無法地帯で感じた安らぎの話
「大阪は人情の街」
などと言う謳い文句を真に受けた事は、
大阪に移り住んでよりこの方一度も無かったのだが。
大阪ではないものの、
和歌山県は高野山系へと墓参に向かっていた本日は、
「我を通した方が上手く行く」
事を痛感した一日だったように思えたので記録する。
産地直送マーケット(駐車場)
♪無法ちたーい 無法ちたーい
うほほいうほほほほーい
と心の内でおののきながら、
とある産地直送マーケットの駐車場を、
渡り歩いていたんだが、
警備員等整理する人員も置かれていない駐車場は、
あちこちで白い枠線を越えるどころか、
本来駐車場ではないだろう箇所にまで車が停まってるし、
私もすみませーん。
駐車してある車の合間を通らせてもらいまーす。
端を通ろうとしても前なんか見ていない車が
いきなり曲がって来るの突っ込んで来るの怖いのー。
しかしながら車も人も皆がある程度怖がりつつも、
ある程度周りに目を配りつつ自分達の意思を示しつつ、
事故だけは起こさないギリギリの状態が保たれている。
すげぇな関西人のクオリティー。
産地直送マーケット(内部)
レジ前が恐ろしいほどに長蛇の列だ。
と言うよりもうレジなど見えない辺りまで伸びている。
レジが近付くと店のお兄さんが、
3列ある内の一つに振り分けてくれたのだが、
並んでいる間に気が付いた。
お兄さんは両端に振り分けるばかりで、
真ん中の列にだけは基本口出しをしていない。
これはつまり……
「(空気を読んだ上で)横入り可とする行列」を
あえて残してあるのだ!
店側も客側も明確には口にしない形で!
すげー! 生粋の関西人すげー!
それにより誰もが何となく
周りを気にしながらも納得して待ってるー。
だって刺身ひとパック手にしたおじいちゃんとか、
巨峰ひと箱抱えた兄ちゃんとか、
最後尾から並ばせるの酷だものー。
もちろん両端に回された人が、
前の人の荷物具合見てこそっと移っても良いのよ♪
夫婦経営定食屋
お昼は初めて入る定食屋の、
入り口で待っていたんだが、
食事を終えて出て来たおっちゃんが私ら夫婦を見て、
「待っとってもどないもならんで。
自分からぐいぐい行って注文せな」
と声を掛けてくれて大変に有り難かった!
中に入ってみるとなるほど、
調理専門の旦那さんと、
注文・給仕専門の奥さん二人だけで、
はっきり言って回し切れていない。
厨房前の席を陣取り、
常に奥さんと目を合わせていなければ、
多少の呼び掛け程度には応じ切れる余裕など無い。
主張しなければ明らかに食いっぱぐれる。
お会計も旦那さん奥さんの手の空き具合を見ながら、
他の客達の様子も窺いながらだ。
しかしながら皆奥さんに「ごちそうさま」と、
「美味しかったです」と声を掛けて出て行く。
「心に余裕がある時じゃなきゃ楽しめないな」
と配偶者は言ったがさもあろう。
元々イラチ(短気)な人が多い土地柄だ。
ガチで注文を受けてから作るようで
料理が来るまで普通に10分は掛かるし、
気付かれず注文も取られずに出て行った人もいた。
しかしながら客同士が目を配り気を使い合うくらい、
店主夫婦は限界を越えそうないっぱいいっぱいだ。
そして飯は旨い! 確かに旨い!
また行きたいが絶対に紹介などしたくない!
(今以上にキャパオーバーにさせたくない!)
帰省ラッシュ初日の賑わいだったとも考えられるが、
おっちゃんがわざわざ声掛けてくれたって事は、
この店あるあるだよな。おそらく。
一晩眠ってからのまとめ
長らく「余裕が無ければ他人になど、
優しく出来ないし世間だって優しくしてくれまい」
と思っていたんだが、
どうやら余裕は関係無さそうだ。
「ちょっと無理すれば我を通せる状態」
が作ってあれば、
我を通させてもらった分は皆礼を言うし、
もっと我を通したい奴は通させる。
自分ばかりか周りで我を通しても良さそうな人に、
声掛けて真ん中のレジ勧めたりしているぞ。
ここに法的な視点が入ったらどうであろう。
「最後尾に並ばなきゃダメですよ。
皆さん並んでるんですから。それが平等です」
とやってしまっては公正かも分からないが、
世知辛いと言うかいずれ殺伐とする。
「電子呼び鈴を設置して、
確実に来客順に応対しましょう」
などと指導しては定食屋の御夫婦は、
確実にどちらかが倒れる。
一度食ってみて分かったが、
地元の人間は可能な限り末永くここの料理を味わいたい!
自らの意志を持ち強く示す事が、
こうした場ではまず何よりも重要になる。
それぞれが、
自ずと周囲にちょっとずつ気を使う状況だ。
決して悪くはない。