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源兵衛に会いに不動坂

 はじめましての人も、
 前から知ってる方も、
 ごきげんよう

 偏光です。

 真似をしてもらいたくはないので、
 細かい分岐点などは記載しません。

(文字数:約3700文字)



事の発端

  こんな作品を書いてしまったからには、

  また、
  こんな作品も書いてしまっているからには、

  神谷かみやから高野の山頂まで、
  実際どのくらいの距離があるものか、
  実質どのくらいの距離と感じるものか、

  一度歩いてみたいものだ。

  なんて通常は思いつきもしないだろう、
  願意を抱いてはいたんだ。

  ちなみにふもととして想定した、
  椎出しいで地区には頻繁に足を運んでいて、
  距離感覚なら身に染み付いている。


珍しいほど良い条件

  所用があって高野山の山頂に、
  午後のちょい過ぎまで居た先日は、

  暑過ぎもせずまだ寒くもない上に、
  高野山には珍しく※、
  見事に晴れ渡った青空であった。
  ※高野山に限らず一般的に、
   山の天気は崩れやすい。

  長く歩き続けられそうである。

  と思ったらついつい私は、
  観光案内所に寄って、
  帰り道の相談をしてしまっていた。

  と言うのも私には都合良く、
  その日はバス専用道路が、
  ここ数日の大雨で、
  調査のために通行止め。

  バス専用道路を一部共有する、
  不動坂ルートを下るに当たって、
  今以上の好機が存在するだろうか。
  否。きっと無い。


判断の誤り

  しかしよせば良いのにここで私に、
  +αの欲が出た。

  何せバスが通らないので、
  不動坂まで高野町内を歩くわけだ。

  観光案内所でもらった地図によると、
  山中から不動坂まで向かう、
  別ルートが存在している。

  せっかくならここから歩いてみようか♪

  結果ガチの山道に入りかけたところで、
  進むべきルートが分からず断念。
  進んだ分を純粋に引き返す羽目になり、
  時間も体力も損した。

  しかも今振り返るとこれにより、
  「山道」に対する自分の感覚も、
  若干マヒしてしまい、

  観光用の地図と言えど、
  ごく当たり前にガチの山道に、
  誘導されるものと思い込んだ。


道の間違いその①

  不動坂は比較的観光コースだ。

  約2.5km、
  約50分の間、
  坂道を下り降れば、

  実際そこそこお高い、
  ケーブルカーに乗らずして、
  極楽橋駅にたどり着けるわけだ。

  脚に自信がある方、
  山道がお好きな方には、
  天気が良い日ならお勧めしなくもない。

  しかしくれぐれも気をつけてほしい。

  道筋を示す木看板が、
  折れたまま放置されていたりする。

  道筋を示す標識は、
  時に旧道を示していたりする。

  そして自慢じゃないがこの私は、
  日頃から普通に方向音痴だ。

  間違えてガチの山道を突き進んだ。
  しかも2回も。

  回避する方法は実は至極簡単。

  舗装路を行け!
  疑いを持たずひたすら、
  舗装路を行くんだ!

  ちなみに先述の観光地図にも、
  現在の不動坂※が「舗装路」である事は、
  明記されている。
  ※歴史上「不動坂」とされてきた道は、
   私が向かったルートで間違っていない。
   更に言えば他にも4本ほど、
   山中ルートがあったらしい。

  惜しむらくは通常、
  極楽橋側からのハイキングを楽しむルートで、
  上り側の最初にその記載はあり、
  下り側から入った私は見逃したわけだ。

  方向音痴はそうした事を、
  普通にやらかす。
  故に方向音痴なんだ。

激テンション上がるケーブルカー真横

  舗装路に入ったらスムーズに、
  と言いたいところだが、

  石畳は滑るし落石もあるし、
  踏んで足首捻らないように、
  くれぐれも気をつけてね。

  もちろんその日はパンツスタイルに、
  リュックにも出来るバッグで、
  スニーカーだったから、
  思い立って即行けたんだからね。

  そんで不動坂の楽しい点は、
  ケーブルカーとその線路を、
  真横に見ながら最後の数百mを、
  下り降れるんだよ♪

  線路の真下のトンネルくぐれるんだよ♪

  ってか今乗ってる人たち、
  めっちゃビビるやろ。
  ここにも普通に人が歩いてんのやで。


道の間違いその②

  極楽橋駅まで着いたところで、
  観光案内所で訊いた時には、
  存在しないと言われていた、

  神谷までのルートも発見。

  すると私は俄然好奇心が湧き出して、
  それは是非とも源兵衛に会いたい。
  いや。源兵衛はフィクションで、
  しかも私が作った人物像なんだが。

  そもそもなぜ「存在しない」事に、
  なっているんだい?
  ワクワク(*・∀・)ワクワク

  確かに渡された観光地図2種類は、
  片や不動坂を極楽橋駅までと、
  片や町石道を紀伊細川駅までで、

  極楽橋駅〜紀伊細川駅までの道が、
  存在しない事になっているけど、
  そんなわけないでしょう。
  地元の人たちだって電車乗るでしょう。
  ワクテカ(*^∀^)ワクテカ

