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「病院の仕事が好き」だからこそ選んだ、診療情報管理士の新しいキャリア


時には悔し涙を流すことも、それでも「見返してやろう」という強い思いで踏ん張った新人時代。その厳しい経験を糧に、診療情報管理士として着実に歩みを進めてきた今さんは、医療現場での豊富な経験を経て、2024年1月から業務委託でヘンリーに入社(10月より正社員)しました。

在宅での新しい働き方のなかで、理想的なワークライフバランスと新たなやりがいを見出した現在、診療情報管理士という専門性を持ちながら、新しいフィールドで活躍する今さんのキャリアの変遷についてお話を伺いました。

ヘンリーでは導入エキスパート(医療事務経験者)を募集しています!
導入エキスパートは、医療機関向けクラウド型電子カルテ・レセコンシステム「Henry」の導入支援を担当します。主な業務は、算定項目や施設基準の調査、各医療機関に合わせたカルテの設定、操作方法の説明、レセプト送信のサポート、医療文書の作成などです。医療事務の経験を活かしながら、フルリモートで全国の医療機関の業務改善に貢献できる点が特徴です。また、新機能のテストや導入スケジュールの調整なども行い、チームの一員として製品開発にも関わることができます。

夢の方向転換、映像編集から医療事務へ至った決断

―― 今さんは長らく医療事務として働かれていた経験があるそうですが、まず、医療の世界に入ったきっかけを教えていただけますか。

実は最初は全く違う道を考えていたんです。映画の映像編集者になりたくて。父の知り合いに映画プロデューサーの方がいらっしゃって、その道を真剣に考えていました。ただ、女性の映画編集者の方からお話を聞く機会があって、「女性で映像編集の仕事で生きていくなら、いろんな人生を捨てないと駄目だよ」と言われたんです。当時はまだ男性社会で、働き方の多様性もなかった。そこまでのめり込んでやりたいかと思ったときに、たまたま医療系専門学校の見学で診療情報管理士という職種を見つけました。調べてみたら面白そうだなと思ったんです。理系が好きだったこともあって、医療の世界に進むことにしました。

―― 専門学校での4年間はいかがでしたか。

とても面白かったです。医療用語を覚えたり、薬の効能を学んだり。実は祖父母と同居していたので、学んだことを実生活でも活かせるのが嬉しかったんです。特に祖母が全盲だったこともあり、医療というものがより身近に感じられました。学んだことを実践で活かしたいという思いが強くありましたね。

大学病院での7年間、医療事務の基礎を築いた日々

―― 最初の就職先として大学病院を選んだ理由はなにかあったのでしょうか。

元々は診療情報管理士として就職したかったんですが、せっかく働くなら、最初から大きな病院で幅広い知識をつけたいと思って大学病院を選びました。実は将来的にとある国立病院(小児・周産期)で働きたいという夢があったんですが、新卒では入れないと聞いていたので、まずは経験を積もうと考えたんです。ただ、最初の大学病院は、診療情報管理士の資格を持っていても、まず医療事務から経験を始めないといけないシステムでした。これは後から考えると、とても良い経験になりました。

―― 最初の4年間の医療事務経験は、実際働いてみてどうでしたか。

本当に苦労しました。特に、厳しい先輩にあたってしまって。オペ室の麻酔チャートを読むのが必須だったんですが、手書きの文字が読めない、麻酔の投与タイミングがわからない、どの加算を取るべきかもわからない。最初の1年は本当に苦行でした。

専門学校時代は楽しく過ごせていたので、入職当初は医事課に入って、医師や看護師、薬剤師と働けることにワクワクしていたんです。でも現実は厳しい。時には悔し涙を流すこともありました。それでも「見返してやろう」という強い思いで頑張りましたね。

今では、その厳しかった先輩に心から感謝しています。異動するときに「先輩、私に意地悪していましたよね」と、直接話をして和解もできました。社会人としての厳しさや、病院での所作など、たくさんのことを学ばせてもらいました。理不尽なこともありましたが、あのときの厳しい指導は今の私の基礎になっています。

