小学生の休憩時間、オリジナルのカードゲームで遊んでいた話
私がまだ小学生で、クラスの皆と仲良くしていた時代の話。中学生になるとあんまり話さない人とか出てくるけど、小学生の頃はイジメとかもなかったと思うし、ほんとに割とクラスの人みんなと仲良かったと思う。女子とはめっちゃ仲いいって感じではなかったけど…。
休憩時間、何して遊ぶ
休憩時間に何をして過ごすかは割と地域性や学校のルール、子供の性格、流行りなどに左右されるわけだ。当時、携帯電話は今ほど普及しておらず、クラスのほとんどの子は携帯電話を持っていなかった。また、うちの学校では(多くの学校でそうだと思うが)玩具の類いの持ち込みは禁止されていた。
おもちゃが禁止された子ども達が何で遊ぶかと言うと、大きく二分されると思われる。ひとつは外に遊びに行く。2時間目と3時間目の間の20分休憩、それと給食の後の昼休憩にグランドに遊びに行くなんて、今の年では到底できないような無茶な遊び方を小学生は当然のようにしていた。もうひとつの遊び方は「持ち込み禁止の穴を掻い潜ったおもちゃで遊ぶ」こと。バトル円筆(以下バトエン)などが主にそれにあたるだろう。私の周りでもそれで遊んでいる友人達もいたが、生憎私の親がそれを買ってくれることは無かった。
クラスで強力なバトエンを持っていることがステータスとなり、ヒエラルキーを形成していたならきっと私は親にもっと全力でバトエンを買ってくれとおねだりをしていたことだろう。しかし、そうはならなかった。何故なら小学5年生、6年生当時の僕のクラスでは別のゲームが大流行していたからである。
大人気!!Kカード
クラスで大流行していた休憩時間の遊戯、それは「Kカード」である。
そのカードゲームはクラスのK君考案のオリジナルカードゲームであり、クラスで絶大な人気を誇っていた。20分の休憩や昼休憩のみならず10分休憩だってクラスの男子達はそのカードゲームに熱中していた。自由帳を切って、テキストとイラストを書き込んだ完全ハンドメイド産のカードゲームだった。
プレイヤーはそれぞれ100のHPを持っており、各プレイヤーのターンにサイコロ代わりの鉛筆を振ることで決定される攻撃力と手札のカードを組み合わせて攻撃することで相手のHPを削っていく。先に相手のHPを削りきった方が勝ちというルールだ。
Kカードの特徴として、各プレイヤーにはそれぞれ自分専用のオリジナルカードが用意されていた。クラスの男子の人数分だけ固有のテスキトを用意するというのは中々に大変なことのように思えたが、一クラスの男子だけということでギリギリ差別化できていたように思う。自分だけの特別なカードというのは子どもであった私たちにはとてもワクワクするシステムだった。
各プレイヤーは10枚のカードからなるデッキを持って対戦に挑む。初手の手札は3枚で、各自ターンの開始に山札からカードを引いて戦っていく。手札からそのターンに使うカードを選択し、攻撃に移る。
攻撃にはサイコロ代わりの六角鉛筆を使用する。1~6の目に10の倍数で合計が60となるように数字を振り分ける。
1-10
2-20
3-30
4-0
5-0
6-0
と割り振れば、サイコロを振った時1の目が出れば攻撃力10、2の目が出れば攻撃力20、3の目が出れば30、それ以外なら攻撃失敗、といった感じだ。これが意外と面白くて、どのように割り振っても期待値は同じであるのだが、ダメージの振り方にプレイヤーの性格が出るのだ。
博打的にどれかひとつの目に60を全振りする者、満遍なく10を振る者、20を3箇所に振る者など様々だった。僕は満遍なくダメージが出る方が嬉しいが、10というダメージはあまりにしょっぱいと感じていたため、20を3つに割り振るスタイルを好んで使っていた。
攻撃時にはサイコロによって決定した基礎攻撃力にそのターン使用するカードの効果が上乗せされる。攻撃力+30を付与する【斬激波】は特に強力なカードだった。
