【丸井グループ】新しい世代から人気の「ヘラルボニーカード」。社会を前進させるプロジェクトがもたらした想定外のメリット
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ヘラルボニーのバリューにある、「福祉領域を、拡張しよう。」
この言葉には新たな文化を築くために営利企業として成長にこだわり、障害のあるアーティストの伴走者となって福祉領域の経済循環を創出するという想いが込められています。このバリューを体現する取り組みのひとつとなったのが、株式会社丸井グループとの「ヘラルボニーカード」の取り組みです。「使うたび、社会を前進させるカード」としてカードご利用額の0.1%をアーティスト報酬など福祉を支える力に変える仕組みは、日本のクレジットカード業界において初めての試みでした。2021年11月の発行以来、大きな反響をいただき、2023年3月には既存の2種類のカードに加え、新たに6種類のデザインのカードが登場しました。
この取り組みを担当する丸井グループ 武藤氏、ヘラルボニー 新井に、取り組みに至った背景や、規模やフェーズの異なる両社がなぜシナジーを生み出し続けられるのか、話を聞きました。
ヘラルボニーとなら、前例がなくても社会を前進させるクレジットカードを生み出せると感じた
ー「ヘラルボニーカード」の実現に至った背景を教えてください。
武藤氏:2021年2月に開催したピッチイベント「Marui Co-Creation Pitch」にヘラルボニーさんに申し込んでいただいたことがきっかけです。当社の開催する初めてのピッチイベントということで注力していたのですが、ヘラルボニーが審査員賞とオーディエンス賞のダブル受賞となりました。
その際のプレゼンで、ご利用額に応じて加算されるエポスポイント0.5%のうち0.1%をアーティストへの報酬とするというアイディアをいただきました。ただ、当時の日本ではポイントが引かれるというモデルが存在せず、海外にあることは知っていたものの、我々としては正直かなりの勇気を要する決断でした。果たしてお客さまがご自身のポイントを差し出してくださるのか、という思いはありましたが、社内の反響が大きく、当社としては非常に早い半年間でシステム開発を行い、「ヘラルボニーカード」の発行に至りました。
新井:丸井グループさんへ本企画を提案した背景としては、丸井グループがスタートアップとの連携実績が多数あったこと、そしてダイバーシティへの取り組みが企業カルチャーとして根付いていることが魅力的でした。
「多様性は楽しい」と社長自らが発信されているように社員の女性活躍推進など日本の企業の中でダイバーシティへの取り組みとその実績は随一の丸井グループさんとなら、事業の成長とともに社会を前進させる、社会にチャレンジできる考え、応募、提案しました。
ーお客さまからの反響はどうでしたか?
武藤氏:発行してから顕著だったのは、いわゆるZ世代、またヘラルボニー本社のある東北や北海道に住むお客さまの申し込みが通常のエポスカードに比べると圧倒的に多かったことです。とある学生さんが初めてのクレジットカードとして入会した際、「大学の授業でSDGsを学んでいるけど、自分がどうやって関わっていけるのか分からなかった。普段の買い物が社会を進める力になるのは、素敵な取り組みだと思う」とお話くださったのが印象的でしたね。
新井:HERALBONYの店舗でお客さまから「私、へラルボニーカード持ってます!」と誇らしげに提示いただくなど反響を感じています。なかでも、へラルボニーと協業を検討いただいている企業から「へラルボニーカードのような取り組みがしたいです!教えてください!」と問い合わせをいただくことが増えました。
単なるアートデータの使用によるデザイン面でのコラボに留まらず、社会を前進させるソーシャルグッドな事業スキームの中で、コラボ商品を展開し、新たなファンの獲得やコーポレートブランディングに活かしたいという共通したニーズの高まりを感じています。弊社としても、事業スキームから企画としてプロデュースできるようなご提案をさせていただいています。
想定外のメリット。社員のモチベーション向上にも繋がった社会的意義のある取り組み
武藤氏:デザインが可愛いだけでなく、背景のストーリーを説明するとさらに意義を感じていただけるので、お客さまにおすすめしやすいと店舗で接客する社員も言っていました。なんばマルイのポップアップを担当した社員は、「丸井グループ人生で、かつてこんなにスキップして仕事に向かったことがない。」と言っていました。店舗に立ってお客さまと話しているなかで、自分の仕事が社会に役立っていることを実感できたそうです。
ーお客さまや社員からのコメント、嬉しいですね。この取り組みがきっかけで、お客さまの新たなニーズに気付いたと聞きました。
武藤氏:「ヘラルボニーカード」がきっかけで、クレジットカードにアイデンティティや価値観、応援の意思を求める潜在ニーズがあることに気付いたのです。社内でも大きな変化があり、ご利用額の0.1%が国連UNHCR協会に寄付されるカード「エポスTOGETHERカード」も誕生しました。