  しかしテンションが上がり切っていたせいか、
  私はここで通常なら有り得ないほど深刻な、
  ルート間違いをやらかしてしまい、

  カーブを曲がれども曲がれども、
  何の建物も見えて来ない車道を、
  約30分間下り続ける。
  あ、あれ?(;・∀・)何か変だな

  しかし気付いた時には、
  もう引き返せない。

  私は長年の強度貧血により、
  心肺機能がほとんど育っておらず、
  上り坂に対して異常に無力!

  正直に言おう!
  とんでもなく心細い!

  ごく普通に恐怖だったが、
  私を偶然目撃したかもしれない、
  地域の人たちも恐怖したはずだ!

  人里まで下り切った時には、
  日没時間との勝負。

  約1kmと看板に出ていた、
  紀伊神谷駅まで、
  もちろんの上り坂。

  だからね。ダメなの私。
  上りは真剣に心臓が呼吸が発汗が、
  急上昇して泣き呻きながら上り切って、
  駅が見えた時はホンマに嬉しかった事よ。

  30分+α程度だろうルートを、
  1時間30分掛かった。
  しかし日が沈み切るより前に、
  無事に戻れて本当に良かった。


俺の轍は踏むな

  普通踏まんとは思うがそれでも、
  要注意項目を、
  以下3点述べておく。

1、やるなら一人でやれ

  巻き添え人を作るな。

  山中でおしゃべりや、
  人間関係上の気遣いなどに、
  神経を費やされるな。

  スマホを起動するなどもってのほか。
  それ以前に電波など届くと思うな。

  「違う」「戻ろう」
  「ここは大丈夫」「この先はあかん」
  といった感覚は、
  一人で神経を研ぎ澄ませている時に、
  ふわっと感じ取れるものだ。

2、鳥居や山門をくぐる時には一礼

  これは必ずやっとけ。

  ただし、見つけたお堂に、
  手を合わせて良いかまでは分からん。

  どこのどういった神仏かも、
  どういった敬意を望まれているかも、
  こちらは分かりはしないのだから、
  鳥居以外は目を伏せて通り過ぎろ。

  他所者が分け入る時点で、
  相当無礼である事は心得て、
  「通らせて頂きます。失礼します」
  といった心持ちでは常にいろ。

3、山中で停まってくれた車は危険だ

  近寄るな。
  声を掛けるな。
  窓はスモークガラスじゃないか?

  相手側が身分を明かした上に、
  身分証明書を見せ、
  連絡先も教えてくれ、
  まずは家族等に連絡を取る様子を、
  確認してくれる人でない限り、
  絶対に乗るな。

  困った人を助ける、
  あたたかい人情が見られるのは、
  テレビの中だけだ。

  そこで暮らす人々にとっては、
  不用意な他所者の方が、
  何しでかすか分からんし怖いに決まっている。
  それを近付いて来る奴ってのは、
  どういった連中か分かるだろ。

  

とは言えだよ

  なるべくなら鉄道開通以前の、
  不動坂を歩いてみたい、

  そして、

  源兵衛に会ってみたい、
  という、

  私の願意は十全に果たされたわけだよ。

  いや。
  源兵衛はフィクションだけども、
  源兵衛が働いてた餅屋は、
  実は配偶者の祖先か血縁でさ。

  神谷を歩き続けている間、
  そりゃあえらいこと心細かったけども、

  ここは、善い場所だ。

  きっと少なくとも、
  亡くなったお義父さんは守ってくれてはる
  とはずっと感じていたので、

  うろたえかけたけれども多分大丈夫と、
  気を取り直す事は出来たんだ。

  不動坂を下り降って、
  この辺りにたどり着いたならそりゃあ、
  嬉しくて有難くて仕方なかっただろうさ。
  川は流れてるし、
  森が途切れて日は射し込んでるし、

  方向音痴は反省せなあかんのやけども、
  今回の私に限っては特例で、
  迷い込ませてもらえたんと違うかな。

  ってかホンマに元の場所に戻れたんかな私。
  正直家に帰れても眠りに就いてからも、
  割と真剣に怖かったわ。

  目覚めたら実はまだ山奥ちゃうか、
  山の中で実は今も、
  無事に帰れた夢見てるんちゃうかと思えて。

ええ。ここにきてまさかの。


以上です。
ここまでを読んで下さり有難うございます。

何かしら心に残りましたらお願いします。頂いたサポートは切実に、私と配偶者の生活費の足しになります!