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不遇キャラ再評価委員会 第1回 サマルトリアの王子

noteでゲームネタを書き続けていて気づいたことがある。俺は不遇なものを研究するのが好きなのだ。
例えばドラクエ4(FC)の話を書いた時も、ダジャレや足払いを武器に中盤の対ボス前衛を務めてから武器屋らしく余った特殊武器を満載して馬車の肥やしならぬ馬車の扉として働くトルネコや、合流直後の活躍から氷の刃にお株を奪われ一度は隠居するものの絶妙のスキルセットでラスダン・ラスボス要員として現役復帰するブライのことを書いている時が一番楽しかった。
それに俺がこれまでnoteに書いてきたネタの中で一番の力作に当たる独立戦争なんかゲーム自体がモロにそれだし、最近で言えばStick War:Legacyユニット解説のジャイアントの項目を書くのも楽しかった。そして、いつかこの頃のことを書こうと思っているが、その昔、一般二次職しか居なかった頃のラグナロクオンラインでは、殺し屋のくせに全く人殺しに向かずピクミンと呼ばれていたアサシンでの対人戦研究に必死だったこともある。まあ、何とも今更だが俺は日陰を掘り返すのが好きなのだ。
という訳で今回の議題はヘタレの代名詞サマルトリアの王子、それもファミコン版のオリジナルについて再評価していきたい。


概要

かなりのんびりしている(婉曲的な表現)

サマルトリアの王子のヘタレっぷりに寄せられる賛辞は枚挙に暇がない。器用貧乏、てつのやり(笑)、ベギラマ(笑)、棺桶、ザコ顔、ニセ子孫……筆者としても少年の頃、奴の情けなさについた溜息の数は数え切れない。ロトの血を引く魔法戦士のくせにロトの剣も装備できず、そこらのモブ兵士じゃあるまいし最強装備はてつのやり。公式ガイドブックには全体に30〜50と書いているのに実際はバギ程度の威力しかないベギラマをはじめ、魔法は攻撃も回復も半端で補助程度にしかならない。挙句に魔法使いのお姫様にはHPや防御力で追い越され、設定通りの装備だとろくな耐性もない。アリーナ姫という最強のマッハゴリラプリンセスが誕生するより3年も前、王子様はお姫様をかっこよく救うものと相場が決まっていた当時の少年たちの間で、「お姫様より弱い王子様」はまさに軽侮の対象だった。

お姫様にタフネス負けするヒョロガリ王子の図
当時の価値観では引くくらいあり得なかった

一方で今聞こえる彼の能力に対する再評価の声は、オリジナルだとフィールドでしか使えないザオリクも含めて戦闘以外の部分に偏っている。移動手段とパーティのメンテナンス(それも王女のMP節約の文脈も込みで)が主な活躍の場だ。確かに彼が倒れれば途端に冒険は行き詰まり、生還もままならないこともしばしばだ。…いや、そこが重要なのは間違いない。間違いないのだがそういう事じゃねえんだよというお気持ちは否めない。当時の少年たちも、成長した今ならともかくリアルタイムではとても納得できた話ではあるまい。
と言うわけで、今回はより戦闘部分にフォーカスしてサマルトリアの王子の能力を再評価していきたい。なお全ての呪文を覚え切った後に真の力に目覚めてからの彼に関しては、その頃には大体冒険が終わってしまうため本稿では扱わないこととする。

背景

とは言え、何の前置きもなくストレートに再評価できるくらいならこんなことにはなっていない、というのが悲しい現実だ。サマルトリアの王子が強いか弱いかと言われれば確かに強くはない。だが実際結論から言うとファミコン版の本作は、主なユーザーであった少年という脳筋な生き物とは極めて食い合わせが悪く、サマルトリアの王子はその煽りをモロに食らう立ち位置に居たことは否めないのだ。この点に関して少し掘り下げてみたい

求められる「かもしれない運転」

誰もが知っているように本作の戦闘は厳しい。圧倒的主力のローレシアの王子でさえ特に序盤や終盤は事故であっけなく死んだりするので、出来れば危険な時期は最悪の連打をうっかり2波食らっても何とか生き延びられるHPを確保しつつ、常にキメラの翼を持ち、帰還や戦闘に必要なMPがなくなったらすぐ帰るくらいの安全運転が必要だ。ローレシアの王子でさえうっかり転ぶのだから、隊列によるタゲの傾斜もない時代に後ろの2人がどうなるかは言うまでもない。

