女剣士ミズキ改め、
春日部の観光のコンテンツをちりばめたストーリーを何度も書き直してきました。小説としては未熟。挿絵をつけたいけどイラストがうまく描けない。
それでも、この作品が春日部の魅力的なコンテンツとなるよう編集を重ねていきたい。
女剣士ミズキ改め、十二
「ここはミズキちゃんの実家だと思って、いつでもおいで」
「はい、また来ます。そうだ、あの……業平橋ってこの近くですか?」
「ああ、業平橋ね。近くにあるよ。小さい橋だから見落とさないようにね」
帰途は豊の運転する車だった。乗り込むと陽子が
「ゲストハウスのハルさんにお礼を言って帰りましょう」
「え?どうしてハルさんのこと知ってるんですか?ハルさんからのメールで封筒を見てって……おかしいと思ったんです」
「あのね、昨日何度もミズキちゃんに電話しても出なくて、何度目かの時に女の人が出て『置き忘れてるケータイに何度も着信で、まま母って表示されてるから何かわけありかと思って出ました』って。場所を聞いてびっくりしちゃった。春日部にいるなんて。由香里さんがミズキちゃんをここに呼んだのかもしれないわねえ……」
(ハルさん、わかっていて黙ってあたしを送り出したんだ)
「あ、お父さん、ちょっと止まって。あ、これ業平橋」
ゆっくりとその橋を渡り、市街地へ入って行く間、豊が話した。
「由香里から以前聞いたことがあったんだ。実家の近くに古隅田川と業平橋と梅若塚があるって。梅若伝説って人さらいにさらわれた子の話でしょ?ぼくがお母さんに知らせなかったら、人さらいと同じになるからいやだと思って」
車がゲストハウスに着き、駐車場に出ていたハルに豊と陽子が頭を下げ、お礼を言った。
ミズキもお礼を言おうと、ありがとうの他に何か言いたいのだけれど、うまく言葉にできない。そのとき、ハルは「ちょっと待って!」と言い、中から何かの紙をもって出てきた。
「これ、ミズキちゃん、自分のキャラクターを描いたんでしょ?でも女剣士はあんたには合わないね。次に来るときは違うの描いてきて。昨日ここに来た時の顔とね、今の顔は違って見えるよ。あはは、いい意味でね」
それは昨日みゆのお手本に描いた女剣士の絵だった。
「はい、また必ず来ます。自分にぴったりなのを描いてきます」
ミズキはハルの目をしっかりと見て言った。本当はハルが何か見透かしていながら黙って受け入れたり、送り出したり、キャラを変更するよう言ったり……ちょっと悔しいけど、感謝していることを言葉で表したかった。そしてこの旅で誰にも告げていない不思議な出来事の数々をハルには話してみたかった。でも、父と陽子が待っていたので、今はとりあえず、青梅に帰り、またここに必ず来て、その時にはきっと話そうと心に決めた。
三人は春日部をあとにした。
その後、あの声はもうすっかり聞こえなくなってしまったが、時折、何かがものを言わずに語りかけてくるように感じるとき、ミズキはスケッチブックを開いて描くようになっていた。
夏休みには、麦わら帽子をかぶり、スケッチブックを持ち歩くミズキの姿が青梅にはあった。
夏休み前の移動教室?もちろんミズキは参加して、降りる駅も間違えなかった。
これで「女剣士ミズキ改め、」はおしまい。最後までお読みくださりありがとうございます。全編掲載は次に。
そして続編もまた編集しながら掲載していきます。
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