洞窟の奥はお子様ランチ修行【毎週ショートショートnote】
所定の場所から提げたお盆の、端に裏返して置かれた箸袋には、墨を使った達筆で、現代風に訳するならば、
「美味しかった。今日のお膳また食べたい」
と書かれてある。
「材料なんかが揃った時でいいよ」
とも書かれてあるが、御所望とあれば我々は、何としても腕を振るって差し上げたい。
もちろん肉や魚は使えないので、豆腐で仕立てたハンバーグに、菜種油のポテトフライ、ゆでたパスタを醤油で和え、チキンは入っていないケチャップライスの上には、小さな日の丸旗を立てておいた。
世界的な悪疫流行によりここ数年は封鎖されているが、かつては誰であっても地下に入れ、暗い通路を通り抜けて、壁越しにではあるが面前にまで立つ事が出来た。
所定の場所からお膳を差し上げると、いそいそと、受け取りに来る気配が感じられる。
嘘や迷信のように言われたり、頑強に信じているのは信者だけのように、揶揄される事もあるが、
普通に生きていらっしゃるんだが。今現在も。
(409文字)
冒険小説風かと訊かれるとやや困るが、
パーティー内を時に和ませるためには、
シェフ役は是非いてもらいたいし。
また私は実際に、
お食事を担当していた方とお話し出来た事もある。
ところで今回のお題は、
大和和紀先生の名作、
『アラミス‘78』の登場人物、佐渡方さんが、
奇顔城の周辺を彷徨って見た光景ばかりが、
頭に浮かびまくってしょうがなかったぜ。
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