―― その後、念願の診療情報管理室に移られたんですね。

事務服から白衣になって、なんだかレベルアップした気分でした(笑)。業務内容も大きく変わって、DPCに関する作業や、病理・検査結果の確認、病名の整合性チェックなど、専門的な仕事が増えました。想像していなかった統計データや学会資料の作成、病歴登録など新しい業務も増えて最初は大変でしたが、できるようになって医師から直接依頼が来るようになってからは、やりがいを感じられるようになり仕事が楽しかったですね。

当時はカルテから算定可能な加算を探すことを、宝探しのように楽しく教えていただきました。また、職場で残業時間に対して不満を言う人はいましたけど、仕事自体が嫌だという人はあまりいませんでした。純粋に、医療事務や診療情報管理士の仕事が楽しい、この気持ちは一貫して私自身にも職場にもあったと思います。

医療現場で見つめた現実、新たな使命との出会い

―― 7年間の大学病院勤務を経て、転機が訪れたそうですね。

働いていた大学病院が宗教的な理由で、中絶ができない病院だったんです。結果、育てられない子どもたちが孤児院に行くケースを目の当たりにしていました。その現実に衝撃を受けて、なにかできないかと思うようになりました。母からの「子どもは未来の宝だ」という教えもあって、親の顔も知らずに育つ子どもたちのことが気になって。将来、アイデンティティの問題で悩むかもしれない。そういう子どもたちが増えていくことに心を痛めて、なにか自分にできることはないかと現実的に考えるようになったんです。

それでベビーマッサージの資格を取得して、一度病院を離れることにしました。しかし、1年ほどベビーマッサージの仕事や営業など、業務委託で個人の仕事をして乳児院での活動を試みましたが、なかなか契約に結びつきませんでした。自分ひとりでできることの限界を痛感したんです。医療の仕事自体は好きだったので、さらに1年ほどは派遣で診療情報管理士として総合病院で働きながら、また戦略を練り直すことにしました。

―― その後、念願の国立病院に入られましたね。

実は私の弟が生まれてすぐに黄疸でその国立病院に救急搬送されて命を救われたんです。8歳差の弟だったので、その記憶は鮮明に残っていて。ずっと恩返しがしたいと思っていました。ちょうど診療情報管理士の空きも出て受かったんです。ところが、実際に入ってみると思い描いていたものとは違っていました。

国立病院特有の組織の雰囲気があって。上司との関係も難しく、時には院長と副院長の仲裁に入らなければならないこともありました。本来の診療情報管理士としての業務以外のことに時間を取られることも多かったです。ただ、院長や副院長と近い距離で仕事ができ、業務改善なども一緒に進められたのは良い経験でした。管理室で作成したデータを使って経営分析を行い、それを直接報告する機会も多くありました。

医療×ITの可能性、企業で見出した新たなキャリア

―― 3つの病院を経験し、そこからヘンリーに転職されたきっかけはなんだったのでしょうか。

国立病院で働いているときに妊娠出産を経験して、同年代の子どものカルテを確認する際に、どうしても感情移入してしまい……。診療情報管理士として全てのカルテを読まなければいけない立場でしたが、つらくなってきました。また、娘の具合が悪くなって早退する際の職場の雰囲気も気になってしまうことも増えて……。

ちょうどコロナ禍で在宅勤務を経験したこともあり、新しい働き方を模索するようになりました。そんなとき、在宅で働ける診療情報管理士の仕事を探していて、求人情報サイトでヘンリーの求人を見つけたんです。「在宅で病院の業務ができるの?」と驚きました。それまで病院でしかできないと思っていた仕事が、新しい形でできる可能性を感じています。

最初はフルリモートという働き方に不安もありましたが、すぐにエントリーして、面接で会社の理念や業務内容を聞いているうちに、「これは面白い」と思うようになりました。特に『ノーベル平和賞を目指す電子カルテ』という話を聞いたときは衝撃を受けましたね。

