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アメリカ製保健室手延べうどん【毎週ショートショートnote】
「へぃラッシャイ!」
と威勢の良い掛け声を飛ばして来たのは、両端が尖ったレッドフレームの眼鏡に、白衣の胸からは分かりやすくグラマラスな谷間をはみ出させている、おそらく西欧系の女性だ。麺棒でうどん玉を延ばす動きに応じて、首から下げた聴診器が揺れている。
建物はともかく室内は、清潔感あふれる真っ白だ。調理台と診療台が隣り合わせで妙に親和性がある。
「……ここは保健室ですかうどん屋ですか」
「両方やってはナラナイというホーリツでも?」
「アメリカンだなぁ。知らんけど。雰囲気だけで言ったけど」
来客が珍しい日本人だと気付き、手を止めた女性は嬉しそうだ。
「私、ニホンに行って学びました。落ち込んだ時元気になれるイチバンは食事。手っ取り早く食べられてココロもカラダもあたまるイチバンはうどん。クーカイ様もススメてます。小麦もキノコも山菜も、この辺りで採れました。シンセンでおいしーよ」
「ありがとう。だけどここチョルノービルなんだよ」
(410文字)
ごめん。
どんでん返し、と言うにはブラックが過ぎた。
あと多方面に失礼な自覚がある。
しかしこれを機に辺見庸さんの、
『もの食う人びと』を観るか読むかして欲しい。
身につまされるし泣けるから。
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