『バグスキル【開錠】で最強最速ダンジョン攻略』を読んで
■はじめに
この記事は「HJ文庫公式レビュアープログラム」に基づいて執筆されています。
では、さっそく7月1日発売の新作を見ていきましょう!
今回、読んだのは『バグスキル【開錠】で最強最速ダンジョン攻略』です。
■作品紹介
まずあらすじを確認してみましょう。
文庫本巻末のあらすじでは、以下の通りです。
『鍵を開けられる』だけのハズレ能力が最強に!?
『一日一回宝箱の鍵を開けられる』というハズレスキル【開錠(アンロック)】しか持たない冒険者ロッド。馬鹿にされながらも夢を叶えるため迷宮へ潜るが、転移罠により最下層へと飛ばされてしまう。
しかし最下層で彼を待っていたのは、迷宮神との出会いだった!
同時にロッドのハズレスキルがバグった結果、『迷宮の隠し扉を開けてショートカット』『スキルツリーの制限解除であらゆるスキルが入手可能』などというチート級能力へと進化して――!?
最強スキルにバグった【開錠】で最速迷宮攻略、堂々スタート!
ジャンルは「なろう系インスパイア」といっていいでしょう。「なろう系インスパイア」というのは私独自の定義ですが、以下で詳しく言及しました。
【ラノベ】『やがて黒幕へと至る最適解』を読んで【ガチ考察】
https://note.com/heroicknights/n/na8999a666062
系譜としてはSAO以降に隆盛したMMORPG系ファンタジーと言えるでしょう。このジャンルの特徴は、「西洋」よりも「ゲーム」の性質を強く反映させるというものです。
転生先に一芸を持ち込んで無双するという異世界転生のスキームとの相性の良さ、また西洋風ファンタジーに求められる考証のめんどうさからの解放、という二点において書きやすくしかも需要も多い、書き手にも読み手にも人気のジャンルだと言えます。
一方で、デメリットとしては競合の多さがあげられます。おびただしい数の先行作品があり、どんなアイデアもおおよそ誰かが先に試している場合がほとんどです。したがって、このジャンルでは、類似作品に対して優位を得るために筆力の高さかアイデアの奇抜さが強く求められます。
■本作の魅力
前述した「筆力の高さ」と「アイデアの奇抜さ」という二点がそのまま魅力になっている作品だと思いました。
というのも、作者の空埜一樹先生は2008年デビューの大ベテランで、著作は40作を越えます。実績から言って、筆力の点では折り紙付きであると言えます。
アイデアの奇抜さの点では、「『鍵を開けられる』だけのハズレ能力」を取り上げているところがあります。「一見すると役に立たなさそうな能力が非常に有用だった」というスキームは前述したMMORPG型ファンタジーの典型ではありますが、「開錠」をネタに一本描き切る構想というのは「思いついたとしても実行は難しい」と誰もが想像がつくのではないかと思います。
筋書きとしても、五大迷宮のうちひとつを攻略。次巻以降に2箇所目の迷宮に向かっていく……という壮大な長編の立ち上がりを思わせるものであり、ベタではありますが徐々に世界観が広がっていく感じはいいなと思いました。
こういったベタな展開をうまくまとめていくのが大ベテラン筆者の筆力のなせる技でないかとは思います。そうした意味では、もうひとつの今月の新刊『クラスで一番かわいいギャルを餌付けしている話』と対を成す形でおもしろかったです。
■リンク
Amazon
https://www.amazon.co.jp/バグスキル【開錠】で最強最速ダンジョン攻略-1-HJ文庫-そ-01-15-01/dp/4798635871