プロと対戦する機会も出来た。
段位はずっと上だけど、いくら相手が糾弾でも散弾は強い。
銃声と同時に相手の上半身が吹き飛んだ。
僕の未来を阻むものは、これからもこうやって吹き飛ばしていく。