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FC版DQ3、制作スタッフの隠れお勧めパーティーを発見した模様

かつて日本中のゲーマーを魅了し、今も度重なるリメイクが作られ遊び継がれている名作、ドラゴンクエストⅢ。その醍醐味と言えば転職システムとパーティー作りだ。
酒場で勧められる戦士、僧侶、魔法使いの伝統的バランスパーティーをはじめ色々な組み合わせが楽しいが、どれが究極か、という話になると、勇者+賢者×3だとか、果ては全ての呪文を修得した戦士や武闘家だとか、そういういかにも最強なパーティーが挙がりがちだ。
しかし実際にやってみると、まず勇者+賢者×3は魔法戦力が充実を通り越して渋滞している一方、打撃力がどうにも微妙なため、打撃で確殺したい敵を討ち漏らすことが多い。装備が充実していて強そうに見えても所詮は呪文職だ。どうしても専門の前衛職がもう一枚欲しくなる。
かと言って呪文を全て修得してから転職するのも茨の道。呪文全修得直後のタイミングで転職すると最大MPが低すぎて上級呪文がまるで使いこなせない。戦士と武闘家には祈りの指輪が使えない(FC版)のも加味すると、MP確保のために相当のレベル上げを要する。しかも、そこまで強くなった賢者を上回る物理戦闘力を身に付けないと意味がないが、それにまた多くの時間が必要になる。つまり廃人か仙人以外には無理だ。
もう少し手軽に究極感の出せるパーティーはないものか。そう考えると伝統の勇者、戦士、僧侶、魔法使いの魔法使いを賢者にするパターンが近いが、これだと賢者は1人。まあ我慢して遊び人を育てればそこは解決するが、本作の戦士は最終的に力もHPも勇者とさほど変わらない仕上がりになるためいまいちつまらない。しかもすばやさの低さから、耐性が活躍する魔法の鎧をメインにすると賢者より軟らかくなることもある(全呪文修得戦士の残念さがまさにここ)。
しかし、これらの問題をスッキリ解決するパーティーを俺は発見した。しかもこの組み合わせは金稼ぎやレベル上げが必要ないばかりか、ゲームの流れやアイテム、イベントの配置から考えると制作スタッフが密かに推奨しているとしか思えないのである。その組み合わせとはーー

そう、トップにものっけた勇者、武闘家、商人、僧侶のパーティーである! ……今誰か笑っただろ。失笑しただろ。
ああ、そうだろうさ!小学生の頃の俺だって絶対指差してゲラゲラ笑っただろうよ!そもそも先のない商人が入ってて戦士もいない半端さ溢れるパーティーだからな。ところがどっこい、このパーティーが優遇・推奨されていると思える根拠はちゃんとある。それが今回のお題だ。


安上がりロケットスタート

序盤と言えば付きまとうのは金欠。謁見した王様にその辺のごろつきでも持ってるような棒切れと布切れであしらわれた英雄の息子は爪に火を灯して荒野を目指す。覚えてろよクソ野郎。
そんな状況でまず輝くのが、素の防御力が高い上にこの時点ではなかなか強力な稽古着を装備して投資完了な武闘家。そして装備のタイプは概ね戦士と同じながらステがやや防御寄りで、超優秀なターバンを装備でき、戦闘後に小銭を発見できる商人。さらには薬草の消費を減らしてくれる生ける安牌、僧侶。ドラクエ節約術の全てが詰まった完璧な布陣だ。
しかも気がつけばこれは前衛3ヒーラー1というガチガチの布陣。頑丈なのは勿論だが、瞬間火力が高い反面普段は空気の魔法使いを入れるより総合的に火力も高い。少ない投資で無理も効くのでロマリア大陸到着即強力な装備に手が出せる。

攻撃は最大の防御

さすがにこの後、残った資金で僧侶用装備にする予定の鎖帷子と青銅の盾を買って一番手を務める商人に渡したが、そのままカンダタ戦も無事に突破。素の安定性が高いので、資金繰りの厳しい時期に資源を攻撃力につぎ込んでサクサク進める。

