小説 第一回AI Selection (42)舞喜井信以知
マイキー(舞喜井)は、目の前に置いたケーキをナイフで切り分けていた。
50歳の誕生日を、狭いアパートで迎えた彼は、堆く積まれた洋服を避け、ちゃぶ台に置いた丸いケーキを置いた。
ついていた5本の蝋燭を立ててはみたものの、タバコを吸わない彼には、火をつける道具がなく、結局、一度、ケーキの上に立てた蝋燭を抜き、ケーキの脇に置いた後、ナイフでケーキを切った。
45度ずつ4ピースに分けてはみたものの食べるのは自分しかいないため、半分をその日の夜食となり、半分は次の日の朝食となる。
彼は、1ピースをさらに移すと、スプーンでそれを突きながら、携帯を取り出した。ニュース画面を開くと、そこには、来月開催予定のAIセレクションの投票案内が映し出された。
彼は片手で携帯を操作しながら、一口ケーキを口に運ぶ。
画面には、各大臣の実績とSSSからCまでの評価と今後の期待値が表示され、自己PR動画へのリンクが表示されている。それをきちんと確認することなく、彼は、機械的にすべての大臣に対し、「却下」のボタンを押し、画面を閉じ、飲み物を取るために冷蔵庫に向かった。