2022年に映画館で松田くんが観れるという奇跡
2003年1月6日、名探偵コナンであるエピソードが放送された。そのタイトルは「揺れる警視庁 1200万人の人質」。当時7歳だった私は、このエピソードに釘付けになった。2時間SPに相応しい映画のような大規模の事件、佐藤刑事と高木刑事をメインに据えた、視聴者の見守ってきた2人に恋路に大きな一歩をもたらす展開、そして松田陣平という男の格好良さとインパクトにである…。
●「揺れる警視庁 1200万人の人質」あらすじ
という、黒の組織こそ出てこないものの、名探偵コナンという作品を語る上で外せないエピソードなのではないかと個人的には思うんですよね。
高木刑事がコナンの正体を聞くシーンとかとか、最後の暗号をコナンが解く時に小五郎理論(勝手に私が呼んでる、水平線上の陰謀で小五郎が言う、大切な人が関係してない証拠を集めるうちに、その人の怪しい証拠ばかり集まってしまうってやつ。3つのK事件のコナンとか。)で帝丹高校を当ててるのもすごい好きで。
今思うとなんか相棒みたいなすごい真面目な刑事ドラマのストーリーみたいでちょっと難しいそうなんだけど、録画したビデオを結構見てた記憶があるので幼心に見ても面白かったんだよなぁ。
中学生の頃にコナンの漫画を集め始めるんだけど、好きな回から集めてて、この話は割と序盤に買った気がするし。
でもやっぱりこのエピソードは、序盤の尺にして約20分強しか出てこないがイケメンっぷりや言動、そして何よりその死に様において、視聴者に強烈なインパクトを残してった松田陣平なくしては語れないんですよ。
既に死亡している人物にも関わらず、ファンから絶大な人気を獲得し、このSPから4年後の劇場版第10作「探偵たちの鎮魂歌」での主要キャラ集合ポスターでも萩原と共に頭に天使の輪を付けて登場するという人気っぷり。
その後は本庁の刑事恋物語5などに佐藤刑事のトラウマとして回想で度々登場するも、事件解決と高木刑事との恋仲の進展により思い出されることも少なくなり、そのファン人気は保ちつつも伝説のキャラとなりつつありました…。
しかし2016年4月16日、全てのファンが劇場で絶句するのである。
●同期として回想での登場、そして…
2016年4月16日に公開された劇場版20作「純黒の悪夢」。
黒の組織のNo.2 ラムの腹心の部下であり、驚異的な記憶力を持つキュラソーが記憶を失ったことをきっかけとして、黒の組織、スパイである安室(公安)、水無怜奈(CIA)、元スパイの赤井秀一率いるFBI、そしてコナンたちの思惑が交差する物語である。
推理要素は薄いけど、スパイたちの集結、赤井さんと安室さんのカーチェイス&ケンカ、そしてゲストキャラクターであるキュラソーの活躍、当時まだ謎だった組織のNo.2のラムの登場と見所は多く、ちょっぴりビターなエンドも相まって結構面白い作品となってると思う。
しかし…それだけではないのだ。
この物語のクライマックスの舞台は東都水族館にある観覧車だし、中盤ではその観覧車に爆弾が仕掛けられている事が発覚したり、水族館には佐藤刑事と高木刑事がいつものように2人で捜査にあたってたりするんですよ。
これほど要素が揃っていると、長年のファンであれば嫌でも松田くんが頭をよぎる。実際に私もそうだった。あぁ佐藤刑事もトラウマを乗りえて強くなったよなぁ…なんて考えていたんですよね。
クライマックスへ向けて物語は進んでいき、赤井vs安室のケンカはコナンが助けを求めた事で終わり、3人が力を合わせて組織を倒す方へ話が向かう。
そして、安室さんが観覧車に仕掛けられた爆弾を確認しながらコナンにこう語り出す…。
えぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?
松田くんだよね?!松田くんのことだよね?!
2016年当時すでに平次やキッドと並ぶ人気キャラとしての階段を爆速で駆け上がっており、満を侍して劇場版に登場したでお馴染み安室さんの同期?!?!
友達と見に行く約束をしていたにもかかわらず、我慢できずに先に1人でレイトショーにて見ていた私は席から落ちそうになるほどの衝撃を受け思わず口を手で覆いじゃったわけですよ。
そんな観客の動揺も他所に数分後、引き続き1人で爆弾の解体作業を続ける安室さんがちょっとミスしそうになったところで一息つきながらこう呟くわけですよ…。
ま…松田くん…。松田くん!!!!
2003年から13年経って7歳だった私は20歳になってますよ。そこで突然の青山先生の描いた松田くんが投下されたわけですよ。
マジで泣いちゃったんですよね。だって松田くんの姿が映画館で見れるなんて1ミリも思ってなかったわけで。
レイトショーだったから人少なかったし自分以外のお客さんの反応は分かんなかったけど、ファンばっか試写とかだとどよめきとかあったらしい。
そのあとは赤井さん、安室さん、コナンがいつものように活躍して組織を退け、暴走した観覧車を止めて終わるんだけど、あんま集中できなかった気がする。いや最初に書いたように面白いんだけどね。
それほどまでに、13年ぶりに、しかも大きなスクリーンで見た松田くんは昔と変わらずカッコ良かったのだ。
そして空前絶後の大人気キャラへと成長した安室さんの警察学校時代の同期という設定を与えられ、過去編という形で現代に蘇った松田くん(と萩原さん)。
公式スピンオフとして松田くん、安室さんを含めた5人、通称警察学校組を主人公とした警察学校編なる漫画が描かれるなどの盛り上がりを見せた。
ちなみに警察学校編は過去編としての良さを詰め込んだ、ファンならニヤっとしてしまう所が多くて結構楽しかった。
そして昨年「緋色の弾丸」が公開され、本編終了後に流れた次回作予告において警察学校組の登場が示唆された一年後の本日、2022年4月15日「ハロウィンの花嫁」が公開される。
TVSPの録画を見ていた7歳に私に松田くんが映画に出ると言っても信じないだろう。「探偵たちの鎮魂歌」のポスターを見ている10歳の自分に言っても信じないだろう。「純黒の悪夢」を見て泣いている20歳の自分に言ってもギリ信じないかもしれない。
あの松田くんを映画館の大きなスクリーンで見れるのだ。警察学校組を足掛かりとして佐藤高木の2人が劇場版のメインに据えられるのも同じくらい嬉しい。
長年のファンやだったり作品自体のファンには今の異常な安室さんの人気に眉をひそめる人も少なくないと思うし、自分も割とそっち側だったんですよ。
だが、安室さんのお陰で、松田くんを映画館で見る事ができて、佐藤高木メインの劇場版を見る事ができるのかもしれないと思うと、安室さんには足を向けて眠る事はできないよなぁと思う。