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鳥獣戯画ノリ粗忽者【毎週ショートショートnote】

 地方国立大学の、しかも当時は渦中にあったためそれとすら認識されていなかった、就職氷河期の第一期として在籍していると、周囲にはまぁ日常的に、自死が横行していたものだ。
 親世代に教授たちは我々の無能力としか見ないのだから致し方あるまい。
 先週まで顔を合わせていた奴が、ゼミの後輩が、志を持って転学したはずの同学部生が、毎週のように。あまりに日常すぎて感覚もマヒするほどに。
 辛うじての幸いにして私が所属していた文芸サークルには、いざという時の心の拠り所が存在していた。
「コイツを処分するまでは死ねない……!(爆)」
 というヤツだ。
「今ふっと思い浮かんだもっと恐ろしい予測があるんだが」
 弱小部で部員が少なかっただけで部長になっていた私が口を開くと、部員たちは耳と目を寄せてきた。
「世界が滅亡した後の瓦礫の下から、自分の作品が出土して、貴重な資料として賞賛を浴びてしまったら」
 部室中が阿鼻叫喚に満たされ私はニヤリと笑んだ。


(410文字)

 鳥羽僧正は気晴らしの落書きのつもりでしかなかったらどうしてくれる。
 ……と鳥獣戯画の後半は放屁合戦であるところから思った。

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偏光
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