占い師の人格
編集者はげんをかつぐ職場なので…というのは建前で、私は子どもの頃から占いをよくチェックする。今回は編集者また個人として付き合いのあった、占い師さんからのお話。
10数年前、連載記事の編集を担当していた占星術師のAさん。金縁眼鏡をかけられすごく理知的。こちらの難しいテーマに沿うべく電話やメールでやり取りを重ね、熱心に文章を紡いでいただき、とても有効的な関係を保っていると思っていた。
同時期。学生時代の友人で、趣味が高じて占い師になったBさん。かわいらしい顔と鈴の音のような声を持ちながら毒舌。私のホロスコープを読んでくれて、「あー、星が全然ないねー」とばっさり切ってくれるのもありがたいと思っていた。
が。先が続かなかった。
密告とか罵倒とか
まずAさん。ある日、編集長に「おい a!」と呼ばれ行ってみると、パソコン画面を顎で示された。見ると、すっごい長文メールで…とにかく私の悪口が書かれている。ついさっきまで、「ご原稿ありがとうございました!」とか「いえいえ、ご確認助かります(笑)」とか、楽しくやり取りしてたよね?
「これなぁ…こんなこと、俺に直接送ってくる時点でこの人アウトだけど、書いてることに心当たりあるか?」
「いやまぁ…確かに、資料遅れるのが1日遅れたり…でもご指摘いただいて対応はすぐしましたし…いつもとても快くお話しいただいていて…」
「分かった。まぁ適当に返しとくけど、気をつけてな」
Bさん。その後、順調に人気占い師に駆け上がっていった彼女に、当時今後についていろいろ悩んでいた私は、昔のノリで「またホロスコープ見てよ、お金払うからさ」とお願いした。
「分かった。忙しいけど、いいよ」
「行きたい店がある」と、当時中目黒にあった人気和食屋を指名された。 1人2万円近いコース。占い代(2万円)は払うし、さすがにおごれないな、と各自支払いとしてもらう。それが悪かったのかもしれない。彼女の家で 占いが始まったのだが、文字通り”罵倒”の嵐に。
「正直、話聞いてても何占っていいか分かんないんだよね。今の30代の女性って、もっと真摯に自分の人生考えてるよ。どうせ星なくて大きな成功とか収めるタイプじゃないんだから、いっそのこと離婚したり道変えてみれば? やぎ座はこの先、ロクなことにならないんだから」
もちろん私に落ち度がある。スケジュールに遅れたのは事実。「悩んでる」と言いながら、もごもごしてたのも事実。
● ● ● ● ● ● ● ● ●
ここで話変わって、Cさん。約20年前、当時駆け出しのタレントだったが、所属事務所から「この子実は占いができるんです」と売り込みを受け、単発で仕事をお願いした。ぱっちり目のザ・グラビアアイドルというビジュアルで、元気がよく、でも打ち合わせ中にずっとケータイをいじっていた(当時はガラケーです)。心の中で「聞いてねぇなこれ」と舌打ちしたが、実は、編集側の要望をメモしていたということに後から気づく。きちんと締め切り前に送られてきた(多分ケータイで書かれた)原稿は、つたないながらも、各星座たった150字のなかに、いずれも明るい気分になれるワードだったり絵文字が盛り込まれ、一生懸命心を込めて書いた跡がうかがえた。
丁寧に「聞き続ける」
年齢、キャリアも異なる3人だが、最近注目度が高まっているのがCさんだ。癒される救われるといった文言が謳い文句として並ぶ。★1つの日でもけっして地に落とさない。1日1日を丁寧に生きようという気にさせてくれる(もちろん、大人の文章になっている)。
運が悪い日でも、人はより良く生きたい。甘やかされたいわけではないが、なるべくは責められたくはない。つらいから、占いを頼るのだから。
そういう意味で、Cさんが20年余、丁寧に「聞き続けた」結果たどり着いたその紡ぎ出される言葉に、時代が引き寄せられているのかなと思った次第。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?