ラスダンに挑むPTすらキメラの翼は必須

ところが、こんなまどろっこしい事をやっていると、少なくとも見かけ上冒険はなかなか進まない。しかもファミコン版はアイテムも高く薬草は15G、キメラの翼に至っては80Gと所持金50Gから始まる世界の物価としては大変世知辛い。そして、少年は強行突破を試みて死人を出すのである。こうして、ただでさえ厳しいドラクエ2世界の冒険はローレシアの王子しかまともに歩けない過酷なものとなる。この煽りで死にまくるのはムーンブルクの王女も同じだが、その先の差は次の項から現れるのだ。

「ぼうぎょ」格差

当時を知る読者の皆さんは「ぼうぎょ」コマンドを活用していただろうか。筆者はアホだったのでまるで活用していなかったのだが、死にそうな時に仲間による回復を待つ時や後ろの2人が集中攻撃系のモンスターに狙われた時、そして有効な行動ができない時の待機行動など戦闘の厳しい本作ではかなり重要なコマンドだ。
そして、特に序盤の王女にとってこのコマンドは自動的に必須と言っていい。防具は布の服しかなく、HPもMPもまだ低く、魔道士の杖を手に入れるまでは通常攻撃というものがないも同然なのでMPの節約やMP切れなどの理由で自然と「ぼうぎょ」をしている場面が多くなる。ところがサマルトリアの王子は曲がりなりにもローレシアの王子の補助をやる程度の打撃力は持っているので、自覚的に使わない限り「ぼうぎょ」をする機会はほぼない。

炎以外のダメージを半減するのはデカい

勿論これはローレシアの王子も似たようなものだが、ただ1人頑丈なローレシアの王子とは違いサマルトリアの王子の場合は記号的に王女より重装備ができますよ、基本は少しHPが高いですよ(一時期追い抜かれるけど)という程度で、耐久力は実質あまり変わらないか装備の種類やすばやさの差で防御力も若干劣ることがある。そこで魔法も含めて被ダメを半減できる「ぼうぎょ」態勢を頻繁に取っているか否かの差は大きい。多くの場合ムーンブルクの王女よりサマルトリアの王子の方が頻繁に死んでいる理由はここにある。
また、サマルとムーンの防御性能にほぼ差がない、というのは殆ど全滅や死亡放置を経験せず順調に冒険を進めた場合や逆に2人とも頻繁に死んでいる場合など経験値格差が少ない場合の話だ。この「ぼうぎょ」格差によって取得経験値に差ができると「姫よりひ弱な王子様」が固定化してしまうのである。

水の羽衣問題

別名:トンヌラお前これ着るんか問題

これに関しては、ファミコン版の場合水の羽衣を2つ作ることができ、その方法も使用・売却等したアイテムの宝箱の中身が復活する仕様から誰でも思いつく類のものなので、実用本位のプレイヤーなら特に気にせず装備しただろう。しかし水の羽衣はドン・モメハの台詞からも攻略本のイラストからも見るからに女子向けの装備だ。

製作者のじじいもご指名

そして当時のメインユーザーである昭和の少年たちにとって女装する男はオカマであり、オカマは嘲笑の対象である。しかも対抗馬はサマルトリアの王子には貴重な戦士らしいプレートアーマーである魔法の鎧だ。そんな理由でサマルトリアの王子に水の羽衣を使わせなかった奴(俺のことだ)は当時沢山いたのである。その結果、サマルトリアの王子はしょっちゅうただ1人黒焦げになっていたと言うわけだ。ロンダルキアの洞窟以降の敵の猛攻は炎耐性がある装備がないと厳しい。ここでの脆さがまた「使えないサマル」を印象づけている。

「姫よりひ弱な王子様」

以上、何故サマルトリアの王子は一番よく死ぬのかについて振り返ってきた。要するにサマルトリアの王子は脳筋な昭和ボーイたちの無茶な運用で後衛が簡単に死ぬ過酷な環境に放り込まれ、器用故に防御行動をとる機会もなく、オカマに厳しい昭和ボーイたちの志向によって最強の防具を装備させてもらえなかった、という不利な状況にあったということが言える。
そしてそんな脳筋マチズモ昭和ボーイたちは結果的に「魔法使いのお姫様よりヒョロい魔法戦士(笑)の王子様」に失望と軽蔑を隠さなかった。お世辞にも強いとは言えない、ローレシアの王子と比べるとやっぱりお姫様ポジションになってしまうムーンブルクの王女と比べてもヒョロい、というイメージは正直なかなかの脱力感だった。そのためサマルトリアの王子はその実力以上に過小評価されている傾向がある。では実際のところその実力はどうなのか。どうすればそれを発揮できるのか。これが本稿の本題である。

