2人展「雲を掴むピクセル」
香川県・高松市CENTER / SANUKIで、ピクセルアーティストm7kenjiさんとの2人展「雲を掴むピクセル」を開催しています。
日時:2024年7月13日〜28日(会期中無休)
会場:CENTER / SANUKI
交通機関の不安
遠出することに並々ならぬ不安があります。
まず朝早くに出発する場面を想像し、あまり寝坊はしないのですが、出発の1週間くらい前から寝坊してしまうのではないかと恐れて過ごすことになります。
次に荷物。こちらも実際にはあまり無いけれど、必ず何か忘れ物をする予感があります。
そして何と言ってもチケットのある乗り物。飛行機や新幹線は、予約から発券、席が間違って予約されていないか、時間に間に合うか、正しくゲートを通れるか、乗り間違えないか、ちゃんと降りれるかなどと現地につくまでむっつりとうつむいたまま。
大きな失敗の経験はないはずなのに悩み続けて、きっとこれからも解消しないのでしょう。
「第一ターミナル駅で待ち合わせしましょう。」
今回の相方であるm7kenjiさんからそうLINEがきたので、駅のホーム第1ターミナル寄りのベンチに座っていたところ「既に空港に入っている」と続報。
そもそも駅名が違っていることは置いといて、待ち合わせ場所を変えちゃうのは危険ではないかと思いつつ、
先に入って施設内の下見をしてくれているm7kenjiさんの適当な部分と真面目な部分に両方触れて、作家にはこういった2面性があるなどとしみじみとしました。
出汁の香り
高松空港ではイケダさんと待ち合わせ。
イケダさんは今回の会場であるギャラリーCENTER / SANUKIのオーナーで、東京でもギャラリーやデザイン会社を経営しており、高松を盛り上げるべく活動している方なのでご機嫌うかがいに「さすがうどん県、外でた瞬間から出汁の香りが漂ってますね。」と声をかけると「嘘だろ?」という顔をされて一拍置いて「嘘だろ?」と言われました。
m7kenjiさんも「やはり香川に来たらうどんは食べときたいですね」などと言っており、それはそうなので何となく流して聞いていましたが、後々その覚悟がかなり重いものだったことを知ります。
設営
空港からリムジンバスで35分でギャラリー近くに到着、そのままアーケードの立派な商店街を進むとCENTER / SANUKIが見えてきました。
アーケードが本当に立派で、道幅も異様に広く開放感もあり、さまざまなお店が並んで目移りし、足りないものの買い出しだなんだと理由をつけて途中ふらふらと散策することに。
デザイン事務所も併設されており(デジコ株式会社)、そちらのスタッフの方々も親切に面倒を見てくださり、
作品の移動に際して固く固定していた針金が取れなくなって(間抜け)困っていたら、いろいろと探してくれ「これならありますが、、」と丸ヤットコ(銅線を曲げる工具。どうしてデザイン事務所にそんなものがあるのか。)を貸してくれたり、
一生懸命切ったけどパネルがガタガタになっちゃった(可愛い)というm7kenjiさんに変わってパネルを制作してくれたりと、大変お世話になりました。
デザイナーとはクリエイティブを通じて社会の課題を解決していく人たちですが、作家のあやふやさに寄り添いつつも確実に企画を進めていく力強さに感服しきり。
レセプションパーティー
設営も無事終わり、展示初日は夜からレセプションパーティーがあることもあって早めに入ろうと決めたにも関わらず、m7kenjiさんと高松市内観光に繰り出しちょっと遅れる。
高松築港が心地よく「時間あったらフェリー乗ったりしたいのにねえ」などとぶつぶつ言いつつギャラリーに入るやいなやm7kenjiさんが「どうしてもうどんを食べておきたい」と言い出したので、遅れて入って何を言ってるんだという顔を装いつつ「すぐ戻ります」と言って「うどん棒 高松本店」へ。
大変美味しかったです。ありがとうm7kenjiさん。
などあり、遅れて入ったのを誤魔化しつつ在廊するも17時過ぎ、今度は自分が散髪するために中座。
実は前日の夜知り合った派手な青年が美容師でもあるということで「髪切る?」と誘われていたので、もちろん二つ返事で約束。
このお店、一般にはあまり知らされておらず、ギャラリーオーナー・イケダさんに認められるとチケット権利が付与され、予約時間がDMで届き、街の事情通にお店の大体の位置を聞くと辿り着くのは上品な化粧品店。そこの方に「髪を切りたい」と合言葉を伝えることで階段下の鉄の扉(異常に重い)を開けてもらって散髪スペースに入ることができる。
なんか昔異国の山の民が旅人を攫って誑かす話があったなとぼーっと考えながら希望を言うと大層親切に聞いてくれるも、ハサミを持った瞬間「ここから先は、本当にどう切るか決められるのは私だけ」と宣言され「やはり怪異に騙されたか」と冷や汗をたらしているといい感じに切ってくれます。
おすすめの美容師atamazoukeishiことシミズさん。
初見だったら辿り着ける気がしないけど。
ようやく戻って、腰を据えて在廊しようとしたところm7kenjiさんが「お腹がすいた。何か食べたい」というので、告知に協力してれたお店「風狸(フウリ)」へ。
