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「世界はもっと優しくなれる」物流施設から始まるESGの輪【プロロジス&ヘラルボニー】

ヘラルボニーは「異彩を、放て。」をミッションに、企業様とさまざまなカタチでコラボレーションし、社会課題の解決を目指しています。
今回ご登場いただくのは、物流施設の開発・運営を行うプロロジスさん。東北エリア最大規模の物流施設「プロロジスパーク盛岡」の施設空間、取引先に年賀のご挨拶でお配りしたドリップパックコーヒーのパッケージに、ヘラルボニーのアートを採用いただきました。
プロロジスとヘラルボニーが協業することになった経緯やコラボレーション後の成果、今後の展望について。
開発部マネージャー・荒木彰一さんと、アソシエイト・尻屋直さんにお話を伺いました。

今回のコラボレーションで起きたこと

  • 地域特色を障害のある方のアート作品から取り入れ、従業員が主体的に伝えたい取り組みに

  • 物流施設で働く人のウェルビーイングを高める取り組みに挑戦し、雇用の確保と他社との差別化へ

  • クライアント企業とのコミュニケーションが活発化

地域のシンボルとして「愛される物流施設」を作りたい

――今回ご一緒することになったきっかけは、プロロジスの社員の方が、たまたまヘラルボニーの作家のアート作品に目を留めてくださったことでした。

荒木彰一さん(以下荒木):同じ部署の担当が休日に美容室で雑誌を読んでいて、そこに載っていた一つのアート作品に魅了されまして。後日実際にその作品を見るために、ヘラルボニーさんが渋谷で開催されていたポップアップショップに足を運んだそうです。

尻屋直さん(以下尻屋):その後社内でヘラルボニーさんのお話をしたところ、そのアート作品の素晴らしさはもちろんのこと、障害のある方が自分の感性で生計が立てられる仕組みを作ろうとしている点も共感を呼びました。

荒木:弊社は全国で物流施設を開発しておりますが、岩手県での開発の際、地域ならではの特徴ある要素を施設に取り入れたい、その要素とは歴史なのか伝統工芸なのか…、広く考えている最中でした。

そこで、ヘラルボニーさんが岩手県の企業であり、私たちの見ていたアート作品が岩手県出身の作家さんの作品だと聞いて、「これだ!」と。
物流施設にヘラルボニーの作家さんのアート作品を取り入れるべく、アート作品自体の魅力や、ヘラルボニーが作家さん一人ひとりの想いを大切にされている点などを、担当チームにて社内で力説しました。

荒木:すると、力説したことが社内の人間に刺さりまして。コラボレーションが見事実現しました。

――とてもスムーズに理解を得られたのですね。

荒木:岩手県の施設なので、岩手県の作家さんを採用したのは大前提として、岩手伝統の技術「裂き織り」の豊かな色彩イメージと、ヘラルボニーの契約作家・八重樫季良さんのアートの色彩がマッチしていた点にも意義を感じていました。

荒木:また八重樫さんの絵の白い部分は、窓やドアを意図していると伺いました。物流施設の窓は、いろいろな制約上、窓が設置できない場所もあるのですが、アートが実際の「窓」の代わりをしてくれる。つまり、そこで働く人に閉塞感を感じさせないような「余白」を与えてくれるだろうと考えました。

「プロロジスパーク盛岡」で働く方々が休憩時間を過ごすカフェテリア。内部の壁にアートで色彩をプラス

――アート作品に込められた意図も活かしてくださったのですね。完成した物流施設を利用された方からはどのような反響がありましたか?

荒木:竣工してまだ間もないので、本格稼働はこれからです。ただ、竣工前の内覧会にお越し頂いた地元の方からは、「地元が誇る八重樫さんのアートが取り入れられて嬉しい」という声が聞かれました。
今後、施設内で働く方々には地域に根差した美しいアートに触れながら、心豊かに過ごしていただければ、と願っています。

いつものお年賀の挨拶にアートをプラスしたら、起きたこと

――八重樫さんのアート作品は、年賀の挨拶にお配りするコーヒードリップバッグのパッケージにも採用いただきました。

尻屋:お年賀は年一回、大切な法人のお客様にご挨拶に伺うときにお渡しするもので、すべてのお客様に会社の想いを伝える絶好の機会。何をお渡しするかは毎年非常に悩みます。

私自身は、当初からヘラルボニーさんのミッション「異彩を、放て。」の「異彩」という言葉に心を打たれていました。そこで、今回のコラボレーションを通じて「一人ひとりの違いが、最大の武器になる」という姿勢を実践していきたいと熱く伝えましたね。

荒木:パッケージには新しい物流施設を象徴する八重樫さんのアート作品の起用を尻屋と決めました。その後、中身は障害者就労施設で焙煎しているスペシャルティコーヒーを使用すること、パッキングの作業も障害者就労施設の皆さんにお願いすることが決定。パッケージと中身の両方で、弊社がESGの観点を大切にしていることをお伝えできるようにしました。

荒木:ただ、社内の理解という点では、コーヒードリップバッグの取り組みで懸念していたこともありまして…。

ーーと言いますと?