冒険の心得

前項で触れた内容とやや重複するが、ここで冒険を進めるにあたっての基本戦術を押さえておきたい。

①軽く事故っても死なない程度のHPを常に確保
②帰り道分の薬草、キメラの翼、リレミト・ルーラ分のMPなど生きて帰る手段を必ず確保。特にキメラの翼は必ず持つ
③死者が出たら帰る(ザオリク可能な時は除く)
④初見の敵には一通り補助魔法とザラキを試して傾向を掴む
⑤敵を素早く倒すことより、最小のHP・MP消費で倒し続けることを心がけ、危ない時や手が空く時は防御
⑥後ろ2人は集中攻撃系にタゲられたら防御に徹して敵が死ぬまで受け切る
⑦装備を買う回数は最小限に、安く効果的だったり古い装備をお下がりにできたりするものを優先
⑧魔除けの鈴はすぐに買う

以上、これを徹底するとサマルもムーンも簡単には死なずその実力を発揮し続けることができる。勿論これは他のドラクエにも応用可能で、それだけでほぼ全滅を経験せずにクリアできるようになるが、さすがドラクエ2 と言うべきかこれでも全滅する時はするし全滅しかけることならちょくちょくある。では、これを踏まえて冒険の流れを追っていこう。

戦闘記録

ローラの門突破まで

さすがにこの頃までは普通に役に立つ。ホイミは勿論、毒消し草が減らせるのでキアリーも地味に助かる。通常攻撃は火力不足だが、そこは銅の剣で粗方の敵を確殺できるローレシアの王子が鎖鎌を譲ってやれば補助火力としては及第点で、ギラもいざという時にとっておける。

普段は鎖鎌で雑魚散らし、ピンチはギラで行こう

王女合流まで

この先はさすがに主力が銅の剣では厳しいので南に渡ったら鎖鎌をローレシアの王子に返却。ギラ使い勢、特に魔術士にはマホトーンが有効。ギラの火力もなかなか活躍するがMPに注意。鎖帷子と鉄の槍をお下がりで貰えばリビングデッド戦も殴りで補助火力に良い。が、例のサルが集団で出るとローレシアの王子ともどもどうしようもない。

マンドリル3匹以上はやめとけ

船入手まで

王女がラリホーを覚えると、マンドリルを高確率で黙らせることが出来るためだいぶ平和になる。サマルトリアの王子も鉄の槍をちゃんと買えていれば補助火力としても悪くはなく、タフな敵はローレシアの王子と重ねて確殺、マンイーター程度のHPの敵までなら単独二発も狙えるし勿論兜ムカデ退治はギラの出番だ。王女のMPは長く安全運転を続ける上で重要なので、細かいところはきっちりサマルで締めていきたい。

サブ火力としては一応まだ悪くない

宝探しへ(雷の杖入手まで)

船を手に入れたら一路ザハンへ。海に出るモンスターの大半は、うみうしの痛恨の一撃があるとは言えルプガナまでと大した差はない。ただ、ザハン周辺の海域にはヤバいのが出る。バピラスだ。

こいつだけはラリホーが生命線

この時点では一発20前後、しかも2回攻撃もありという超火力なので後ろ2人はかなり死ねる上に、ローレも一確はできないタフネスがある。1ターン目はサマル防御、王女ラリホーで、ラリホーがうまく決まる前に王女が潰されたら逃げた方がいい。あとは世界樹の島とペルポイに上陸する一瞬が危険なくらいだろうか。地獄の使いも普通にマホトーンが通るし大して問題はない。ガイアの鎧、ロトの盾と兜、雷の杖を手に入れたらロトの剣を求めて竜王の城へ。勿論雷の杖はサマルトリアの王子が持つ。

雷の杖入手からベギラマ習得まで

本人そのものの立ち位置は変わらないものの、雷の杖のお陰で通常攻撃がバギになるためお役立ち度は上がる。まあ3人の中で戦闘中に一番マストな仕事がないから杖を渡されるという身も蓋もない話だが、ともかくお陰で王女がバギを選択して敵を一掃するパターンが増える。特に竜王の城から現れるドラゴンフライを一掃するのにバギ+雷の杖は重宝する。と言うかこの段階でこいつらを1ターンで殲滅できるかどうかは全滅の回避に直結するのでやらない手はない。

