2025年の国の医療DX政策の動き
はじめに
ヘンリーのGR(政府渉外)の分部(わけべ)です。本年も医療DXに関わる発信・提言などを進めていきます。どうぞよろしくお願いいたします。
この記事では、近年取組が活発で、ヘンリーが関わる領域でもある医療DXに関連して国で2025年にどのような動きがあるのか、ご紹介したいと思います。
昨年までの動き
2025年の動きに触れる前に、昨年までの動きについて簡単に触れたいと思います。政府の医療DXの主な取組は、医療DXの推進に関する工程表等に基づき、昨年までに、
23年4月のオンライン資格確認の原則義務化に加え、昨年12月のマイナ保険証利用の原則化(保険証の新規発行停止)や救急時にレセプト情報が閲覧できる機能のリリース
23年1月の電子処方箋管理サービスのリリースや追加機能の拡充
24年4月の電子カルテ情報共有サービスに接続するためのシステム等の改修を行った場合の補助金の支給開始
診療報酬改定DXの一環として、令和6年度診療報酬改定の施行時期の後ろ倒し(従来の4月から6月への後ろ倒し)及び同改定における医療DX推進体制整備加算の創設
3年ごとの医療施設調査(静態調査)に基づく2023年における電子カルテ導入率の公表(24年11月)
などが行われました。
今年の主な動き
引き続き、時期未定・未公表の事項を含め、医療DX政策に関して2025年も多くの国の動きが見込まれています。以下で主な動きをご紹介します。
※以下の内容は、記事執筆(1月15日)時点での厚生労働省等の公開情報に基づくものになります。
医療DX関連法案の国会審議等(3月以降)
国は、
次項の電子カルテ情報共有サービスにおける医療情報の円滑な提供
国が保有する医療情報のデータベースの第三者提供の仕組みの整備
国のDX基盤の運用を担う社会保険診療報酬支払基金(基金)の組織改組
などに関して、法律改正を行うことを昨年までに厚生労働省の審議会に報告し、了承を得ています。
最後の点については、基金を医療DX推進機構(仮称)に改称し、医療DXのためのシステム開発や運用を同機構が本格的に進めることなども想定しているようです。
今後、法律案が国会に提出され、具体的な内容明らかになるとともに、その後国会で審議されることになります。
電子カルテ情報共有サービスの運用開始・本格稼働(4月以降)
全国の医療機関や薬局などで患者の電⼦カルテ情報を共有するための仕組みである電子カルテ情報共有サービスが今年4月から運用開始予定です。
具体的には、診療情報提供書などの3文書や検査結果やアレルギー情報などの6情報を他の医療機関に対して、電子カルテから提供できるようになり、現在、紙やFAXなどでやりとりしている情報連携を円滑かつ確実に行うことができるとされています。また、患者本人もマイナポータルを通じこうした情報を確認することができるようになります。
25年4月に同サービスは運用開始し、今年度中に本格稼働することとされています。
令和6年度診療報酬改定の医療DX推進体制整備加算の経過措置の期限到来(3月末・9月末)
令和6年度の診療報酬改定で新設された、医療DX推進体制整備加算については、それぞれ、
電子処方箋管理サービスに関して、2025年3月末
電子カルテ情報共有サービスに関して、2025年9月末
までに医療機関に導入することを施設基準として求め、それまでは未導入であっても算定できる(経過措置)こととしています。
特に、経過措置が先に到来する電子処方箋は、2024年11月24日時点で、医療機関・薬局全体の19.6%、特に病院では3.0%の導入率に留まっています。未導入の場合は、同加算が算定できなくなることから、システム導入の進展に関心が高まります。
令和8年度診療報酬改定に向けた医療DX推進の議論(春以降)
上記とも関連しますが、診療報酬(本体)改定は2年に1度ですので、令和8年度診療報酬改定の議論が今年キックオフされることになります。改めて医療DXに関する診療報酬の在り方なども議論されることになると思われます。
生産性向上・職場環境等整備事業(時期未定)
医療DXに関わって、昨年末に成立した令和6年度補正予算で、「生産性向上・職場環境整備等事業」(828億円)が計上されています。今後事業の詳細は、国や都道府県から公表・周知されていくものと思われますが、国は、上記のとおり、医療機関が導入する各種のICT機器の導入等に対して一定の補助を行う方針です。
病院情報システムのクラウド化推進のための標準仕様の策定等(時期未定)
12月2日に行われた厚生労働省の健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報利活用ワーキンググループにおいて、病院の情報システムに関する現状と課題について、厚生労働省から提案がされました。そちらの内容については、以前ヘンリーのnoteでも解説しておりますので関心ある方は、以下の記事もご覧ください。
この中で触れらている、病院の情報システムのクラウド化のための議論が今年進められていくものと思われます。上記記事にも触れている通り、ヘンリーが感じている課題とも密接な論点が複数挙げられており、議論の進展に期待し、注視していきたいと考えています。
まとめ
上記以外にも、医療DXに関連して、標準型電子カルテα版のリリース、診療報酬共通算定モジュール開発関係の動き、医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン(経産省・総務省ガイドライン)の改正なども予想されます。加えて、レセコンベンダーとしては、昨年12月末に決定した高額療養費の上限額の見直しや入院時食事療養費の見直し等の対応が求められますが、本記事では、2025年に見込まれる医療DX関連の国の主な動きに絞ってご紹介をしました。
今年も、昨年までに引き続いて、医療DXに関して、医療機関・ベンダーの双方にとって大きな動きがありますので、注目の1年になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。今年は、こうした発信を質・量ともに増していく予定ですので引き続きお付き合いください。
さらにヘンリーにご関心のある方はこちらからお問い合わせください。
文責:ヘンリーGR 分部(わけべ)