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上方浮世絵館

 はじめましての人も、
 前から知ってる方も、
 ごきげんよう。

 偏光です。

 浮世絵と言えば江戸と相場が決まっているように、
 勝手に思い込んでいて申し訳無い。

(文字数:約2000文字)



法善寺西側鳥居の真正面

  なんば界隈をうろつく際には、
  ほぼ確実に入店する、
  老舗喫茶店アラビヤコーヒーに向かおうとして、
  ふと気が付いた建物だ。

  いつもは商店街側から向かっていたので、
  法善寺の鳥居はさすがに目に入っていたものの、
  その正面の建物を気にした事が無かった。

  この記事を見付けて行ってみたい人は、
  「法善寺」や「水掛不動」で、
  検索した方がスムーズ。


上方浮世絵て何ですのん?

  浮世絵と言えば江戸ちゃいますか?

  と小首を傾げながら、
  入館料大人700円を支払って中に入って、
  展示室に向かう階段の時点で、
  言われてみれば心付いたけども、

  道頓堀って江戸時代、
  芝居小屋に人形浄瑠璃小屋に、
  いろは48軒を揃えたいろは茶屋が、
  川沿いに立ち並びまくっていたから、

  そら芝居の宣伝ポスターに、
  役者のブロマイド的な絵姿くらい、
  描きまくって売りまくってたに決まってますがな。

  それなのに何で今、
  一般庶民にまで知られてはいないかって、
  芝居ごとにリアルタイムで制作・販売していたから。

  映画のパンフレットやグッズみたいなもの。
  公開している間は売れまくるけど、
  全部大事に保管している人も少ないよね。


天保の改革が拍車をかけた(多分)

  取ってきた無料パンフレットの文言を参考に、
  私の推測も混ぜ込みますが、

  老中水野忠邦が行った天保の改革、
  ってざっくり言っちゃうと、
  「幕府に今金無いから、
   庶民もみんなゼイタクすんなよ」
  なんて責任転嫁のとばっちり的な政策で、

  江戸は色数を抑えてその分、
  デザインを工夫する形で発展したんだけど、

  上方はサイズを小さくして、
  役者絵一人分ずつを持ち歩き可能にした。

  主な出演役者全員分を集めたら、
  芝居全体の名シーンになるという寸法よ。

  商売として上手い、とは思うけれど、
  なおさら各人で私蔵されて、
  後世に残る大作は生まれづらかったよね。

  しかしながら侮れないのは、
  じっくり1時間は見倒したくらい、
  役者の顔形や衣装の色柄模様が、
  まぁ細かい細かい。

  版画なんだよ?
  色増える度に版木制作と刷り工程が大変だよ?

  だからって(多分だけど)、
  手間を惜しむわけにはいかなかったんだ。

  この石川五右衛門ずいぶんとふくよかなんだが、
  と気になって、
  別の画家の別の芝居絵を見たら、
  やっぱり同じ役者が描かれてるし。

  約200年後の人間が見ても、
  同じ人物だと分かってしまうくらい、
  役者の個性を写し取らなきゃ、
  大阪の庶民は納得しなかったんだろうな。

  あと衣装を提供していただろう、
  京都の製造元に大阪の呉服問屋は、
  色柄模様の省略など断じて許さなかっただろう。

  冠なんて元の材質を思い起こさせるほどに、
  照りをつけたり透けさせたりしているもの。

  今に知られていないからと言って、
  絵師たちは当時無名でもなかったし、
  技術面で劣っているわけでもないんだ。

  歌川国芳や葛飾北斎あたりの、
  弟子だったり同輩だったり、
  どうかすると師匠だったりしてるもの。


練り物図

  上方独特の浮世絵として、
  練り物図、
  と呼ばれる物があった事については、
  特筆しておかねばなるまい。

  美人画は美人画でも、
  夏場に行われていた遊女たちの仮装行列、を、
  それはそれは卓越した技術に高価な画材を凝らして、
  写し取った図、だ。

  惜しむらくはこちらもサイズが小ぶりなんだが、
  コレクション的に全遊女集める奴とか、
  絶対にいただろうし、

  遊女たちも男装していたり、
  道教の賢者に扮していたりと、
  独特の倒錯趣味も見え隠れして、
  当時はめっちゃ面白かったと思うよ。


時間さえ許せば至福

  しかし何より圧巻なのは、
  最上階の休憩室。

  片隅の本棚にある、
  浮世絵の原画集が見放題だぜっ♪

  もちろん取り扱う際には手指を消毒して、
  背中に冷や汗を感じながら、
  慎重に一枚一枚を開かなくてはならないけどな。

  あと残念ながら
  「浮世絵刷り体験」にも使われている部屋なので、
  他のお客さんがいる場合には、
  その部屋を利用する事すら出来ないけどな。

  他に予定が無ければ、
  他の利用者さんとの都合さえ良ければ、
  閉館時間の18時ギリギリまで居続けたかった。


  こんな美術館が何とまぁ、
  私設だっていうんだから。

  上方の浮世絵師たちの研究が、
  未だ学術的には進んでいないって言うんだから。

  探究分析されている学術分野なんて、
  ほんの一部分だと知るべし。


  

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