イッパツ逆転魔神剣
また、攻撃を受ける側もただ攻撃をされるのを眺めているわけではない。自分ターンにあらかじめ手札のカードを裏向きでフィールドに伏せておくことで相手の攻撃に合わせてリアクションを取ることができる。
特に【魔神剣】は強力すぎるカードで、「相手の攻撃を+10して跳ね返す」というものだった。しかし、この【魔神剣】、特殊な裁定が出されており、【魔神剣】による効果もまた攻撃として判定されるというものであった。さて、聡明な読者ならこれが意味することが分かるだろう。…そう、【魔神剣】によるカウンターを更に【魔神剣】で跳ね返すカウンターというゲーム展開が我々の中では確立していったのである。これが通称「魔神剣魔神剣」である。勿論、お互いに相手が【魔神剣】を引いているかどうかは分からない。しかし、攻撃する時あるいは【魔神剣】を使う時、僕たちは常に相手が【魔神剣】を握っているかどうかを読みあっていた(デッキ10枚のうち同名カードは2枚までだった)。私のカードゲーマーとしての「相手の手札を予測する」という嗅覚はきっとこの時に培われたのだ。
出たッ!最強最悪の切札
Kカードがどんなカードゲームか分かってきたと思うのでそろそろ各個人に与えらていた「専用カード」の話をしよう。
専用カードの効果はK君が考えてくれるわけだが、その効果はプレイヤーの名前からインスピレーションを取ったものだったり、K君の気まぐれだったりとまちまちであった。
僕の専用カードは名前から着想を得た【鉄壁】。【魔神剣】のように相手の攻撃に反応して使うカードで、相手の攻撃力をマイナス40するというものだ。
他には強力な【魔神剣】の上位互換とも言える【魔障壁】(※そもそも他の人より1枚多く魔神剣が積めるだけでもかなり強い)や、次の相手ターン、相手の魔法カードを封じる【ブリザード】などがあった。
そんな専用カード達のなかでも極めて強力で物議を醸したカードがあった。
【電磁波】である。効果はシンプルながらに最強『次の相手ターンをスキップする』だ。カードゲーマーであれば、あるいはターン制の対戦ゲームをある程度プレイしたことがある人であれば、このカードが如何に強力かは火を見るよりも明らかだろう。このカードの違法的な強さは当時から問題視されており、Kカード初の、そして唯一のエラッタをされるカードとなった。専用カードのため、禁止にすればその人の専用カードがなくなってしまうため、禁止にはできなかったのだ。このカードがたった一人の専用カードとして作られていたという点がナーフの大きな要因の1つとも言えるが、この「強すぎるカードを調整のうえ使えるようにする」という流れは今にして思うとソシャゲのナーフの先駆けのようで面白い(当時の遊戯王でも禁止カードの制度はあったが、ナーフのような制度は無かったように思う)。
友情・タイムカプセルから未来へ
そんなこんなしながら小学5、6年生の休み時間は僕たちはオリジナルのカードゲームで楽しい時間を過ごした。小学校を卒業する時、当然Kカードをどう処理するか、という話になった。他人からすれば紙切れに落書きと短い文章が書かれたゴミだったかもしれない。でも、僕たちには掛け替えの無いおもちゃで替えの効かない宝物だった。だから僕たちは捨てるという選択はしたくなかった。卒業が近づき、アルバムや思い出の卒業ノートを作っているおり、こんな話が上がった。「みんなでタイムマシーンを作って、成人式の時に同窓会して開けようぜ!」Kカードを捨てたくない僕たちにとってそれは渡りに船だった。こうして僕たちは「20歳の自分へ」なんてよくある手紙や、思い出の品と共にKカードを封印することにした。
このカードが成人式の時に無事開けられたのか、そもそも同窓会は開かれたのか。それはまた別のお話…。
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