発射台としての人生も捨てたもんじゃない

ここは防御待機が多い王女に最初から持たせた方が通常火力が上がるのではという意見もあるかもしれないが、代替できない王女のメイン業務はデバフなので、それと同時に高火力の攻撃ができる時点で既に敵を無力化する能力が高いからこれでいいのである。
なお、敵が強くなっても一応打撃での補助はこなせるが、結局バギより低威力なので耐性持ちの敵単体に確実を期したい場合に限られる。

ベギラマ習得からザラキ習得まで

ベギラマを覚えると、自力で全体の削りをやれるようになる。ベギラマは威力こそバギ程度だがやはり何だかんだ言って全体攻撃は利便性が高く、厄介な敵が2種類以上いる時や優先順位は低いが削っておきたい雑魚がいる時に最初からまとめて攻撃出来るのは地味ながら助かる。

増える手も一確できない踊る木も一度に削れる

また、雷の杖を王女に返す場合、第一波の攻撃力は落ちるものの王女の通常攻撃が魔道士の杖の敵仕様ギラからバギに変わるのでパーティの総合火力は上がり、打撃で敵を仕留める機会も増えてくる。ただし、これまで暫くほぼ回復と移動にしか使わなかったMPを攻撃に使うようになる分、サマルのMPの配分は難しくなる。
防御面では、この間に唯一の装備者だけに力の盾を真っ先に手に入れたり、2着目の水の羽衣を手に入れたりして安定性も増していく。時々HPを王女に抜かれることが出てくるのもこの辺からだが、あまり気にする必要はない。魔法戦士が魔法使いにタフネス負けする姿は中々に脱力感があるが、今までも実質大して変わらなかったし、それはこの先も暫く同じだ。

ザラキ習得から隼の剣入手まで

ザラキ習得後は攻撃能力が一気に上がる。実際、ザラキが実用レベルで有効な敵はロンダルキアへの洞窟内にも多く、一転して呪文火力の主力に躍り出る。

ここに来て一度に1〜2殺は期待できる人材に

ザラキは最初に試して割り出せば安定して5割以上効く敵は結構おり、問答無用の即死なので、そういう敵になら多少外しても撃つ価値はある。ロンダルキアへの洞窟ともなるとイオナズンすら単体で確殺とは行かず、しかも多くの敵に耐性があって確実に当たるとも限らない中ではかなり強力な攻撃手段と言っていい。
王女がイオナズンを覚えると、これがベギラマとの重ねがけでドラゴンなど小細工の通じにくい強敵への切り札になる。ただし上述の理由で被ダメを抑えるなら補助魔法の優先度が高いケースも多いのと、消費MPの多さからやはり主力と言うより切り札(それもベギラマと合算で)になるため、やはりザラキの出番は多い(まあロンダルキアまで上がると有効な敵はだいぶ減ってしまうが)。なお、打撃での活躍具合はこれまでとあまり変わらない。必要のない時はこまめに力の盾を使っておこう。
隼の剣は力が低いといまいちなこと、サマルの打撃力よりパーティ全体の安定性が優先であることから購入は力の盾が3人分揃ってから。また、ローレシアの王子が稲妻の剣を手に入れたら光の剣を貰っておこう。装備はできないが敵全体にマヌーサをかけることができる。

隼の剣入手後

店売り武器で最高額のくせに攻撃力5と棍棒にも劣るなまくらとあって馬鹿にして買わなかった昭和ボーイ(俺のことだ)も多いだろうが、これが文句なしの最強装備だ。鉄の槍より確かに一発は軽いが、装甲の厚い一部の敵を除いて一発あたりのダメージは体感7·8ポイントしか変わらないので明らかに攻撃能力が上がる。

従来良くて30前後のところ、20弱×2行ければ上出来

入手直後はまだ補助火力の域を出ないものの、ローレシアの王子が動けない間に討ち漏らしを片付けるくらいのことは出来る。この頃になるとファミコン版ではサマルトリアの王子しか使えないザオリクを覚えてパーティの航続距離も長くなり、王女の必要経験値が増えるに従い再びHPを抜き返し始めるようになる。

ラストバトルまで

ロンダルキア到達後はザラキが実用レベルで効くのがサイクロプスとブリザードくらいなのでザラキ使用頻度は減り、高火力で一気に敵を片付ける機会も敵のHPの多さや呪文の効きの悪さなどの理由で減るので、イオナズンにベギラマを重ねることもあまりない。その代わりデビルロードによく効くマホトーンの出番が増える。