荒木:弊社では、ブランディング戦略として、たとえ社内で配布する資料であっても、プロロジスのイメージカラーと組み合わせてはいけない色が指定されていたり、使用できる文字の色も制限されています。
そのため、ヘラルボニーの作家さんのアート作品を起用できないのでは?という心配がありました。しかしこの取り組みに対する社内の理解がスムーズに得られたこともあり、作家さんのアート作品が全面的に尊重されました。

――とてもありがたいです。制作にあたっても作品を尊重し、細かい配慮をしてくださいました。

尻屋:ここまで想いを込めた以上、その想いをしっかりお渡しする皆様に伝えたい。「美味しいコーヒーをありがとうございます」と言われるだけで終わらせたくない。そう強く願っていました。

そこで、関係役員が参加する会議で、しっかり時間を割いて、ヘラルボニーさんとのコラボレーションの経緯やパッケージのアート作品に込められた想いを丁寧に周知しました。

「お客様にお渡しするときは、外箱を開けてアート作品を見せながら渡してほしいと、渡し方もレクチャーしました」(荒木さん)

――とても丁寧にお伝えいただいたのですね。お渡ししたお客様の反応はいかがでしたか?

尻屋:配布後に社内でアンケートを実施したところ、大部分の回答が「素敵ですねと言われた」というポジティブなものでした。

プロロジスは不動産の会社なので、建物などのハード部分のイメージを持っていたけれど、今回ソフトの部分も大切にしてることがわかり、改めて素敵な会社だと思った、という嬉しい声もありました。

荒木:東北エリアの方に、このコーヒーを日本中の企業の皆様にお配りしていることをお伝えすると、「地元発のアートが全国で有名になって誇らしい」と褒められることも多かったです。

――嬉しいですね。今回のお話を進めていく過程で、お配りいただく個数が当初よりもどんどん増えていきました。

尻屋:そうなんです(笑)。他部署からも、「こんなに素晴らしいコーヒーなら、お世話になっている方々にお渡ししたい」と依頼が入り、配布数がどんどん増えて。

――社員の皆さんがそんなに熱心に配ってくださったのですね!

荒木:はい。在庫がなくなるほど積極的に配布してくれました(笑)。しかも後日実施したアンケートが、社員全員からすぐ返ってきたことにも驚きました。

社員の感想も、「このコーヒーを渡せること自体が嬉しかった」「渡してお客様との会話が弾むのも嬉しかった」といったものが多かったですね。
この積極性の高まりや、「嬉しい」という言葉から、ヘラルボニーさんとの協業で社員にポジティブな姿勢が生まれ、エンゲージメント向上にも繋がったと感じられました。

異彩アートで同業他社との差別化を叶え、選ばれる物流施設になる。

――最後に、今後チャレンジしたいことがあれば、教えてください。

荒木:我々のような物流不動産に携わる業界は、近年同業他社が増えてきたことから、独自の環境づくりでも差別化をはかり、「選ばれる物流施設」になることが大切な要素となっています。一方、日本国内では人手不足が深刻な問題で、入居者様からは物流施設で働く人材の確保が難しいという声も多いです。

立地や施設そのものの品質、いわゆるハード面が大切であることは大前提です。加えて、物流施設で働く方が快適に幸せに働き続けられるような環境づくりは、ソフト面の整備として非常に大切です。それが地域に根差したアート作品で彩られた物流施設なのか、あるいはもっと他の素敵な何かも盛り込んだものなのか。現在アイデア出しの段階ですが、今後もヘラルボニーさんとの協業を通じて、形にしていけたらいいなと思っています。

そうして、物流施設を舞台に働く人のウェルビーイングを高める取り組みを進めることで、雇用の確保と、同業他社との差別化につながると良いなと考えています。

尻屋:また、今回ある社員がお客様にコーヒーをお渡ししたことをきっかけに、お互いの社内のESGの取り組みの話で盛り上がり、情報交換するまでになったそうです。それを聞いて、世界って実はもっと優しくなれるんじゃないかなと感じました。

今回のヘラルボニーさんとのコラボレーションを起点として、もっともっと世界中にESGの輪を広げていけたらと考えています。

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