Re:build
台風一過の突き抜けるような青空。
都内高級マンションの一室。
カーテンの隙間から差し込む日差しを顔に受け男は目を覚ました。
「ちっ...もうこんな時間かよ」
スマートフォンを手に取る。時刻は午前10時。
男はおもむろに起き上がるとボサボサの髪を掻きながらバスルームに向かい熱いシャワーを浴び、全裸にバスタオルを肩かけしただけの状態でトースターに食パンを突っ込み、たっぷりのマーマレードを塗り込んで齧りつき冷たい牛乳で流し込む。
カーテンを開けソファーにもたれ、リモコンを手に取ってテレビの電源を入れる。
映っていたのは雑木林だ。
小汚い無精髭のレポーターが警察の規制線の前で興奮しながら話す。
「ここの所有者の方が土砂崩れの被害を確認しようとしたところ、地中から露出している遺体を発見したということです!」
男は牛乳をもう一口。
「それでは発見現場をもう一度おさらいしましょう」
画面はスタジオに戻り司会者がフリップを指さす。
「発見現場はC県X市の雑木林で、所有者の方によると私有地ということもあって人通りなどはまったくない場所だということです」
「C県X市かぁ...」 男は何かを思い出そうとして視線を上に向ける。
(あそこは右脚だったっけ...それとも左腕?...)
いや待てよ、男は先程のレポーターの言葉を思い出す。
(”遺体”って言ったな?”人体の一部”って言わなかったってことは...
そうだ!あそこには胴体を埋めたんだ!思い出した思い出した!)
だが次の瞬間男に強烈な違和感。
「ここに頭部のない状態で遺体が埋められていたわけですが...」
(は? ”頭部のない状態”?)
動転した男はひとまず着替えようとクローゼットへ向かう。
背を向けた画面の上部にはニュース速報のテロップ。
司法解剖のため保管されていた遺体を紛失 警視庁発表
これは復讐の物語ではない。
逆襲の物語だ。
【続く】