ロンダルキア名物もこうしてしまえばむしろ雑魚

打撃の方は隼の剣のお陰で補助火力ではあっても削れた敵ならそれなりに任せられるレベルになってくる。全体に呪文の効きが悪い上に、敵の攻撃が激しい中で一連のボス戦まで力を温存しなければならないので、意外と打撃の出番は多い。人によってはサマルには打撃の代わりに雷の杖をずっと振らせているかもしれないが、隼の剣を手に入れたら単体に集中すれば割とバギ以上にはなるし、何より確実に当たる。王女のMPも節約したいので、そろそろ本来の持ち主に返した方がいい。
ただしボス戦に関しては、スムーズに進んだ場合は力の成長が始まる前にクリアできてしまうので鉄の槍に持ち替えてもバズズにすらダメージを通せない。これ以降は適正レベルだとやはり王女の下位交換に落ちてはしまう。だが全く仕事がない訳でも役に立たない訳でもない。
アトラス(中ボスで一番ヤバい)では初手防御から自分が狙われれば続けて防御、ムーンが狙われればベホイミ。ローレが狙われたらこれもやっぱベホイミで、実はこのパターンが一番厄介。と言うのもローレは唯一有効な火力だけに防御ができないので、防御している後衛より被ダメが大きく、ムーンのベホマのタイミングによっては事故死もあり得るからだ。そこでうまくベホイミが入ると何とか持ちこたえられる可能性が高まる。

殴られても首の皮一枚繋がれば良し

勿論ベホイミが間に合っても殴り殺される事もあるし、無駄も多いように見えるがこうなったらこれが一番確実。なお、サマルが狙われて防御で耐える展開が一番楽。
バズズはほぼ魔法攻撃だけなので、力の盾があればザラキとメガンテ以外怖くない。うっかり陣形を崩される前に片付けたいが、ベホマの使用頻度は低く効きの悪いイオナズンを敢えてぶっ放す必要もないので王女はルカナン。サマルはスクルトも無意味でベギラマくらいしか効く攻撃がないので、王女に雷の杖を借りて振り回しておくのがベスト。勿論通る確率はベギラマやイオナズンと変わらないが何もできないよりマシだ。

発射台ライフ再び

なお、うっかりザラキでローレが死んでも、イオナズンを連打するムーンをベホイミでサポートすれば問題なく勝てる。
ベリアルはスペック上は恐ろしく強く、攻守ともに隙のないスキルセットを持つ芸達者だが、実はそれが仇になって真の破壊力を発揮できず、案外危険度は低い。一番恐ろしい2回攻撃の頻度が低く、ベホマやスクルトで長期戦にはなりがちではあるがザラキやメガンテもなく、力の盾があればイオナズンは問題なく凌げるからだ。長期戦に備えてサマルはスクルト、ムーンはルカナンで、粘られても有利な態勢を作り気長に削っていけばいい。

たまに飛んでくる物理で死なないよう予防すればOK

勿論必要に応じてベホイミに回る、といった具合で、イオナズンも効果が薄くMPも温存したいムーンと一緒にローレをサポートしてサクサク倒していく感じになる。ここはとりあえず後衛がうっかり片方欠けてもローレを支え切れれば勝てる。
問題はハーゴン→シドーの2連戦。ハーゴンはルカナンが効かない上に高頻度でベホマを使うので、回復される前に殺し切るため全力で攻撃する必要がある。ムーンは勿論イオナズンだが、サマルもまずはバズズ戦に引き続き雷の杖で攻撃する。体感だとベギラマの方が若干通りやすい気がするが、シドー戦が控えているのでMPは温存しておきたい。

案外当たるので撃つべし。とにかく殺し切れ

勿論攻撃の優先順位は低いので、できるだけムーンがイオナズンに専念できるよう早めのベホイミで真っ先にサポートに回るのがメインの仕事。たかがベホイミと思うなかれ、早めの治療を心がければどうにか猛攻を凌いでいくことができる。なお、実はたまにマホトーンが効く。
続くシドー戦は主に、ローレをベホマとルカナンで援護するムーンをベホイミで支えつつスクルトも織り交ぜていくのが仕事。シドーの腕力は圧倒的だが、一回攻撃なので気絶さえしなければ案外ヤバくはない。FC版のスクルトはカスで有名とは言え、限界近くまでスクルトをかければ確かにダメージ平均値は落ちてやや安定感が出る。実はマヌーサがたまに効くので、スクルトをかけ終わったら光の剣でも振っておくといい。

王女でこの程度まで軽減できれば上等

シドーの攻撃はさすがに激しいが、打撃ダメージが落ちれば事故死はだいぶ減るので、ルカナンがしっかり効いた上で後衛のMPが切れなければ粘り勝ちできるだろう。要するに、ロンダルキアの祠を出発した時から既にボス戦は始まっているのだ。