ピオリムでボスに先制できるのも地味に優秀

さらにここからイシスで星降る腕輪を武闘家に装備させると、この時点で人食い箱の一撃にも耐えうるバランス崩壊レベルの防御力が手に入る。商人はそろそろ装備が限界に到達するが海に出る頃にはまだ一線級の戦力。船を手に入れたらまずはジパングで般若の面をゲット。そして…

はぐメタ2匹分ちょっとの付き合い

ここでスー族の開拓地に行き、惜しみなく商人をリリースする。ここまでの戦いを潜り抜けてきた商人ならば、この辺の魔物とも渡り合える。老人もさぞ頼もしかろう。いやいやそんな勿体ない!と思う人はこれを見て欲しい。

経験値24048。はぐれメタル2匹ちょいで回収可能。

はっきり言ってこの先の冒険では誤差。最終的には1レベル分の差にもならない。ここで遊び人に交代しても全く支障はなく、直近の冒険にすら影響は少ない。と言うのも…

圧倒的重装甲デコイ

異常な守備力と引き換えに常時混乱に陥るネタ防具、般若の面に加えピラミッドで拾える派手な服で常軌を逸した硬さを実現。このまま先頭に置いておけば無敵のデコイとして働いてくれるので防御面ではむしろ戦力アップ。遊び人を普通に育ててると忌々しい力の低さもこの運用にはピッタリはまる。登録所の男が言うように、「十分強くなってから冗談のつもりで」仲間にするのが正しい使い方って訳だ。ご存知の通り遊び人は賢者の卵。あとは特段の不便なく冒険の続きをしていれば、いつの間にかもう一人の賢者が生まれているという訳だ。思えば般若とは本来「仏の知慧(パンニャー)」を意味する言葉。般若の面の真の姿は煩悩にまみれた遊び人を悟りに導く賢者養成ギプスだったのだ。

さて、ここで改めて振り返ってみよう。最序盤ではコスパに全振りした構成ながら抜群の安定感を誇る→星降る腕輪で武闘家は大幅戦力アップする一方、金がかかるのは実質勇者のみ。さらに笑い袋が出現するダンジョンが続き金が貯まる→商人の新装備がほぼなくなるのと同時に離脱イベント解禁&賢者養成ギプスが入手可に(オプションの派手な服も拾得済)。
いかがだろうか。しかもこの後イシス以降の貯金が火を噴きテドン装備が一気に揃うというスムーズな流れ。さすがにゾンビキラーは人数分揃わないかもしれないが、やまたのおろちから草薙の剣も手に入るなど明らかに要所要所にステップが用意されている。また武闘家がいればやまたのおろちの2戦目で安全に黄金の爪を使うこともできるという優遇ぶりである(なお、サマンオサのボストロールにも使える:黑い人健氏より)。

しかも、ステップはもう一段階用意されている。

安くて強い勇者もどき

さて、これまで鉄壁の防御力で一番手を務めてきた武闘家だが、サマンオサ、そしてネクロゴンドと進めば魔法やブレスによる攻撃も増え、防御力だけでは厳しくなってくる。また、すばやさもカンストし防御力の伸びも止まってしまう。
こうして防御性能に限界が見えてきた頃に拾えるのが稲妻の剣と刃の鎧だ。すると戦士用の装備が1セット余る。ここで戦士に転職させるのだ。そうすれば耐性装備が使えるようになるのは勿論、守備力も大きく上がる。

