女剣士ミズキ改め、
春日部の観光のコンテンツをちりばめたストーリーを何度も書き直してきました。小説としては未熟。挿絵をつけたいけどイラストがうまく描けない。
それでも、この作品が春日部の魅力的なコンテンツとなるよう編集を重ねていきたい。
女剣士ミズキ改め、 四
翌朝、ミズキは陽子に向かい、
「あの、言い忘れてましたが、実は今日が移動教室だったんです。帰宅は夕方になってしまうので、やはり法事には行けません」
「えっ?今日だった?来週じゃなかったの?だってお弁当の用意もしてないし……」
「大丈夫です。お弁当はいりません。現地で何か買って食べる予定です。夕飯も明日の食事も自分で買って食べますから心配いりません」
部屋に戻って制服に着替え、リュックにプリント、財布、ケータイを入れ、背負いながらバタバタと玄関に向かうと、そこに陽子が立っていた。
「お小遣いと二日分の食費が入ってます。それから今日明日お世話になる親戚の電話番号も書いてあります。くれぐれも気をつけて。何かあったら必ず連絡してね」
「行ってきます!」
なぜか、スッキリと明るく挨拶をして出かけるミズキだった。
「さあ、女剣士ミズキの一人旅の始まりじゃ」
ミズキは青く晴れた空に向かい、小声でつぶやいた。陽子に噓をついてまで法事を回避したやましさと、スカイツリーへの行き方を知らない自分の、あの班の二人への負い目を吹っ切るように。
そして、あの幻聴のような声の正体も知りたかった。
意気揚々と出かけたまではいいが、青梅の駅に着いて路線図を見上げた時、
「あっ、しまった!お小遣い分の二千円しかお財布に入ってない!スイカと展望チケットは前日に渡されるんだった……。どうしよう……」
早くも女剣士の心意気が消えかけたが
「そうだ!陽子さんがくれた封筒に……ラッキー!一万円ある!」
それでもミズキにとって初めての一人きりの遠出。駅員さんにスイカの買い方から乗り換えまで詳しく教えてもらった。
青梅から浅草までは順調だった。しかし、ひとたび浅草で外に出ると外国人も混じった人、人、人。大海を泳ぐ金魚のようにやっとのことで東武浅草駅に着き、どれに乗ってもスカイツリーには着くというので空いているきれいな車両に乗り込んだのが失敗のもと。気がゆるんでついウトウトして乗り越してしまった。しかもそれは特急電車だったのだ。
乗車券を見に来た車掌に起こされ、特急券を購入し、次の停車駅春日部で降りて折り返すことになった。ミズキは春日部で電車を降り、一番線と書かれたホームに向かった。
(えっと、浅草行きって……)
そのとき、電光掲示板を見上げるミズキの腕を誰かがきゅっと握った。見ると、麦わら帽子をかぶった男の子がミズキを見上げてにっこりと
「おねえちゃん、こっちだよ!」
ミズキは首を振りながら手を振りほどき
「違います!人違いです!」
かまわず、男の子はミズキが持っていスイカを奪い取り
「おねえちゃん、早く早く!こっちこっち!」
「ねえ、待って!人違いだから!ねえ、あたしのスイカ返して~」
ミズキは男の子を追って改札を出てしまった。
改札を出ても男の子はどんどん走っていくので、ミズキは必死に追いかけた……。
それが今ここ、春日部情報発信館ぷらっとかすかべなのだった。