ここまでにどれだけMPを温存できるかがカギ

総評

全体の流れをざっくりまとめると以下のようになる。

①最初はやや頼りないながらもローレシアの王子に足りない部分を補う相棒として現れる
②中盤暫くは補助的な働きに専従する省エネ要員として働く
③後半に差し掛かってベギラマ、ザラキと習得すると一線級の戦力として稼働する(ただしザラキ対象の把握と水の羽衣が必要)
④隼の剣を装備すると打撃もそこそこにはなり、消耗の激しいロンダルキアの戦いを効率よく切り抜けるのに必要な戦力になる。
⑤ボス戦でも役割はあるが、普通にクリアする分には打撃はどの道役に立たない。またベホマが使えないのとスクルトの効きが緩いのが辛いが、王女を支える分にはベホイミでもさして影響はない(どの道ベホイミで全快できる辺りで回復しないと死ぬため)

①に関しては当たり前と言えば当たり前だが、このくらいの立ち位置で居続けられたならまだバランスは良かっただろう。
②に関してはマンドリル戦で死にまくる辺りからケチがつき始めて「剣も魔法もイマイチ」感が募る。ただ、この頃はまだ耐久力もサマル以下な上にMPの制約もあって稼働率が高くない王女の隙間を埋めている側面はある(そして防御の機会が多い王女より先に倒れていく)。
③の段階まで来るとスペック上は侮れない攻撃能力を誇るようになる。ベギラマは低威力とは言えバギ(雷の杖)や打撃とのコンビネーションに便利だし、ザラキは「効く相手を初見で試して把握していれば」高い攻撃能力のある敵を1ターン目でごそっと削ることができる。
しかし諸々の事情で水の羽衣が装備できなかった場合は炎耐性がなく呪文耐性も劣る魔法の鎧で苛烈な攻撃の前に燃え尽きることも多く本来の活躍と成長ができない。
④に関してはちゃんと育ったサマルに隼の剣を与えれば鉄の槍より明らかに強いのは確かだが、度重なる全滅と復活のために終始金欠に苦しむこの本作の環境でたかがサマルの打撃のために攻撃力5であんな高いものを買うのは少なからず躊躇われる。少なくとも筆者はそうだったし、それに「最強装備がてつのやり」はネタとしてあまりにも美味しい。
⑤については適正レベル帯ではサポートのサポート(力不足)という立ち位置になってしまうのは最早仕方ない。戦士としてのサマルは呪文を覚え切ってからが本番だが、冒険は本番が来る前に終わってしまうのだ。
こうして見ると、最終盤の力不足は否めないにしろサマルトリアの王子には弱い時期には王女と比較して弱さを際立たせる罠が、強くなる時期には強みをスポイルする罠が待ち構えていることが分かる。次項で少し考察したい。

考察

戦闘におけるサマルの役割

サマルトリアの王子の一番の重要性は戦闘以外の部分にあり、ある意味では最重要人物である。最近流行りのパーティ追放モノよろしく戦闘で役に立たないからとクビにすると後で盛大なざまぁが発生するタイプの人材だが、敢えて戦闘面の役割に絞って検証するのが本稿の趣旨だ。
とは言え、ここは「ローレシアの王子が2人居ればイラネ」はナシでお願いしたい。何しろ、こと戦闘能力に関して言えばローレシアの王子と他2人の関係はサイヤ人とそれ以外のZ戦士みたいなもんなので、それを言ったらおしまいだからだ。そもそも、本作のパーティ戦は最強の戦士であるローレシアの王子を2人の仲間が支える構造なので、比較対象はサポート役の片割れである王女になる。サマルトリアの王子の存在意義を考えるならば、ここは王女2人態勢の想定と比較して考えていきたい。
端的に言うと、サマルトリアの王子が戦闘において担っているのは継戦能力だ。王女は有効な行動の1つ1つにMPが必要だが、MPが多いようで攻撃魔法を撃ちまくって全力戦闘していると案外すぐに息切れしてしまう。となるとラリホー、マヌーサで敵を無力化して後は大人しく防御しているのが特に序盤から中盤は正解になるが、デバフ役は2人もいらない。そして一回デバフが通ると大抵はさらに攻撃魔法を追撃して殲滅するまでもないが、ローレが討ち漏らした敵は極力早く片付けないとこれまた面倒臭いことになる。
じゃあ魔道士の杖でも振っとけという話になるかもしれないが、これは敵仕様のギラを撃つ程度の道具であり、効かないこともままあるので追撃としては明らかにサマルの物理攻撃の方がマシだ。DQ3の序盤で前衛3後衛1をやる時に魔法使いより僧侶を選んだ方が何だかんだ言って通常火力が上がる(その分戦闘中の被弾率も下がる)のと似ている。それに海に出る前後からそこらの敵が気軽に多少の耐性を持っていて呪文が思うように当たらないのも物理攻撃の価値を上げている。サマルの物理攻撃は確かにショボいが、それでも削りや止めをこなす程度の水準は保たれており、これがないと中々にストレスフルな戦闘になるだろう。
戦闘がシビアな本作では、できるだけHPとMPを消費せずに1つ1つの戦闘をこなすことが重要なので、戦闘力の最大値が低くても低コストで小回りの利く戦いができるメンバーがいるのは重要なことだ。サマルの代わりに王女がもう1人だとどうしても大味・オーバーキル・高コストになり、たとえリレミト修得済みでキメラの翼を常備していてもダンジョンの探索可能時間は減ってしまうだろう。

