アルケミー 『錬金術』 ②
そのできない理由があって、1つは錬金術を施そうとすると、
つまり元素を変換しようとすると、
猛烈なエネルギーがかかるからです。
もともと原子力はエネルギーが欲しくて、
原子力発電をやっているわけです。
原子力発電でようやく得たエネルギーを
全て投入しても錬金術を使うのに足りないとすれば、
もともと原子力発電を行うことの意味がなくなってしまう。
それから、もう1つの壁は、
核分裂生成物の中にはセシウムもあれば
ストロンチウムもヨウ素もあり、
他にもさまざまな原子核が一体となって含まれています。
一体になったところに、
錬金術を施そうとすると、
消したいものだけ消えるのではなくて、
逆に放射能が新たにできてしまったりする。
そのため、核分裂生成物の中から
セシウムはセシウム、ストロンチウムはストロンチウムと
まず分離してから、錬金術を施そうとするしかない。
その上で、分離したセシウムやストロンチウムに錬金術を施す、
つまり中性子をぶつけて、
他の原子核に変えることをやろうとしてきた。
そうすると、
例えばセシウム137に中性子をぶつけると、
セシウム138に変わり、毒性がなくなると期待しました。
しかし、セシウムという元素は天然のセシウムは133ですし、
134もあるし、137もある。
そして、セシウム134に中性子が当たってしまうと、
今度はセシウム135という原子核が生まれるのですが、
そのセシウム135の半減期は200万年です。
ですから、一方ではセシウム137を短い半減期のものに変えられるわけですけども、
もともと半減期2年だったセシウム134が200万年のものに変わってしまいます。
余計厄介なものを作ってしまう反応が同時に進んでしまう。
そうなると、駄目だということになりました。
#中性子 #原子力発電 #セシウム #ストロンチウム #放射能 #半減期 #脱被曝
#コラム #エッセイ #ノンフィクション #科学