小説 第一回AI Selection (11) 災害対策本部
お台場にあった災害対策本部は、想定外の津波により、壊滅的な被害が出た。一連の地震の中で発生した首都直下型地震は、想定していた波の動きとは違ったものとなり、東京湾を登ってきた津波をさらに増大させる結果となった。
他方から押し寄せた50メートル級の津波は、お台場を洗い流し、皇居にまで及んだ。
そして、各所から上がった火が夜空を焦がし、幹線道路は車と人で詰め尽くされた。
さいたま新都心に設置された新たな災害対策本部が機能し始めたのは、震災2日目の午後だった。
地震発生の1週間前から、予兆が報告されていた。が、その危険性を伝えていたのは、一部の科学者とYomi Gamiの地震予知情報だけで、大半の政府関係者おより関係省庁は、それを甘く見積もっていた。Yomi Gamiの開発当初から、地震予測は、最重要機能と位置付けられ、何度も試験を行なっていた。しかし、当初は地震予知に必要な情報が少なく、精度も低かった。そのため、何度か空振りのアラートが発表された。
初めの何度かは、大規模な避難が実施されたが、それが無駄骨に終わることが続いたことで、人々は、Yomi Gamiの地震予知については、信頼をおかなくなっていた。
その後、何年か地震の気配のない沈黙の時間が流れ、そして、突然、大規模な地震となって襲いかかってきた。