![デュラハン](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/14180794/rectangle_large_type_2_5b297eb209dbc43420c982d6377fd41e.png?width=1200)
デュラ馬謖
時は西暦229年、後漢時代。
魏・呉・蜀の三国が中原に覇を争う三国志の世界。
場所は長安より西400㎞ほど。現在の天水県泰安県。
要衝の山地「街亭」である。
その頂より敵国、魏の陣容を見下ろす一人の怪異存在あり。
派手な甲冑に身を固めているが、首より上の部分が存在していない。
そこには鋭利な刃物によるものと思われる断面が。
まるで斬首された罪人のようだ。
まさか首なし死体が動いているとでもいうのか!?
しかし筆者は『見下ろす』と記した。
頭部がないのに見下ろしたのか?
否!
頭部はあった。
彼が右わきに抱えこんでいるものは人間の頭部!
彼自身の頭部であったのだ!
これはいかなる悪鬼羅刹妖怪変化の類であろうか!
読者の皆様に説明するため、1年ばかり時計の針を戻すことをお許しいただきたい。
西暦228年、蜀丞相である諸葛孔明は「出師の表」をしたため、大国魏を打倒すべく北伐の軍を興した。
しかし、最重要地点であるこの街亭の守備を任された蜀将馬謖は、孔明の「絶対山頂に布陣するなよ!絶対だぞ!」という命令をガン無視。
副将王平が諫めるも、「高いところから攻撃すると位置エネルギーがありつよい」という孫子の兵法を掲げ、水源を確保することなく山頂に布陣。
結果、案の定水源を断たれ、魏の名将張郃に完敗。
「水も無いのにカンパイとはこれ如何に」と笑われ、張郃は座布団を1枚もらった。
街亭の地を失ったことで蜀軍は総撤退を余儀なくされ、馬謖は責任を負い斬首させられることになった。
この際、馬謖の才(知力92)を惜しんだ孔明が涙を流しながらも彼を処刑したことから「泣いて馬謖を斬る」という故事が生まれた。
だが孔明は馬謖を諦めてはいなかった。
7つ揃えればありとあらゆる願いが叶うと言われる龍の宝珠を1年間かけて集め、魔王パズスを呼び出すことによって馬謖を生き返らせたのである。
つまり、この首なし将軍はかつての蜀将、馬謖幼常そのひとだったのだ!
その後孔明は出師の表markⅡを提出。
蜀軍は前年のリベンジを果たし再び北伐を為すべくこの地に進行。
「マジすか」「不安しかない」「フラグ乙」「学習しねえなオメエも」
「バトルドォォォォム!」「ほんと人材見る目ねえな」
などの声が上がったが
「こいつもうアンデッドだし水飲まなくても大丈夫だから」
とを押し切って、孔明は再び街亭方面軍の総大将に馬謖を任命したというわけである。
時計の針は現在へと戻る。
麓に布陣した副将王平から1時間おきくらいに「いい加減にしろ」「道を押さえろ」「学習しろ」などの伝令が飛んできているが、デュラハンなので全て無視した。
そのブレない姿に部下たちは彼を「至高の王」(ハイ・キング)と呼び頭を抱えたという。
魏軍は再び張郃を主将として街亭攻略を開始。
昨年同様水源を押さえた上で包囲する。
しかし馬謖に動揺見られず!
彼はデュラハンでありアンデッドなので飲食を必要としないのだ!
耐久戦が開始される!
1日、2日が過ぎ蜀兵はバッタバタと倒れていった。
これはどういうことなのか?
そう、アンデッドであり飲食不要なのは馬謖だけ!
兵士は普通の人間ホモサピエンスだからだ!
軍略の天才諸葛孔明であってもそこまでは読めず!
張郃軍は頃合いとみて進軍開始!
瞬く間に山頂の本陣を制圧!
だがデュラハン馬謖はアンデッド故死なず!
「デュラーーー!」
ヘッドロックで魏の将軍の首を捩じきる!
「ヒヒーン!」
闇の軍馬シャドウスタリオンが後ろ足で魏の兵卒を蹴り飛ばす!
「射てーーーー!」
弓の一斉射もアンデッドには効果認めず!
「デュラー!!!」
援軍に来た雍州刺史郭淮の胸部をチョップ突きが貫く!
「デュラララー!!!」
鉄鎖を首に巻きつけ張郃を絞殺!
「うわー!張将軍がやられた!」
「ばけものだー!」
「退けー!退けー!」
「みんな殺されるぞー!!」
魏兵は恐れをなし全軍退却!
馬謖は単騎で追撃を開始!
「馬将軍!ご無事ですか!」
「デュラー!!!」
駆け付けた副将王平も鉄鎖で絞首刑!
「グワーーー!!!」
ここに街亭の戦いは蜀軍の勝利で幕を閉じた。
だが乱世に終わりは見えない。
新たな獣が解き放たれたからだ。
中原を統べるは人か、魔か─────。
答えはこの蒼天だけが知っている。
【おわる】