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医療DX推進体制整備加算の要件見直しについて(2025年1月29日中央社会保険医療協議会総会資料より)


はじめに

ヘンリーGR(政府渉外)の分部(わけべ)です。今回も国の進める医療DXの動向について解説します。

令和6年度の診療報酬改定では、医療機関が質の高い医療を提供するため医療DXに対応する体制を確保している場合の評価として、「医療DX推進体制整備加算」が診療報酬に新設されました。

同加算は、施設基準として、マイナ保険証の利用実績などのほか、電子処方箋管理サービスや電子カルテ情報共有サービスなどの国のDX基盤に対応した体制を有していることを医療機関に求めていました。

いずれもシステムの開発・普及状況などを踏まえ、電子処方箋管理サービスについては2025年3月末まで、電子カルテ情報共有サービスについては2025年9月末までを経過措置として、こうしたシステムへの対応ができない場合でも施設基準を充足しているものとみなすこととしました。

医療DX推進体制整備加算(2024年6~9月の内容)

なお、同加算は、昨年10月からは、マイナ保険証利用率の高低に応じた区分(加算1~3)を追加し、加算点数が変わる(下図・中段)こととなりました。

医療DX推進体制整備加算(2024年10月~の内容)

医療DX推進体制整備加算の見直し

1/29の中央社会保険医療協議会(中医協)総会では、医療DX推進体制整備加算の施設基準の中で、

  1. 2025年4月以降のマイナ保険証利用率

  2. 2025年3月末までとされる電子処方箋管理サービスに対応した体制に係る経過措置の4月以降の取り扱い

が議論されました。

1のマイナ保険証については、

  • マイナ保険証の利用率が上昇していることから、どの程度引き上げるか

  • 小児でのマイナ保険証利用率が低いことから配慮した措置を行うか

が議論となりました。

また、2の電子処方箋については、元々、政府は、「概ね全国の医療機関・薬局に対し、2025 年3月までに普及させる」としていました。しかし、

  • 電子処方箋を運用している施設の割合(2025年1月12日時点)が、薬局では63.2%の一方で、病院で3.9%などと低迷していること

  • 上記の導入状況を踏まえ、電子処方箋普及の新たな目標については、2025年夏を目処に見直しを行うこと

を踏まえ、電子処方箋管理サービスに対応した体制を整備する要件の経過措置の扱いが議論されました。

電子処方箋の普及状況

中医協での議論の結果、

  • マイナ保険証利用率については、各加算区分で5~15%の引上げ(最低でも15%(一部の小児外来診療科を有する医療機関は12%)が求められる。) ※下図中段右側「マイナ保険証利用率」の表参照

  • 電子処方箋管理サービスについては、未導入であっても4月以降も算定できること(未導入の場合従来より各区分で1点引き下げ、導入済みの場合各区分で1点引上げ) ※下図上段右側、加算区分の4~6を新設

となりました。

今回の見直し後(2025年4月以降)の医療DX推進体制整備加算

なお、今後正式な告示、通知等が行われますが、手続きについて、電子処方箋未導入の場合は、施設基準の届出直しは不要(下記資料4つ目の丸。導入済みの場合は届出直しが必要)とされています。

医療DX推進体制整備加算に係る通知等の規定事項案

最後に

今回、医療DX推進体制整備加算に関してマイナ保険証利用率と電子処方箋管理サービスに関わる見直しが行われましたが、電子処方箋の基本機能に関する国の補助金は2025年3月までとされています。

今回の診療報酬上の見直しや7月を目途とした今後の電子処方箋普及の新たな目標設定に向けて、医療機関の導入に向けたインセンティブとなる補助金についてもどのような対応が行われるのか注目されます。

また、今後の電子処方箋活用の好事例の展開、支援策や導入効果の定量的な調査などを通じて、医療機関に対しても、電子処方箋のメリットが十分に届くことが期待されます。

電子処方箋に関する国の広報資料

今回は、医療DX推進体制整備加算の見直しについてでした。最後までお読みいただきありがとうございました。

文責:GR分部