この時点での勇者のステータス
画像は腕輪つきだが、素で67と勇者より素早い

そしてネクロゴンドの洞窟は勇者ですらゴリゴリLvが上がる環境なのでもょもとは一気に仕上がっていく。洞窟を突破する頃にはこの通り。

そして最強武器もGet

魔神の斧は単純な攻撃力でも鉄の爪より60高く、転職で下がった力の分をほぼカバーできてしまう。また1/8の確率でミスする代わりに1/8の確率で会心の一撃が出る(Lv35の武闘家に相当)ので、ダメージ期待値で言えば雷神の剣を上回るという優れものだ。将来的には雑魚は安定する雷神の剣で、大物は魔神の斧でという使い分けができる。
こうして、ちょうど耐性装備が欲しくなる頃に転職するだけで、金食い虫のはずの戦士の装備が殆どお下がりと拾い物で済んでしまう。まあ正確には水鏡の盾と鉄仮面、耐性装備として魔法の鎧も必要だが、武器と鎧は暫く繋ぎで間に合う分、負担感があまりない。

バラモス戦には完全に間に合う

あとはアレフガルドに殴り込むだけ。そして、ここにはもう一つ戦士を採用すべき理由が転がっている。雷神の剣だ。

魅惑のベギラゴン撃ち放題

シリーズ他作品では呪文効果のある武器は誰でも道具使用できるが、ドラクエ3では強力な魔剣を道具使用できるのは勇者と戦士だけ。これは武闘家にはない利点で、しかもベギラゴンは比較的安定して効くので使用頻度の高い呪文だ。これが撃ち放題というのはありがたい。これに加え賢者の石も持たせればベギラゴンとベホマラーという要点を押さえた呪文が使える前衛になるので、4枚どこからでも範囲攻撃と全体回復を繰り出すことができる。しかも通常の戦士より硬い。ゾーマ戦前の最終ステータスを見てほしい。

転職前のExpは120157なので
合算しても純粋戦士とのLv差は1~2の範囲

見込まれるLv差が1~2程度なら力もHPもさほど変わらない一方、素早さ88は純粋戦士には実質不可能な数値。純粋戦士ならLv1の素早さはせいぜい4が限界のところもょもとは67。守備力にして31、水鏡の盾1枚分以上もの差があるのは大きい。クリアレベル帯で言えば、使える道具と合わせて勇者っぽいスペックのキャラがもう一人できることになる。前衛2後衛2で、前衛の2人目が普通の戦士より育てやすくて高機能となれば普通にクリアする分にはベストメンバーと言ってもいい。以上が「筆者が」勇武商僧→勇武僧遊→勇戦賢賢をお勧めする理由である。しかし、それだけではないのにはもう少し理由がある。

「制作スタッフの」お勧めだと思う理由

1つはこれまでも解説してきたように、要所要所にこの進め方に対応する足掛かりが用意されているところだが、もう1つは特にレベル上げをしない場合の最適解かつ「醍醐味」をある程度迂回した進め方でもあることだ。これは多分、RPGツクール経験者には何となくピンとくるものがあると思う。
面白いゲームを作ろうと思う時、制作者はプレイヤーが「一番面白い遊び方」をするよう誘導する。勿論変態的な根気や研究は前提にしないが、用意した楽しみ方を全部載せするような方向、ドラクエⅢで言えば戦士、僧侶、魔法使いのパーティーを勧めてくるようなやり方や設定をする。
しかし、これを勧めてくる戦士が「初心者は」と言う通り、ゲーマーとしては別の冴えた抜け道を見つけたくなるものだし、作り手としてもそれを用意するなら苦行の果てにたどり着くものやシステムの穴を突くようなものより、普通に楽しめるものを用意したいだろう。
これが最初から意図されていたのか、テストプレイを繰り返す中で発見したのか(こういう事はよくある)は何とも言えないが、勇戦僧魔をやってからこれをやると全職業を使うことにもなるし、最終的には意図的に順路を仕込んだのだと思う。だとしたら、ネタ感や中途半端さの陰にこれを仕込むのはさぞ楽しかっただろう。それを見事に見つけることができたのだとしたら、こんな愉快なことはない。
ともかく、今はリメイク版があり性格や新装備、新職業があるので状況はだいぶ違うのかもしれないが、興味のある人は是非試してみてほしい。

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