女剣士ミズキ改め、
春日部の観光のコンテンツをちりばめたストーリーを何度も書き直してきました。小説としては未熟。挿絵をつけたいけどイラストがうまく描けない。
それでも、この作品が春日部の魅力的なコンテンツとなるよう編集を重ねていきたい。
女剣士ミズキ改め、六
「あの……ありささん、ハルさんって、お母さんですか?」
「ハルさんはここの大家さん。あたしはスタッフを兼ねた住人。お姉ちゃんはいるけど、両親はいないの。ここのスタッフみんなここに住んでるの。ここのみんなが家族みたいなもんかな、あはは……」
ありさはリビングでしゃべりながら手際よくミズキに浴衣を着せていった。
「すごいですね、ありささん、浴衣を着せられるなんて」
「うん。ハルさんに教わったから。外国の人に着せるときはちょっと難しい。体形が日本人と違うの。でも中国人なら似たようなもんだから楽。外国人とはね、一緒に歩いて写真を撮ってあげたりするの。粕壁宿っていって江戸時代からの宿場町だったから、古いお店とか蔵とかあって、外国人はそこで着物着て写真撮るのがうれしいみたい。着物着て茶道っていうときもあるよ。だから茶道のお作法も覚えちゃった。お茶の先生は街の人。英語はお客さんから教わって……あはは、高校の友だちは塾とか行ってるけど、あたしはここが塾みたいなもん……あはは」
ありさはミズキの着付けを終えると、奥の座敷に中国人の女性を招き入れ、着付けを始めた。そこに女性の夫や子供も入って行き、男性二人にはハルが着付けを始めた。
女性の着付けを終えてリビングに出てきて、そこで自分も浴衣に着替えようとしたありさに
「ありさ、もうすぐバーベキューの支度始めるからさ、ここでなく部屋で着替えなよ」と紺色のスーツを着た若い女性が声をかけた。
「あ、お姉ちゃん、お帰り。あの、この子ね、ミズキちゃん。今日一泊するの」
「こんにちは」と頭を下げるミズキに
「ミズキちゃん、いらっしゃい。あたし、ありさの姉のみちるです。あとでまたゆっくりね」
和室の隣がありさとみちるの部屋だった。二段ベッドと二つの机と真ん中に丸いテーブル。化粧品や小物類がいかにも女子の部屋らしかった。
「お姉ちゃんはね、大学生で、今就活中なの。調理師免許も菅理栄養士の資格も持ってるけど、就職って、たいへんらしくて……」
そういいながら自分も浴衣に着替えていく。
「ありささんも大学受験するんですか?」
「う~ん、あたしはあんまり勉強好きじゃないから。でも、子どもが好きだから保育士さんになりたい。できれば前にいた施設で保育士さんになりたい」
「えっ?施設って?」
「児童養護施設。お姉ちゃんが高校卒業まではいたんだけど、卒業すると出なきゃいけなくて。それであたしもお姉ちゃんと一緒に出たの。お姉ちゃんはあたしが高校出るまで残っててほしかったと思うけど、お姉ちゃんがアパート探そうとしてたらハルさんが声をかけてくれて、ここで一緒に住んだら?って」
着替え終わってリビングに出ると、中国人の女性が何か言いながら帯を緩めようとしている。
「苦しい?でも、ノーノー!緩めちゃダメ!着崩れするから!ガマンガマン!」とハルは笑った。
「それじゃあ、ありさとミズキ、頼むね。周さんたちの日本語は片言だからね、買い物とかみてやってね」
大通りはみこしのパレードが始まっていた。みこしと次のみこしの間には担ぐ人、世話人、ついて歩く人、両脇の歩道は露天商と見物人で埋め尽くされ、たいへんな混みよう。みこしの飾りのシャンシャンという音、掛け声、下駄の音や話し声、風船を膨らます音、香ばしい香り、甘い香り……こうこうとした光や音や匂い。その雑踏に囲まれ、ミズキはありさのあとをついて歩いた。