無機物マン番外編
ベコチーン!ベコベコチーン!!
壮絶な打撃音が後楽園ホールにこだまする。
「無機物マン全国民芸品グランプリ」の決勝戦。
会津赤ベこ人間 vs 宮城こけし人間の死闘は佳境にあった。
ベコチーン! ベッコベッコチーン!
首が固定されているこけし人間に対して、赤ベこ人間の首は自在に動く!
上下左右あらゆる方向から襲い来るスイング式ヘッドバットの連打に、こけし人間はただただポーカーフェイスで耐えるしかない!
もはや勝負あったか?と誰もが思ったそのとき、不意に赤ベこ人間がよろめいた。
軽い眩暈を起こしたかのように足元が覚束ない。
「これは…どうしたことでしょうか?」
実況人間が問いかける。
「脳震盪の症状ですね」
解説人間が答える。
「しかし、攻撃していたのは赤べこのほうでは…?」
「よく考えてみてください、こけしは首が完全に固定されています。それに比べて赤べこはあんなにもブラブラ。脳が揺れやすいのは明らかに赤べこのほうだったのです!」
「なるほど」
勝機と見たこけしがラッシュをかけようとした瞬間、
BAAAAAAAAANGGGG!!!
リングサイドに設置された大会本部席がまるで爆発したかのように砕け散り宙を舞ったのである!
驚いたこけしと赤べこが視線をやると、そこには1人の無機物マンの姿が!
身長は2m50cm強、体重は500kgに達しようかという巨躯。
右手にはKOされた大会運営委員をぶらさげ、口には鮭。
「よくもおいらを除け者にしやがったなー!」
ちょっと強すぎるのではないか、なんかそんな理由でエントリーを除外された『木彫りの熊人間』は、水道橋を血に染めるべく雄たけびを上げた。
【続く?】
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