明日の扉


※ミサキカクさんという団体が行っている「歌詞から紡ぐ物語」という企画のために書いた台本です。和田光司さんの「君の景色」という曲からインスパイアされて書いた作品です。

病院


医者「諏訪さんにお話ししておかなければならないことがあります。
   諏訪さんの病気は、咽頭癌です。
   とはいえまだ比較的早期の発見で、手術をすれば取りきることができ
   るのではないか思われます。
   広がっている範囲は実際に手術をしてみないとわからないところはあ 
   るのですが……  
   それと、癌が主に咽頭内に広がっているため、咽頭摘出を行う可能性 
   が高いと思われます。
   それは諏訪さんの声が失われる可能性が高いということです。
   もちろん、声を失っても現代はそれを支えるサポート体制が充実して
   きているため、声が出ないということを除けば、生活自体は今と近い
   形で送れると思います。」

正人「そんな!ちょっと待ってください!声を失ってしまったら……俺は…… 
   俺は……」


電話がかかってくる


正人「……大……」

 

電話に出る

 

大 「正人!大ニュースだ!」

正人「悪い、今そういう気分じゃないんだ……」

大 「なんだよ気分って!」

正人「気分は気分だよ。」

大 「せっかくお前も絶対喜ぶニュースを持ってきてやったのに。だいたい
   お前は」

正人「要件を言えよ」

大 「南さんから連絡あったんだよ。話があるから近いうちに来てほしいっ   
   て」

正人「南さんってノーザンレコードの?」

大 「そう!」

正人「俺たちに何の用が」

大 「わかんねえけど、ついにきたんじゃないか?」

正人「何が?」

大 「鈍いなぁ……俺たち、ついにデビューなんじゃないのか?」

正人「いや、そんなわけ……」

大 「ないって言い切れるか?」

正人「……いや」

大 「だろ?テンションあがってくるな!」

正人「……ああ」

大 「ん?どうした?なんか元気ないな」

正人「いや、そんなことないよ」

大 「そうか?まぁいいや正人はこの後空いてるか??」

正人「ああ……一応」

大 「じゃあ、行こうぜノーザンレコードに」

正人「今から?」

大 「善は急げっていうだろ」

正人「そんな、いきなり……」

大 「デビューかどうか、俺はすぐにでも知りたいんだよ!」

正人「はぁ……わかった……」

 正人「本来ならうれしいはずの連絡。それを心から喜ぶことができない。
   それどころかその話を聞くことが辛いとさえ思ってしまう。
   まさか、こんなことになるなんて思っていなかった。
   ほんの数週間前まではいつもと変わらない、代り映えはないけれど平  
   和な日々が繰り返されているだけだったのに……」

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