古着とブリトーを売りつつ音楽イベントを店外に向けて開催するという無茶なお店でした。店外というのは本当に店の外という意味で、道に向かってDJブースが設置されていて、向かいのビルとか近くの駅のホームへ爆音を鳴らす先鋭的な形態でした。
古着のセンスとブリトーの味抜群。
ブリトーをもぐもぐしていたため、30分押しくらいでレセプションパーティーがスタート。
ヘルミッぺがアイリッシュフルートとギターペダルによる演奏を、m7kenjiさんがピクセルアートと即興で今回の展示素材を取り入れたVJを行いました。
夜のダンジョンアーケード
完全に我らのせいで時間が押すも無事?レセプションパーティーが終わり、イベントの醍醐味は打ち上げであるぞという意気込みで高松グルメを堪能すべく商店街へ繰り出すことに。
「高松ならではのものを食べ尽くしたい」などと無責任なことを言ってみると、CENTERの皆様は時間的にも限られた選択肢の中、素敵なお店に連れて行ってくれました。
海鮮、特にタコなどが有名だそうですが、他にも甘塩っぱい「しょうゆ豆」や、うにょうにょした酸味のある和物、しゃばしゃばして強い旨みの肉まん、色は変だけどスパイシーで美味しい鶏肉などどれも美味しく特徴的な地のものを味わいました。また皆で行きたい。
その後、食後のお茶を楽しむべく「SABI」へ。
SABIは高松市内のニューウェーブ茶屋。今回の展示中、ギャラリーでお茶を提供してくれています。アーケードを抜けた先にあるソリッドな風合いの店舗には若者が集い、工夫を凝らした日本茶をお供に親交を深めていました。
その後、荷物をとりにギャラリーへ戻ると、敷地内に怪しい人影。
体格の良い男性数人が建物をうかがっている様子に緊張感が走り「どうかしましたか?」と声をかけると、その中の1名がイケダさんの知り合いで、東京から来ていた友人に面白いギャラリーがあるからと紹介していたとのこと。夜の12時ですが。
音楽関係のお仕事をされているそうで、共通の知人などもおり盛り上がったまま、深夜のギャラリーツアーへ。
そんな思い出がたくさん出来た高松のアーケード街は、ただただ広く、どこまでも続いていました。在来線数駅に渡ってずーっとアーケードが並走し、アーケード伝いに隣町まで行けるほど。「アーケードから10m外れるだけで雨の日の売り上げが全然違う」と言わしめるほど地元に密着しており、一つの世界が形成されています。
深夜1時を超えても営業している古着屋、湯気で店内が見えない中華屋、道にどこまでも張り出している居酒屋、横に長い派手な看板、あまり熱心じゃない客引きが休憩しているスペースに余裕のある観光案内所が無作為に広がるまさにダンジョンのようなアーケードでした。
届かぬ想い
開廊前の午前中はm7kenjiさんと市内観光をしていたのですが、高松築港には連日行きました。発展していながらのんんびりとした雰囲気があり心地よかったのですが、m7kenjiさんは事あるごとにネガティブで自分を貶める発言をするので港の真ん中で「わざわざ遠くから作品を見に来てくれる人や、仕事を依頼してくれる人がいる中で、それらを損なうようなことを軽々しく言うべきではない」などと熱いことを言っていたらデカい汽笛の音と共に派手な塗装のフェリーがやってきて、積まれた車が一斉に動き出し、その先には軍艦が停泊し、それに反対するデモ演説が始まり、休憩していたらしい大学生達がお祭り用の踊りの練習を再開し、頭の処理が追いつかなくなり、喫茶店で休憩して帰りました。
うどん屋さんの裏手にある換気扇のダクトが大きくて良かったです。
2両編成のローカル線(琴平線)で「仏生山」という駅にある喫茶店「kissa kai」にも行きました。大層穏やかな気持ちになれるお店でした。
行末
設営とレセプションパーティー、観光も終わり、帰る頃には高松の魅力に取り憑かれ再訪を心に決めていたところ、m7kenjiさんも同じ気持ちだったようで「またゆっくり来たい。次ヘルミッぺさんがここで展示をする時、僕は参加できずとも、展示を見るついでに観光に来るのもいいな。」とネガティブかどうか分からないラインのことを言われて悩んでいたら時間になったので出発。
小雨が降っており、アーケードのありがたみを感じつつ、空港に向かうとm7kenjiさんが「空港で最後にうどんを食べておきたい」と強い意志が籠った目。本当にうどんを楽しみにしていたんだなと感心しました。店内で「うどん棒の方が美味しかったな」と言ってたのにはまいったけど正直で可愛い子だなと思いました。仕事中の凛々しい顔と普段のやばい行動のギャップがたまらない。
そういえばm7kenjiさん設営中にスマホやipadを地面に置きっぱなしにするのをいちいち「踏んだら危ないから机の上に置いておこうね」などと親が子にするように言っていたのをギャラリーの人は「どういう関係ですか?」と笑っていたけど、
観光中、電車内でスマホをポケットではなく座席に直置きしてそのまま紛失し、幸運にも見つかったその足で向かったトイレに置き忘れたのを見て、ギャラリーの方々も同じように接するようになっていました。
香川刺激的で楽しかったです。
お近くの方はぜひお立ち寄りください。