ハッピーエンド推進委員会
「マッチを…マッチを買ってくれませんか」
冬空の下、消え入りそうな声で少女は街行く人々に訴える。
寒さのあまり暖を取るべく売り物のマッチに火を灯したそのときだ。
ボウッ!
目の前の教会が瞬く間に炎に包まれたのである。
まるで街の中心に出現した巨大な松明だ。
冷え切った頬に、震える手に、熱風が吹きつける。
「何これ…」
「どうです、暖かくなったでしょう」
目の前に突然現れたのは、まるで王子のような身なりの青年。
左に狐、右には真っ赤な肌に角を生やしたオーガめいた巨漢。
彼は燃える教会を背にし少女に告げる。
「それが貴女の能力です、レディ」
青年の視線は狐へ。
「こちらは『ごん』。表皮はキツネリウム合金で大砲も弾き返します」
「え?」
今度は巨漢へ。
「こちらは『赤鬼』。感情を捨て去り涙も流さぬ殺人マシーンです」
「は?」
そして青年は少女の手を取り恭しく頭を下げる。。
「《ハッピーエンド推進委員会》、貴女をお迎えに参りました」
【幸せな結末へと続く】