女剣士ミズキ改め、
春日部の観光のコンテンツをちりばめたストーリーを何度も書き直してきました。小説としては未熟。挿絵をつけたいけどイラストがうまく描けない。
それでも、この作品が春日部の魅力的なコンテンツとなるよう編集を重ねていきたい。
女剣士ミズキ改め、 十
ミズキは言われるままに本堂に座り、読経や焼香の間もぼんやりしていた。その後、お墓に移動すると、そこで墓石の作業している男性に「おや、また会いましたな、無事に梅若塚に来られたんですな」と声をかけられ、我に返ったミズキ。
「あっ、昨日助けてくれた……石屋さん。梅若塚ってここなんですか?納骨って、ママのだったんですか……」
「それでは家の方で簡単な食事を用意していますから、皆さんどうぞ」
文子に促され、みな動き出した。境内にはこんもりと土盛りされたところに石碑があり、梅若塚と書かれていた。傍らには、ここが梅若伝説の地だという立札があった。
(墨田区にあるって、先生、言ってたのに……春日部にあるなんて……梅若とお母さんはここに来たの?ということはさっきの川……古隅田川というのがほんとの隅田川?……なんだかよくわかんない……この法事も……わかんないことだらけ……)
歩いて二、三分のところにある家に着き
「ここがミズキちゃんのお母さんの実家よ。立派でしょ?」と陽子。
広間のような部屋の大きなテーブルに料理が並び、奥に由香里と美千代の遺影が並んで置かれ、お坊さんの「献杯」の声で食事が始まった。
そこへ、豊が何か四角いものを抱えて持ってきて、包んでいた風呂敷をはずした。
(それは……あっ!)
ミズキは驚いて息をのんだ。
「皆さん、今日は由香里を故郷に迎えてくださりありがとうございます」
一同に頭を下げた豊は遺影に向いて、持っていたものを見せ
「お母さん、これはあなたの孫、ミズキが描いて賞を取った絵です。由香里が無事に子供を産み、育てていけたのはあなたが由香里を大切に育ててくれたおかげです。ありがとうございました。由香里は本当はミズキを連れてあなたに会いに来たかったはずです。今日になってしまい、すみません。由香里は実島の籍に入らず、最後まであなたの娘でいました」
会食の人の中から涙をすする音がした。
「そして、由香里。自分の病を知りながらミズキを産んで育ててくれてありがとう。この絵は君が心待ちにしていたミズキの十二歳の誕生日を描いた絵だ。ミズキは今も元気だ。僕と陽子は君の思いを受け継いでいくから安心してくれ」
それを聞いていたミズキはずっと胸に閉じ込めてきた思いが堰を切ったように一気にあふれ出した。
「ごめんなさい、ごめんなさい!お父さん、ママを死なせたのは私です!ごめんなさい!」
「う~うっ!うっ!う~~」両手を床についておえつした。
「あの日、授賞式の日、入院してるママに挨拶していこうとしたら、ママ、いつもより息が荒くて、声も弱々しくて、気になったんだけど、ママが早く授賞式に行きなさい、早く!って言うから、あたし、看護師さんに連絡するの忘れて、そのまま会場に行っちゃって……あたしが行かなければ、あたしがちゃんと伝えていれば、ママ助かったかもしれないのに!うううっ……あたしのせいなんです!ごめんなさい!うううっ……うううっ……賞状を一番先にママに見せようと思って、病院に行ったら、あんなことになってて……それからはもう……何も覚えてなくて……そのあとも何も言えなくて……ずっとずっと……ごめんなさい!ごめんなさい!ううう、わあ~~~」
ミズキは声をあげて泣きじゃくった。
「違うのよ、そうじゃないのよ……」
泣きじゃくるミズキを陽子がしっかりと抱え背中をさすり
「ミズキちゃん、違うのよ。ごめんなさい。辛かったでしょうね」自分も涙で顔をぬらした。