ファクトチェック沼
教材中に語句の説明や資料を載せる際に必ず行うのがファクトチェック。
掲載する情報が正確かどうかを調べる作業です。
ネットで簡単に多様な情報が手に入るからこそ、根拠にした情報が正しいかどうかをチェックする作業が重要になってきます。
ファクトチェックを行うのはグラフやデータ、文献だけとは限りません。
かなり前に、中学生向け教材の漢字の例文だか語句の説明だかに、「逆転につぐ逆転の熱戦の末、勝利した」といった内容の部分にイラストを沿えることになりました。
イラストを描くのは本職のイラストレーターさんですが、どのようなイラストを描いてもらうかの指示だしは編集者の役割です。
しばし考えた後、バスケットボールの試合を思いつきました。バスケなら点がよく入るので逆転の機会も多いですし、試合をしている選手とスコアボードが違和感なく同じ構図に収まりそうです。
さっそく指示をまとめはじめたところでハッと気が付きました。
…そもそも中学生のバスケの試合は何点入るのが普通なんだ?
…バスケ部の試合という設定にするか?それとも体育の時間にするか?体育の時間ならなおさら何点が普通なんだ?
…バスケ部の試合なら、ユニフォームはタンクトップ型とノースリーブ型、どちらが一般的?
…背番号は何番があるんだ?4から始まるのか?
…試合は前後半制? それともクオーター制?
厳密にはファクトチェックとは異なりますが、見た人が?となるような要素があると、逆にイラストが邪魔になってしまいます。一つ潰すとまた出てくる?を地道につぶす作業は、さながら沼を歩いて渡るような重い足取りでした。
一歩進むたびに足首ごと持っていかれそうなぬかるみを超え、どうにかイラストレーターさんにイラストの仕様書を送ることができましたが、かなりの時間と労力を使った記憶があります。
イラスト一つをとっても、ディティールまで目を配らせることは、正確な編集活動の基本である。
ムツゴロウ漁のようなぬかるみから泥まみれで抜け出した先に、キラリと光る編集者としての大事な何かが見えたような気がしました。
今後からはリレーの絵にしようと思います。
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