ザラキの威力

イオナズンの陰に隠れがちだが、ザラキの威力は侮れない。初見の敵にとりあえずかけてみて、有効だったら使うというやり方をとれば効く相手にはイオナズン以上に効果的だ。本作は後半の敵は特に気軽に呪文耐性を持っているので、実際イオナズンが綺麗に敵全体に当たることなど殆どない。ザラキにしてもそれは同じだが、こっちは当たれば即死だし何より効く奴には結構サクサク決まる。バーサーカー系にバピラス系、フレイム系にキラータイガー、ベビルなど厄介な連中を1ターン目で半分くらい削ることが期待できる。ただ、前述の通りロンダルキアへの洞窟でこいつらと戦う時に水の羽衣がないと死にまくるというのが、見事にこの強みをスポイルしている。

メガンテの価値

実質一番死んではいけないキャラが使う自爆技とかいう無意味な存在として有名なメガンテだが、これは「確実に成功する『にげる』」だと考えるといい。ここで回り込まれたら確実に全滅する、というところで使って全滅を回避し、あとは世界樹の葉でサマルを起こして続行するなりキメラの翼(常備推奨)で帰って仕切り直すなりすると、終盤の買い物のために貯めていた大金が半減!という大惨事を防ぐことができる。ただし、順調に進んでいるとサマルがLv28になるまでには力の盾×3含めて買い物をコンプリートしているケースも多いので、その場合はやっぱり無意味。

結論

以上、これまでの議論から改めてサマルトリアの王子の能力を再評価してみたい。

①全体に低燃費のサポートキャラとしてパーティの継戦能力を底上げする役割を果たしている
②よく言われる死にやすさに関しては、防御をする機会が多いムーンブルクの王女に対し、常時行動できる分適切に防御を使う必要があり(使い方の問題)、水の羽衣と魔法の鎧の差(装備選択の問題)に加えて一時的とは言え魔法使いにHPを抜かれる魔法戦士(笑)といったイメージの問題が重なったもので、サマルトリアの王子自身のスペックの問題とは言い難い(素の耐久力が王女とあまり変わらないのが問題と言われればそれはそうだが)
③相手を絞ってザラキを使う場合、その攻撃性能は高いと言って差し支えなく、有効な敵の範囲も決して悪くない
④隼の剣は優先度こそ低いが(力の盾3枚の方が先)確かに最強装備で、クリアレベル帯でも補助火力としては及第点のダメージは出せる
⑤クリアレベル帯でのボス戦では王女の下位交換だが、主にベホイミで十分とは言えなくとも必要な仕事はできる

