小説 第一回 AI Selection (18)大地絹子
小学校職員 「大地先生、また田中くんがお腹が痛いと言って保健室に行きました。」
大地「ありがとうございます。保健室に寄ってみます。」
田中くんは、去年まで受け持っていた4年生の男の子だ。大地は、今年、2年生の受け持ちである。去年3年生だったこの親御さんに町の有力者がおり、今年2年生になる下のお子さんの担任に大地をつけるように働きかけたおかげで、4年生の担任ではなく、2年生を受け持つことになった。
田中くんは、お父さんを2年前に事故で亡くされ、お母さんと妹さんで暮らしている。お母さんは、妹の面倒もよくみてくれる優しい息子だと言っているが、そのせいか学校にいる時は疲れているようで、覇気がなく、友達も少ない。運動が苦手で、よく体育の時は、保健室に行った。
保健室にて、
大地「田中くん、お腹はどう?」
ベッドのカーテンを開けながら、大地が尋ねた。保健室はクーラーがあったが、窓から入ってくる夏の日差しもあって、あまり効いてはいなかった。
田中「う、ううん。何か」
大地「何か?どうしたの?」
田中「何か、疲れちゃった。」
大地「学校のことで?それとも家のことで?」
田中「どっちも。」
大地「お母さんには言った?」
田中「ううん。あまり家にいないから」
大地「そうなんだ。妹さんは?」
田中「家では、僕がみてる。保育園にも連れて行ってる。」
大地「それは大変。お母さんにも、相談してみた?」
田中「ううーん。あまり。」
大地は、一度、お母さんと話をしないといけないと思った。
大地「そうなんだ。そうだ。今度、妹さんと先生の家に遊びに来ない?」
田中「いいの?」
大地「もちろん良いわよ.去年だって、何度かきたじゃない」
田中「ありがとう。妹も喜ぶよ。先生のところ、絵本がたくさんあるから。」
大地は、児童文学の研究員でもあったため、沢山の絵本や児童書を自宅に置いていた。
大地「よかった。じゃあ一応お母さんにも連絡しておくね。ゆっくり休んでね。」
田中「はい。ありがとう。」
大地は笑顔を見せ、保線室を出た。