女剣士ミズキ改め、
春日部の観光のコンテンツをちりばめたストーリーを何度も書き直してきました。小説としては未熟。挿絵をつけたいけどイラストがうまく描けない。
それでも、この作品が春日部の魅力的なコンテンツとなるよう編集を重ねていきたい。
女剣士ミズキ改め、十一
豊もミズキの前に座り
「ミズキ、今まで本当のことを話してやれなくてすまなかった。本当はミズキの十二歳の誕生日にすべて話そうと、由香里と陽子と三人で決めていたんだ。ミズキが無事に十二歳の誕生日を迎えられるということは病気の遺伝がないという証。それを祝おうと思っていた。由香里は自分の病を知っていた。美千代さんがどうしてあんなに自分に厳しくするかも。それでも、思い通りに生きることを選んで家を出てミズキを産んで、短くとも幸せな毎日だったと思う。ミズキの描く絵をいつも楽しみにしていた。由香里はミズキの誕生日を迎える前の死を覚悟していた。それでも授賞式まではどうしても生きたかった。ミズキを送り出してからすぐに由香里はナースコールしたんだ。だからミズキのせいじゃない!あの日以来口を閉ざしたミズキは由香里の死のショックから立ち直れないのだろうと、時間が心をいやすのを待っていたんだ」
陽子もミズキに話しかけた。
「ミズキちゃん、ほんとにごめんなさい。ずっと話したかった。豊さんが妊娠した由香里さんを連れて診療所に来た時から、看護師だった私を由香里さんは家族同然にしてくれて。無事にミズキちゃんが生まれたとき由香里さん、私に『陽子さん、私の死んだあとはこの子の母親になってね。私は籍を入れないから、あなたが実島の籍に入ってね』って。子どもを産んだ日にそんなこと言うのやめてって言ったんだけど、それからも度々ミズキちゃんの母親、豊さんの奥さんになって欲しいって、本気でお願いされて……。入退院するようになってからは三人で話し合ったの。由香里さんが命ある限りは豊さんの妻として、ミズキちゃんのママとして存分に生きてもらおうって。その後のことは豊さんと私の二人で由香里さんの思いを引き継いでいこうって」
ありったけの涙を出し尽くしてしまったミズキは顔をあげて
「陽子さん、あたし、陽子さんのこと好きだし、ずっと頼りにしてました。ママの入院中も陽子さんがいたから寂しくなかった。でも、今の話聞いてもなんかはっきりしない。陽子さん、お父さんのこと好きなの?私のためだけじゃなくて。それならいいの。お父さんも、陽子さんのこと好きなの?素直に言って!」
これには陽子も豊も顔を赤らめた。黙って聞いていたお坊さんが
「ははは、これは娘に一本取られましたな。人間、素直が一番!はははは」
一同に笑いが起こり、和やかな会食になった。お坊さんと親戚が引き上げると、おばさんが位牌と遺影を安置し、ミズキたちを仏間に招いた。
仏間に入ったミズキは鴨居の写真を見て、あっ!と声をあげた。
「あの写真の子は……誰ですか?」
ミズキが指さす写真を見ておばさんは言った。
「ああ、あれ、美千代さんの長男で、五歳で亡くなった新太郎ちゃん。かわいい盛りだったわねえ……」
その写真に写っていたのは昨日ミズキを春日部駅から連れ出した、あの麦わら帽子の男の子だったのだ。
(新太郎ちゃん……ママの弟……)
これまでの奇妙な出来事のすべてがつながり、ミズキの頬に温かいものが流れ落ちてきた。それをぬぐうことなく、ミズキは仏壇に手を合わせた。