きかざるものたち
現代の消費を十分にするには
地球がもうひとつ分必要だという
これはつまり
消費者が不足しているということだ
作っても売れないのは
消費する人がいないからである
*
仕事終わりに立ち寄ったパブのラジオでは
評論家がそんなことを言っていた
ボクは吟遊詩人として生計を立てている
アイリッシュモルトウィスキーの
オンザロックのグラスを回すと
カランと氷の音がして
虚しく心の奥に響いた
古より伝わる物語
勇敢なものたちを讃える詩
そんな物語に耳を傾けるものはおらず
バズる話題を端末から浴びては
ほとんどの村人は
疲れ果てているように見えた
そろそろ潮時なんだろうな
グラスを飲み干して
パブを後にした
英雄の歌を
反乱者の叫びを
革命者の魂を
紡がれた詩は
オンザロックとともに
消えてなくなってしまった
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