女剣士ミズキ改め_タイトル3

女剣士ミズキ改め、

春日部の観光のコンテンツをちりばめたストーリーを何度も書き直してきました。小説としては未熟。挿絵をつけたいけどイラストがうまく描けない。
それでも、この作品が春日部の魅力的なコンテンツとなるよう編集を重ねていきたい。

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   女剣士ミズキ改め、 五

ミズキが立ち上がって出ようとすると、先ほどのスタッフが近づきどこに行くのか尋ねた。
 「あの……業平橋とか、梅若塚とか……探しに……」
 (あ、なんで……あたし、スカイツリーって言おうとしたのに……)
 「梅若塚?ああ、フードセレクションのお菓子ね!あれ美味しいですよね!待って!パンフレットがありますから!」引き留めようとするスタッフ。
 「いえ、お菓子じゃなくて……」
 すると奥のほうから年配の男性が出てきて
 「梅若塚って、満願寺でしょ?業平橋も古隅田川にあるじゃない。待って。ほらこれ健康ウオーキングのマップ!これ持って行きなさいよ」
 (梅若塚は墨田区にあるんじゃないの?でも、古隅田川って……どこかで聞いたような。でもとにかく電車に乗らないと……)
 「ありがとうございます」と頭を下げ、出ていこうとしたとき、イーゼルにかけられた展示物に目が釘付けになった。それは何十枚かの名刺大のカードだった。その一枚一枚に動物などをモチーフにしたキャラクターが描かれており、それぞれに名前がついていた。
 (何なのこれ?すごくきれい……。街キャラカード?キャラクターカードなの?)


 そこへ、カラコロカラコロ下駄の音を響かせてやって来た女ががうしろからふいにミズキに声をかけた。浴衣に前掛け、たすき掛けの、いかにも女将さんという恰好。
 「ねえそれ!かわいいでしょ!街のお店さんとか人とか名所とか、キャラクターにデザインされてるの。何もない街って言われるけどね、どうしてどうして、キャラクターの宝庫なんだから、春日部は。しんちゃんは著作権があるから市民は勝手に使えないけど、これはね、誰でも作れて、タダでもらえて、集めたり交換したりできるんだ。いいでしょ?あんた絵が好きそうね。そうだ、うちにおいでなさいよ」
 (初対面なのに絵が好きそうとか、家においでとか……なんなの?)
 「あの、私、行くところがあるんで……」
 「あのね、どこか行くにしても、お腹空いてるでしょ。顔色があんまりよくないよ。うちでおむすびでも食べて。それからでも遅くないから!」
 そういって、ミズキの手を握り、施設の中にすたすた入る女にスタッフがうんうんとうなずき、
 「あ、ハルさん、中国からの周さん一家も中にいらっしゃいますから、よろしくお願いします」
 「ハイハイ、ハロー!ウエルカムトゥーカスカベ!」
 ハルはミズキの手を握ったまま、中国人家族を引き連れて表に歩き出した。
 情報館のスタッフはお辞儀をして送り出した。

 ミズキが手をひかれるまま中国人家族と一緒にハルに連れられて行った所は木造の古い民家のようだが、そこがゲストハウスなのだった。
 「さあ、ここですよー。お疲れ様。周さん、どうぞ中へ。スタッフが案内します。あ、あんたはあそこ、縁側に座って待ってて。今おむすび持ってくるから」
 ハルがミズキに指さした庭のような駐車場のような所にテントが張られていた。その中にテーブルと椅子が置かれ、子どもたちが何か描いている。ミズキがそっとのぞき込んでみると、キャラクターのぬり絵をする子、自分でキャラクターのような絵を描いている子。
(あ、このぬり絵はさっき見たキャラクター……)


 「はい、おむすび。それとお茶。さあこれ食べて!」
 ハルはお盆を縁側に置いて
 「食べたらね、ちょっと、あの子たちが絵を描くのをみてやってくれない?ありさが世話してくれてるけど、あの子一人じゃたいへんだから」
 女将の強引さに押されて、おむすびを食べると、なんだか気持ちが落ち着いたミズキ。子どもたちのほうを見ると、その中で高校生くらいの女の子がこちらに手招きしている。
 三、四歳の女の子がべそをかいて、何かもめていた。
 「この子、みゆちゃんっていうんだけど、美少女戦士のキャラクター描きたいって泣いてるの。あたし、絵は不得意だから、ちょっと見てあげてくれない?」
 みゆは泣きながら「あたしびしょうじょけんしルピーかくの」
 「ふ~ん、どんなのがいい?こういうのは?」
 ミズキはみゆの隣に座って白紙の用紙に絵を描いて見せた。
 「それ~、そういうの!あたし、これがいい!」
 みゆはすっかり機嫌が直って、ミズキの絵をお手本にして描き始めた。
 そばで絵を描いていたみゆの兄らしい男の子に日本の侍みたいなルピーはおかしいだろと言われても
 「これがいいんだから!みゆは!お兄ちゃんはだまっててよ!」
 兄弟げんかになりそうなのをなだめながら、ありさがそばに来て
 「ねえ、もしかして家出?」とミズキに耳打ちした。
 「あの……ちょっと違いますけど、まあ、同じようなものかも……」
 「ここはね、事情がある若い子は一泊だけならただで泊めてくれるから。今日はここに泊まれば? 」
 ミズキはありさがなぜ家出したのかと聞いたのか、そもそも何故、初めて会ったハルが自分の手を引いてここに連れてきたのかよくわからなかった。
 そして、ここに泊まっていくということに抵抗をあまり感じない自分も何故かわからず不思議な気持ちだった。
「さー、今日のお絵かきはこれでおしまい。バーベキューここで食べる人は6時にね、子ども300円。親が来るなら大人500円だよ。ハイ、解散!ありさはお客さんの着付け手伝ってね。他の人はバーベキューの準備!」
 ハルが数人のスタッフに指示して片づけとバーベキューの準備が始まった。
 「ハルさん、ミズキちゃんにも浴衣着せていいですか?それから、一泊させてあげてもいいですか?」
 ありさがハルに聞いた。
 「ああ、いいけどね。その前にちょっと本人と話すから」
 「あんた名前は?どこから来たの?」
 「実島ミズキです。青梅から来ました」
 「親は春日部にいること知ってるの?」
 「これから連絡します。両親も今日は法事で埼玉に泊まりなので」
 「あ、そう。宿泊代はいらないけど、お手伝いはしてもらうよ。それからメールのアドレス交換させて」

   続く


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