台所ぼかし

かすかべ思春期食堂~おむすびの隠し味~【Page7】

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二、ハルと学校 ①

 その朝ミズキは急いで青梅の家に戻りました。

 ありさと再会すると、無事な様子にほっとする一方で、ありさにはもう少し時間をかけてここで心を回復してほしいと感じ、両親に相談すると、昨晩のありさの様子を目のあたりにした二人もミズキと同じことを思っていたのでした。

「ありさちゃん、足のけがの容態も経過を見ないといけないから、しばらくうちに泊まってくれないか?」とミズキの父。

「え?いいんですか?でも迷惑じゃ……」

「大丈夫だ。学校で必要なら診断書も書くよ。ハルさんにはそう連絡するから、心配しないでうちで体を休めるといい」

「そうよ、ひとりっ子のミズキにもいい話し相手になるもの。そうして!ありさちゃん!」と陽子。

「すみません。よろしくお願いします。あの、あの、ご飯作るとか、掃除とか、なんでもやります!」

 ありさはひょこりと頭を下げました。

「まあ、ありがとう。でもそれは怪我が治ってからお願いするわね」

 陽子は笑いながら言いました。

 ミズキの父からその連絡を受けて、翌日の月曜日の午後、ハルはありさの通う高校へと向かったのでした。

 学校の玄関横の受付のガラス窓をノックし、出てきた職員に

「あの、今朝電話した藤崎ありさの家のものですが、担任の先生にお会いしたいのですが……」

 受付の職員は、ハルの顔も見ずにさっと用紙を渡し

「こちらの受付表に生徒さんの学年クラス、氏名、保護者の方のお名前と面会内容をご記入お願いします」

「あの、学年は1年なんですけど、クラスも担任の先生のお名前もわからなくて……。それと、私、ありさの住む下宿の管理人で、保護者ではないんです」

 事務員は初めてハルの顔に目をやり、怪訝そうに

「保護者の方ではないんですか?どのようなご用件でしょうか?」

「本来なら保護者が来るべきなんでしょうけど、両親のいない子で、後見人の叔父が書類上の保護者になってはいると思いますが、東京に住んでいますし、実質何も保護者として機能していません。ありさは姉と一緒に私の下宿で生活しているんです。その姉から、ありさが退学届を学校に出したと聞きました。そのことについて担任の先生とお話ししたくて来ました」

「えっと、生徒さんの苗字はなんでしたっけ?」

「藤崎です。藤崎ありさ」

「退学届を出されて、受理されていますか?」

「それはよくわかりません。本人が最近出したと言っているだけで。出したか受理されたかというより、その原因について、解決できないかを担任の先生とお話ししたいんです」

「少しお待ちください。教務の担当者に確認してきますので」

 その時にチャイムが鳴り、机椅子のガタガタいう音や廊下に生徒や教員のざわめきが流れてきました。6校時が終了し、帰りのホームルームが始まる時間にでした。受付のガラス窓から見える教職員室もざわざわと動きが見られましたが、だれがありさの担任の教師なのかわかりません。受付の職員も職員室に入ったまま、なかなか出てきません。受付に来てから3、40分の間、担任と会うどころか、玄関から中に入れず、ハルは少しいらだっていました。

   二、ハルと学校② に続く


 

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