このように、使いこなすのに若干のコツは必要だが決して極端に弱い訳ではないし最初から最後まで仕事はできる、というのがサマルトリアの王子の真の姿ではないだろうか。
その上でよく言われる「死にやすさ」という弱点に関しては、呪文を使わなくとも行動できる強みの裏返しと装備の問題で、これはどちらも解決はできる。そして解決すればタフネスでは若干であるが上だ。
次に攻撃と回復の能力に関して言えば、特に回復とデバフに関しては完全にムーンブルクの王女に軍配が上がる。また、基本的な攻撃能力に関してもイオナズンとベギラマの差でムーンブルクの王女が勝る。一方、ムーンブルクの王女は物理攻撃ができないので、そこらの雑魚が気軽にダメージ呪文耐性を持っている本作に於いては狙って倒したい敵を呪文で確実に倒すのが難しく「痒いところに手が届かない」「無理攻めすると息切れする」という弱点がある。また、そうした事情からザラキが有効な敵に対してはサマルトリアの王子の方が強いと言っても差し支えないだろう。ただし、これを割り出す作業は要するに例のザラキ神官のアレを手動でやることに他ならないので、リアルタイムでやった昭和ボーイはあまりいないはずだ。話を戻すと、要するにボス戦ではともかく通常戦闘では決して下位交換ではなく、攻撃面で小回りの利く火力と尖った強みを持っていると言える。
総合的に言えばやはりクリアレベル帯では戦力として3番手ではあるものの、仮に2番手の王女が代わりにもう1枚入るより戦闘に無駄がなくなり、特に継戦能力の面でパーティの戦闘力が上がる、というのがサマルトリアの王子の実力だろう。少なくとも強みの裏返しである「ぼうぎょ」部分への注意と確率系呪文の有効な敵の割り出し(これは王女のデバフ呪文にも非常に当てはまる)を行っていれば、3番手としても明らかに劣る3番手とは言えず、まして役立たずなどではない、というのが本稿の結論である。

番外編:紙でできた勇者

サマルトリアの王子の記事を書いたのなら、SFC版の彼に触れない訳にはいかないだろう。

お前は誰なんだ

SFC版のサマルトリアの王子の仕上がりに感動した往年のFC版プレイヤーは多かったのではないだろうか。ベギラマの威力は本来あるべき30〜50、を超えて50〜65とイオラ級の破壊力を誇り、ロトの剣は勿論力の盾と対になるポジションの光の剣も装備できる――これこそ俺たちが思い描いていた「多くは望まないからせめてこうだったらよかったのに」のド真ん中である。

エフェクトもまた良い

さらにはザラキが有効な敵が増えたりスクルトが現代仕様になるなど+α要素まである。強化されたのは彼だけではなく王女もちゃっかりザオリクを習得するようになっていたが、これにもメガンテを有効に使える局面を増やす意味があったのではないかと邪推している。
その結果、ザラキが通る敵はザラキでバタバタと落とし、さもなくばベギラマで焼き払い、2ターン目からは大体の敵を普通に2確できる攻撃力で斬り倒すか面倒ならもう一発ベギラマをぶっ放す(どうせ消費MP4だし)など、総合的な攻撃能力で言えばローレシアの王子をも上回ると言っても過言ではない恐ろしく殺意の強いキャラクターに進化した。しかしSFC版は水の羽衣が本当に一着しか手に入らない上に王女と大差ない紙装甲は相変わらずで、炎を吐かれれば紙のようによく燃える。まさに紙でできた勇者である。そしてこの辺がまた3人のうちの1人、という感じがして良い。
それにしても、往年のFC版プレイヤーが妄想していたベギラマ正常化やロトの剣・光の剣装備可という仕様変更は、その時点でFC版ではサマルトリアの王子に多くの場合やってこなかった「クラスチェンジ」の時を適切な時期に発生させてくれたと言えないだろうか。
ドラクエ2は戦士と魔法戦士と魔法使いのパーティ、ではなく実のところ途中まではバトルマスターと僧侶2人のパーティだ。バトルマスターは当然ローレシアの王子。そして僧侶の片方はベホマが使えない代わりに旅の呪文が得意な僧侶(サマル)で、もう片方は力がなくて素早さとMPが高い僧侶(ムーン)だ。これがムーンはイオナズン習得を以て賢者にクラスチェンジするところ、サマルは全ての呪文を覚えきってから漸く数Lvかけて魔法戦士にクラスチェンジしていく、というのがFC版の展開だった。
ところが、SFC版ではロトの剣以降の本格的な剣が装備できるようになったことで、むしろ一番中途半端だった時期に早々と魔法戦士へのクラスチェンジが始まるようになった。FC版ではローレシアの王子が大体敵を1〜2発で殺せるところにサマルトリアの王子の追撃が入れば確殺、サマル単体だと2〜4発くらいが相場のところからメガンテ以降の急成長で遂に2確級以上の物理攻撃力を手にするようになるが、SFC版ではロトの剣を手にすることであっさりこの立ち位置まで登ってくる。まさに思いつく限りの意味で「俺たちが欲しかったサマル」がそこに居るのである。まさかあれだけ妄想通りの強化であんなピーキーな仕上がりのキャラになるとは思わなかったが、リメイクの体裁を崩さず昔の持ち味を残したまま、プレイヤーの夢を叶えるような形でゲームバランスを是正した神改変だ。もしFC版経験者でSFCのサマルを知らない人がいるなら是非体験してみることをお勧めする。絶対脳汁出るから。

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