―― 現在の仕事の内容とその魅力を教えていただけますか。

現在は導入エキスパートとして、病院への電子カルテ導入をサポートしています。病院との設定に関する打ち合わせや、医事課のトレーニングなどが主な業務です。また、診療情報管理士としての経験を活かして、データ提出加算周りのフォローなども一部担当しています。

病院だと急性期や慢性期など、特定の領域に特化しがちですが、今はさまざまな医療機関と関わることで、知見が広がっています。たとえば、私は急性期病院が中心の経験でしたが、今は慢性期や障害者病棟など、新しい分野の知識も増えてきました。一方で医療事務や診療情報管理士として働いていたときの、算定要件や診療点数早見表の調べ方などは今でも大いに役に立っています。

また、エンジニアの方々との協働を通じて、新しいスキルも身につきました。エンジニアの方に設定を依頼する際の論理的な思考や、文書でのコミュニケーション能力など、病院では得られなかったスキルの経験ができています。もし将来的に病院に戻ることがあったら、この経験はとても強みになると思います。

―― フルリモートでの働き方はいかがですか。

理想的な働き方ができていると思います。通勤がないのは本当にありがたいですし、人間関係のストレスも少ない。わからないことがあれば、すぐに質問できる環境も整っています。

朝は夫が子どもを保育園に送り、私が夕方お迎えのために一時的に中抜けするという生活リズムが確立できました。お迎え後は残りの仕事もやりつつ、子どもと一緒に過ごせる時間も十分にあって、仕事と育児の両立ができています。病院勤務のときには難しかった、この理想的なワークライフバランスが実現できています。

医療事務の未来、従来の枠を超えた可能性


―― 病院と企業での働き方の違いを感じることはありますか。

病院は比較的縦社会で、上の人たちが考えて職員が動くという形が多かったように思います。一方、ヘンリーはスタートアップということもあり、みんなで知恵を出し合える環境です。自分の経験を最大限に活かせる場所に適材適所で配置してもらえている感じがします。

また、病院だと専門性に特化しがちですが、企業ではさまざまな要素を考えて動く必要があります。たとえば、病院それぞれの運用の仕方が異なるので、それに合わせた提案や設定を考える必要があります。難しさはありますが、やりがいを感じます。

―― 今後のキャリアビジョンについてお聞かせください。

ヘンリーでは今後、病床数の多い急性期病院への導入も進めていく予定です。私自身、DPCの経験があるので、その知識を活かして貢献していきたいと考えています。現在は慢性期病院が中心ですが、そこで学んだノウハウも、今後の急性期病院への展開に活かせると思っています。

また、個人的には子育てと仕事の両立に悩む方々のメンタルケアにも関わっていきたいと考えています。仕事でのストレスを家庭に持ち込んでしまう方や子育てと仕事の両立で悩んでいる方も多いので、仕事も子育ても楽しいと思える人を増やしていきたいですね。

―― 最後に、医療事務の方々へメッセージをお願いします。

病院での仕事は好きだけど、キャリアの選択肢に不安を感じている方は多いと思います。私自身、転職を考えるときは「病院」か「クリニック」かという選択肢しか思い浮かびませんでした。しかし、現在は新しい可能性が広がっています。特にヘンリーでの仕事は、医療の知識を活かしながら、新しいスキルも身につけられます。

不安を感じる方は、まずはカジュアル面談など、気軽な形から始めてみることをおすすめします。医療事務の経験者は、真面目で優しい方が多いと感じます。今の仕事に満足できていない、モヤモヤしている方は、新しいチャレンジをしてみるのもいいかもしれません。病院やクリニック以外での働き方を知ることで、気持ちに余裕が生まれる方も多いのではないでしょうか。ぜひ可能性を広げていってほしいと思います。


ヘンリーでは、さらなる成長に向けて積極的に採用活動を行っています。
ご興味をお持ちいただけた方は、ぜひお気軽にご連絡ください。