女剣士ミズキ改め_タイトル3

女剣士ミズキ改め、

春日部の観光のコンテンツをちりばめたストーリーを何度も書き直してきました。小説としては未熟。挿絵をつけたいけどイラストがうまく描けない。
それでも、この作品が春日部の魅力的なコンテンツとなるよう編集を重ねていきたい。

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    女剣士ミズキ改め、 七

 中国人家族の母親は露店の食べ物に興味津々で覗き込んでは何か言い、ありさを介して買ってはほおばる。その息子は何かをみつけたのか、道路の反対側へみこしの間をくぐって行ってしまった。
 「ありささん!周さんの子があっちに!」ミズキはありさに声をかけた。
 ありさが周さんに声をかけ、そちらに向かうと、そこはお面の屋台だった。アニメのキャラクターが並んだお面に夢中になっているのだった。
 すると今度は、周さんが妻がいないと言い出した。奥さんがイカ焼きをほおばっていた屋台に戻ったが、いない。あたりを見回してもいない。
 だが、周さん父子はもう宿に戻りたいと言い出した。
 「それじゃあ、いったん送ってからまた探しにこよう。もしかしたら奥さん戻ってるかもしれないし」
 そう言って二人を連れて戻ろうとするありさにミズキは
 「あの、あたしはもうちょっと探してみますから、二人を連れて戻ってください」
 「え?ミズキちゃん一人で大丈夫?」
 「はい、もし迷ったらまた誰かに聞きますから大丈夫です!」
 ミズキは周さんの奥さんを探しながらこちら側の歩道を端まで行き、折り返して反対側の歩道を歩いた。
 (いないなあ……もしかしたらあっちかな……)
 大通りの十字路を駅と反対側へ行ってみることにした。目の前にはアーチ状にほのかにライトアップされた橋。

   ミズキは橋を起点に左右に伸びる川岸を見つめた。
 大通りは露店の照明がまぶしいほどの明るさだったのに、川べりは灯りもなく古い商家の蔵の裏手はまるで時代劇で見たような暗がりで、怖いくらいだった。
 その暗がりの中に一組の親子連れの姿が現れた。
 「あの~、浴衣の女の人見ませんでしたか?中国人なんですけど」
 その親子連れは黙って先のほうを指さした。
 「あっちですか?ありがとうございます」
 そう言って通り過ぎようとしたとき、その親子連れの子どものほうが麦わら帽子のあの子に似ていたので、あっ!と思い、振り返った。けれど、もう二人の姿はどこにも見えなかった。ミズキはなんだかゾクッとして、急ぎ足でその場所を抜けようとしたとき、暗い川岸にうずくまっている何者かにぶつかり、転びそうになった。
 「ごめんなさい!」
 その何者かは立ち上がりミズキに向かってきた。
 「ウ、ウ、ウ……ワ……ワタシノコドモ、ドコイマスカ……」
 はだけた着物のすそをひきずり、振り乱した長い髪が顔を覆っている女がミズキに抱き着いてきた。
 「ヒエ~~~~~!イヤ~~~~~ッ!!」
 ミズキはその女と一緒に尻もちをついた。怖くて目を開けられないミズキ。
 そのとき、「どうしました?大丈夫ですか?」と男性の声がした。
 「あらあら、転んじゃいましたか。はい、二人ともゆっくり立ち上がって」
 と助け起こされ、ミズキが目を開けると、そこには、髪も浴衣も乱れきった周さんの奥さんが放心状態で立っていた。
 「あの、周さん、子どもさん、いました。ユアサン、オーライ、セーフ!」
 それを聞いて「オーライ?アア~アア~……」顔に手を当て泣き始めた。
 「あたし、ハルさんのところに連絡しなくちゃ。あっ、でもケータイ忘れてる!」
 「ハルさんとこ?そう、じゃあ僕、送っていきますよ」と助けてくれた男性。
 帰る途中ありさにも出会い、四人はゲストハウスに着いた。
 そこには先に帰った周さん、しんちゃんのお面を頭に乗せた周さんの息子も座っていた。ズルズルと浴衣を引きずりわが子に抱き着く母親の姿に息子はぎょっとしてたじろいだ。
 「一人っ子ですからね、あの国の人たち、子どもを溺愛しますな」そういう男性に
 「中国じゃなくてもね、親にとって子どもはいつも心配なものさ。探すのに必死で、動きにくいから帯自分で緩めちゃったんだねえ。石屋さん、今日はありがとう。さあ、なんか飲んで」
 「はいはい、じゃあビール一杯だけ。明日は満願寺で納骨があるんで」
 (満願寺って……情報館の所長さんが言ってたような……)
 「あの、満願寺って梅若塚があるところですか?あたしそこに行きたいんです」
 「じゃあ、僕が明日行くときに車で送ってあげましょうか?」
 それを聞いたハルが
 「歩いても行けるからさ、ミズキちゃん、明日一人で歩いて行ってごらん」

      女剣士ミズキ改め、八 に続く


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