小説 第一回AI Selection (10) 武田朋美
気がついた時は、旅行カバンに捕まって漂っていました。
周りには、いろんなものが浮いていました。人の背中も浮いていました。月の綺麗な夜でした。
遠くでヘリの音が聞こえました。波は静かでした。押し寄せてきた津波も、引き始めているようでした。
私が、救助されたのは、それから約1時間後でした。体は冷えていて、足も手も力が入りませんでした。この前、死ぬのかなと今までの生きてきた人生のことを思い返していました。
38年か〜。
彼女は独身だった。銀河で、最近人気の出てきたアイドルの推しだった。
彼は大丈夫なのかなー。もう見ることも出来ないんだなー。少し悲しい気持ちと寂しい気持ちが込み上げてくる。
彼女は東京で一人暮らしをしていた。イラストレーターで、基本的に家で、インターネットを通して、仕事をしていた。クライアントに会うことも稀で、ネットで受けた注文に応じて、イラストを描き、それを納品していた。彼女のイラストには、固定のファンがおり、いくつかの銀河にコンテンツを持ち、そして、それよくにもイラストを書いていた。
推しを模したイラストも描いていたが、こちらは非公認であった。
データはネット上にあるから、きっと大丈夫だろうなーっと、ふと思った。でも、私がいなくなった後は、ずっと更新されず残り続けるのかな?
頭が冴えてくると、いろんなことが気になり始めていた。
彼女は、救助に来た自衛隊のヘリコプターに助けられ、そのまま病院に収容された。