新井:クレジットカードというと、お客さまご自身への還元率がカードを選ぶ主な基準というトレンドが長年あったように思いますが、その流れから逆行しているのですね。
武藤氏:まさにおっしゃる通りで、人気のクレジットカードランキングなどを見ていると、他社の場合は還元率で選ばれることが多いように思います。ただ、エポスカードの場合は好きなアニメとコラボしているから等、券面の素晴らしさについて言及したりと明らかに異なる理由が見受けられます。Z世代はもはやクレジットカードを還元率やステータスだけで選ばないという傾向があるのでは、と感じました。
新井:おっしゃる通りですね。アートを使えばエシカルという簡単な話ではなく、自分たちの強みやお客さまのニーズをきちんと把握した上で他社とのコラボレーションを考えていくと、社会的意義の大きな事業に昇華させられると思います。
武藤氏:ポイント還元率を減らす、という仕組みに勝機があるか当初は分からなかったので、我々としてもある意味片目をつぶって判子を押す思いでした。クレジットカード業界の常識を良い意味で崩してくれるスタートアップを求めている中で、数多ある福祉やアートを取り扱う団体・企業の中からヘラルボニーさんを選んだ理由は、当社のビジョン「ビジネスを通じてあらゆる二項対立を乗り越える世界を創る」と強く合致していたからです。さらに、当社では新たに策定した企業価値のステークホルダーとして、将来世代を加えたのですが、将来の社会を創り出すという視点が両社でマッチしているので、何をビジネスにしても還元できるものにつながると感じました。
また、アートデータを軸に事業を展開しているという点も、様々な事業での共創を可能にしているポイントだと思います。
大手企業とスタートアップ、なぜシナジーを生み出し続けられるのか
ー武藤さんの所属する、丸井グループ 共創チームについて教えてください。
武藤氏:社員約5,000名のうち、様々な部署に所属する200名が兼務として参画し、各チームで他社との取り組みを推進しています。
実は、共創チームが発足したのもヘラルボニーとの取り組みが成功したことがきっかけでした。スタートアップのスピードに合わせるため、執行役員が必ず各チームのトップに立ち、全ての決裁を行う体制です。
通常は各チームの組成を人事異動で行いますが、ヘラルボニーチームの場合はスピード感をもって実現したかったため、人事異動を待たずに、自ら声をかけてメンバーを募りました。さすがオーディエンス賞を受賞しただけあって、ヘラルボニーのファンである社員が多いなと感じました。
はっきり言語化するのは難しいですが、代表の松田兄弟が作っている雰囲気と当社の雰囲気が非常に合っているのだと思います。新井さんと喋っているだけで、ビジネスが生み出されるのもその理由の1つですよね。
ー両社間では普段どのようなやりとりをしていますか?
新井:月に1度定例を行い、アジェンダを3つに決めています。これまでの実績の振り返りと、それらを踏まえた今後のブレスト、さらに各メンバーからのアイディア出しです。その後取り組みに応じた分科会としていくつか同時並行で進めています。普段のやりとりで感じるのは、いちライセンシーとしてではなく、心から共創しているなということ。アートを使って何をしようかという考え方ではなく、社会に何を伝えていきたいのかという観点で日々話しています。時には一緒に飲みにいってコミュニケーションを深めたりもしてますね。そこから新しいアイディアが生まれたりすることもあったり(笑)。
ー最後に、両社で実現していきたい未来の姿はありますか?
新井:市場を捉えていくのはもちろんですが、新たな価値観を作り出していきたいです。「かつてポイント還元率でクレジットカードを選んでいた時代があったよね」というくらい、「ヘラルボニーカード」が社会の当たり前を変え、社会に良い水が流れるような後押しをする存在になれたらと思っています。感度の高い一部の人々だけでなく、社会に繋がっていくことが当たり前のステータスとして成り立つ文化を、丸井グループさんのさまざまなアセットを活用しながら共に生み出したいです。
武藤氏:当社としてはより多くの事業に共に取り組みたいので、共創チームだけではなくヘラルボニー事業部を発足させたいくらいです。それほど、ビジョンが一緒でヘラルボニーの展開するビジネスが秀逸だと感じます。これからもさらに話し合いを進めていき、時には他社も巻き込みながら世の中に新しい価値を生み出していきたいです。
子供を育てる母親としては、才能に着目する以前に障害のある人々であることに重きを置く社会のフィルターを、子供世代にはぜひ壊してほしいと思います。そのためにアートの力と、丸井グループの知名度を活用していきたいと、親として、またいち社会人としても強く感じています。
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