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subarasikiai
秋の空時計鐘の音【毎週ショートショートnote】
世の中にはとんだたわけ野郎がいるもので、
と言うよりも満ち溢れ使い道も分からなくなるほどに財産を余らせた連中が、考える事は大概似通った数種類になってしまうのかもしれない。
腕時計の裏ブタを開けたならそこには細密を極めた装飾と共に、正時になると鐘の音を鳴らす機構が埋め込まれたりもしている。
一般的な腕時計店では見せられる機会も少ない、言ってしまえば時計職人達が技術を凝らした芸術品が、人知れず個人所蔵され手首に接触させたまま、日頃は眠らされているわけである。
縁あって私は庶民でありながら、一般より様々な意匠を見る機会に恵まれたのだが、ある細工に関しては感嘆を通り越して目眩がした。
秋空の中落ち葉が散る森の内で、全裸の男女がまさしくつがっている。
そして男性の腰の動きに合わせて鐘が鳴るのだ。
頭を近寄せ目を見合わせてニヤつく男性陣のそばで、私は「金を返せ」と呪った。誰から誰に返すべきものか定かではないが。
(410文字)
粋、の正体なんぞこの程度だ。気にするな。
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