女剣士ミズキ改め、
春日部の観光のコンテンツをちりばめたストーリーを何度も書き直してきました。小説としては未熟。挿絵をつけたいけどイラストがうまく描けない。
それでも、この作品が春日部の魅力的なコンテンツとなるよう編集を重ねていきたい。
女剣士ミズキ改め、 八
翌朝、ミズキは6時半に起こされ、朝食の支度を手伝った。台所にはすでに二人のスタッフが準備を始めていた。
「おはようございます。実島ミズキです。よろしくお願いします」
渡されたエプロンを身につけながら改めて挨拶するミズキに
「おはようミズキちゃん、恵美です」
「ぼくは長島です。よろしくお願いします」
「長島さんは大学生……ですか?」
「えへへ……よく言われます。これでも一応卒業して、社会には出てるんですけど」
居心地いいから大学出てからもここから離れられないんでしょと恵美に言われ
「だって……設計事務所っていったって、ぼくなんかバイト扱いで給料安くて……それだけじゃ一人でやってけないし……国家試験だって受けたいし……食べるとこ、寝るとこ、ここのバイトの給料、ないと、ぼく……」
「あ~あ~、それだから大学生って言われちゃうんだね~」
「恵美さん、そう言っちゃいますか?これでも、ハルさんには大工仕事とか電気の簡単な工事とかやってもらって助かるって言われてるんですから。こんなぼくでも役に立つってうれしいじゃないですか」
「あはは、ごめん、ごめん、うんうん、助かってますよ。裕太の遊び相手してくれたりね。これからもよろしくね!」
恵美は長島の背中をポンと叩いた。
ミズキにとっては総勢11人分の朝食の準備は初めてだった。前日にセッティングされたテーブルに運んで配膳するのを恵美に指示されながら動いた。あわただしかったが何故か楽しかった。用意ができる頃、皆集まってきた。
こんなに大勢で朝食を囲むことがなかったミズキは圧倒されながらもいつもより食欲がわいて、ごはんのおかわりまでした。
あっという間に皆朝食をたいらげ、後片付けのとき
「ねえ、ミズキちゃんもハルさんからおむすびもらったの?」と恵美が聞いてきた。
「はい、そうです。あの、お腹が空いているみたいだからって……」
「うふふ、やっぱりね」
「あの、おむすびって、何か意味があるんですか?」
「あたしも三年前にね、ハルさんに声をかけられておむすびもらったの。家を飛び出して裕太と二人でふらふら歩いていた時」
「ああ、そうでしたよね。そのあと恵美さん、裕太君を預けてちょっと出てくるって言って夜になっても戻ってこないしケータイも切ってるから、僕ら、もしかしたら捨て子?って思って、警察に行きましょうってハルさんに言ったら、ハルさんは、絶対に戻ってくるからって……」
長島が口をはさんだ。
「あはは、心配かけてごめんね。家に帰って自分たちの荷物、詰めるだけ詰めて、離婚届に自分のサインしたのをテーブルに置いて、実家とか知り合いに全部連絡した後で、ケータイの電源切って、ダンナが帰る前に家を出てここに戻ってきたのは夜遅くなっちゃって。そのあとはハルさんの息子さんの知り合いの弁護士さんに相談して、落ち着いたけど……あのとき、おむすびもらってなかったら、あたし、裕太道連れに……なんて……マジで危なかった。あれがなかったら、ここに住んで、整体師の資格取って、整体ルーム開くこともなかったんだわ」
「へえ……おむすびって、なんかすごい……」
「あはは、すごいのはハルさんの勘かな?あと、地域のつながり。昨日情報館から周さん一家到着の電話の時に、ミズキちゃんのこと、ちらっと聞いたんじゃないのかな、ハルさん」
(あ~、それで、あたしに話しかけて連れてきたのか……)
玄関掃除はみちると一緒だった。
「みちるさん、就活ってたいへんそうですね」
「あ、うん。職種にもよるけどね。面接のときに家庭の事情とか質問されるとね、それが落とされる原因なのかなって、ちょっと思ったりして……でもあきらめることはないって、絶対大丈夫って、ハルさん、言ってくれるし……せっかく奨学金でなんとか大学辞めずに続けてきたんだから、あきらめたらもったいないよね。あたしの知り合いの中には家の都合で退学した人もいるから。あと、夜のバイトして疲れて授業に出られなくて単位落として留年っていう人もいるし。あたしはここで働いて、寮費と食費引いて、少しお小遣いが残る程度だけど、それでも楽なほう……みんなけっこう苦労してる」
「そうなんですか。大学生もたいへんなんですね」
掃除が終わってみちるといっしょにハルに報告にいくと、
「はい、ミズキちゃん、これ水。迷ったり困ったことがあったらメールしてね。それからこれかぶって!」
ハルはペットボトルの水を手渡し、麦わら帽子をミズキにかぶせた。
「よく似合うじゃない。かわいいよ。春日部の特産品なんだからね。はい、それではいってらっしゃい!」