小説 怨ませて下さい。第五十九話

前回の振り返り 彼女は、カバンにあった携帯電話を使って、持ち主の自宅に電話した。

彼は、その日、いつものように19時に仕事を終えて、ジムに向かった。最近、格安の24時間ジムに加入した彼は、毎日会社の帰りに少し遠回りをしてジムに寄ってから帰ることを日課にしていた。

地縛霊になる方法を無くしてからというもの、それまで何かに取り憑かれていたような日々から解放されたような気がした。彼は、家に戻ってから日常を取り戻し、普段と変わらない生活を送っていた。

彼が行方不明となっていた2週間。家族は、彼が訪れていそうなところを探し、また友人や会社に連絡を取り、警察に行方不明者の届けを出し、ずっと探し続けたらしい。子供も数日、学校を休んで探してくれたらしい。

ちょうど、2週間した日の夜、彼は新宿に向かう電車の中で目を覚ました。スーツは、泥だらけで持ち物は何もなかった。彼は、目が覚めた時、そこがどこなのかもわからなかった。車両には、他に乗客はいなかった。彼は、椅子に座り、ただ眠っていた。彼がうっすら目を開けた時、目の前に、小さなはげたおじさんをみた気がした。
しかし目が冴えてくるにつれ、それは幻のように消えた。そして、電車は、間もなく新宿駅に着いた。

彼は、立ち上がり、そしてフラフラと駅のホームに降りた。

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