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Cullen The Transporter Extra Stage #7
「運び屋ギルドの構成員に告ぐ!我らは王都第2騎士団である!
A・Kと名乗る冒険者には大王暗殺未遂の嫌疑がかけられている!
要求が容れられぬ場合は、王命にかけてこの槍を振るうことになることを申し添える!」
王子に手を借りて何とか身を座席に寄りかからせ、1か月間寝違えたのかってくらいに痛む首を無理やり横に倒して馬車の窓から顔を出す。
悪名汚名を引っ被ったことが一切無いというつもりはないが、それでも国家元首暗殺未遂なんてとんでもない罪状は流石の俺も初めてだ。
街道を完全に封鎖するように布陣しているのは突撃槍の騎兵が7名。長槍の歩兵が20名ほど。
騎兵の中心にいるのが部隊長だろうか。
20代後半くらいに見える......女だなあれ。
燃えるような赤髪を眉の高さできちんと切りそろえ、意志の強そうな目元には...ん?眼鏡か?
まぁファンタジー世界なら女騎士だっているだろうとは思ったが、眼鏡もあるとは驚きだ。
クールビューティーなんて言葉が似合いそうななかなかの別嬪さんをしげしげと眺めていると、すでに馬車の外に出ていたカレンが前を見据えたまま横移動でこちらに近寄ってきた。
「女の騎士なんて珍しいって顔してるわね」
いや、女騎士なんて珍しいどころか、こちらの世界ではオークが感度3000倍とか鎧だけが溶けるスライムとかメジャーなシチュエーションだが、おおっぴらに口にすると罪状が増えそうな気がしてやめておく。
「ポワワ・マーベル。名家かつエリートでなければ入れない王都の騎士団で、史上初、女の身で騎士団長にまで出世した有名人よ」
カレンが何かを説明してくれたようだが、最初のインパクトにもっていかれて続きが全く頭に入らなかった。
「ぽわわ?」
「そう、ポワワ・マーベル」
「ぽわわ...」
「絶対に本人の前でその名を口にしちゃダメだかんね」
ポワワはこちらの反応が一切無いことに痺れを切らしたのか、手にしたランスを天に向け今一度勧告してきた。
「こちらは王都第2騎士団である! 繰り返す!A・Kと名乗る冒険者を直ちに引き渡されたい!」
凛々しい声だ。ポワワとは思えない実に凛々しい声だ。
咄嗟に馬車に隠れ緩む口元を見られないようにする。
王子は...特に反応は見られない。
人の名前をネタにしちゃいけない高等教育でも受けたか。
だがすぐに矢筒に手を伸ばせるような緊張感も伝わってくる。
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これはめんどくさいことになった。
ポワワ・マーベルは20人を数える王都騎士団長の中でも、その圧倒的な融通の利かなさから「歩く法典」「ゴーレム騎士」「脳みそが100%石製」などのあだ名で有名な堅物なのだ。
新人時代に密書の配達任務を受け「万が一のために」と写しを3通も作り、そのうち2通が盗まれて大騒ぎになったことを王都の住人はみんな覚えている。
オークの集落に夜襲をかける直前に「栄光ある我ら王都騎士団が今からそなたらに夜襲を行う!」と大声で宣言したのも有名で「今からそなたらに挨拶を行う!」という挨拶が一時期大流行したこともあった。
なお、冒険者たちが『メガネ』と呼んでいる視力強化クリスタルは一番安いものでも金貨50枚はする高級品だ。
★3の宿で1か月遊んで暮らせる。
上手いこと説得しようと悩んでいると、先ほどのリザードマンの護衛がずいっと一歩前に踏み出す。
それに合わせて他の護衛も”全員が”柄に手をかけ、杖を構え、兜の庇を下ろす。
G-zilla:何のイベントかわからねーけど、俺明日早くて、2時には寝ないとやばいから突っ切るわ。
MALING:おk、突っ込む前にバフだけかけとくよ。
Bront:馬車の護衛はおれがするので守りはかなりかたい
MALING:というか、チャット5/3になってるのバグじゃないかい?
次の瞬間。
リザードマンを先頭にした「タイタン・ニック乗合馬車組合」の護衛6名ほどが、眼前の騎士団へ突撃を開始し、私は全てが終わった後何をどう話せばいいのかを考え始めた。
【続く】