味わいを噛み締める(芹洋子『地底のランナー』)
はじめましての人も、
前から知ってる方も、
ごきげんよう。
偏光です。
ルルルンルンルーン♪
って1980年のアニメ
『花の子ルンルン』を思い出しそうだが。
(文字数:約1800文字)
好き嫌いとか、
良い悪いではない。
その土地土地や時代ごとの、
「味わい」といったものが存在し、
その独特の風味を感じ取れた時の、
何とも説明し難い興奮がたまらない。
例えば先日4月6日18時頃の、
MBSラジオで偶然耳にした一曲、
芹洋子『地底のランナー』
作曲:キダ・タロー
作詞:島田陽子
大阪市営地下鉄 開通50周年記念ソング
という情報も踏まえた上で、
まずは歌詞をご覧下さい。
50周年がすでに
1983年だ。
41年前だ。
生まれてすらいない方、
ご記憶も鮮明な方、
様々だと思われるが、
つまり大阪においては1933年時点、
第二次世界大戦以前に、
地下鉄が開通していたという事で、
その事実も併せて趣き深い。
改めて歌詞を堪能
……80年代だなぁ!
80年代の何たるかを、
端的に言い表すのは難しいけれども、
『地底のランナー』
ってタイトルがすでに、
意味は分からずともただただ、
横文字というだけでカッコ良かった、
時代の空気。
実は3番まであって、
3番とも歌詞が「闇」で始まりつつも、
芹洋子さんの歌声は希望に満ちて明るい、
語句と曲調との絶妙なギャップ。
ジェンダーバイアスあるがまま
そしておそらくは地下鉄を擬人化し、
「頼もしいから 好き
速いから 好き」
と芹洋子さん演じる女性に語らせている。
「お前の好みなんぞ知るか」
「ってか疑似恋愛ぽいイメージ何なん」
と2024年感覚であれば冷笑できても、
1980年代当時を生きていた、
皆様の心には甦るでしょう。
これすっごくイカした魅力的な女性で、
彼女に好かれて誉め称えられる、
地下鉄ってばまぁなんてステキ♪
って感じだったでしょう。
更にはラストのたたみかけ、
♪おおさかぁ〜 むすめはぁ〜
きょうもちかぁ〜てつぅ〜
ルルルンルンルーン♪
……「大阪娘」ってw!
待ってくれ。
私は何も馬鹿にして笑っているわけじゃない。
1980年代当時のこれは、
確かに小粋な言い回しだっただろう?
この当時の小粋さ軽快さ加減を、
記憶を遡って味わってみてくれ!
そして大阪府民であれば、
腕を組み大きく頷いてくれ。
さすがキダ・タロー先生と!
1983年にしても、
若干古めかしい印象はあるが、
「開通50周年」という歴史の重みに、
戦前のOSKレヴューの雰囲気も、
重ね合わせたものだろう。
あの頃のスター達が
(より正確に言えば、
あの頃であればスターだったような、
娘さん達が)、
今では大阪市内中を、
地下鉄で駆け巡っているんですよ。
みたいな感じだ。
ルルルンルンルーン♪
↑
気に入っとるやないか。
都会と農村のギャップ
とはいえ1980年代当時の私は、
九州の農村に住んでいたもので、
道路を走るのはリアルに軽トラと耕運機。
地下鉄どころか路面電車すら夢の乗り物。
おそらく当時の大阪府民であった方々よりも、
「華やかな憧れの大都会」感覚が強いので、
隣で聴いていた配偶者よりも心に響いて、
大まかな歌詞にメロディーも、
3番までの繰り返しを一回聴いただけで、
覚えてしまったようだ。
しかもラジコで聴き直して、
データを録音までしている。
味わいを噛み締める能力だけは、
人一倍あるようだと自負している。
懐かしの名曲や、
古典作品に触れる際は、
今現在の感覚で接しても何にもならん。
たとえ当時を生きていなくても、
遡ったその時代や、
その中で暮らしていた感覚を、
思い描いてみる事が重要だ。
強制はしないし出来ないが、
なるべくなら心掛けてもらいたい。
以上です。
ここまでを読んで下さり有難うございます。