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Photo by
soranositahajime
台にアニバーサリー東海【毎週ショートショートnote】
山の上だろうと海辺だろうと、求められる眺望は国土の端の側だ。
青い空に海原に、連綿たる緑地ないしは紅葉、あるいは珍奇な景勝が続く事こそ、平和であり幸福なのだ。
その眺めをもたらしてくれる台そのものが、讃えられる事は極めて少ない。
「俺たちも、昔はすっごく喜ばれてたのになぁ」
「あの頃の子供たちは、みんなどこ行っちゃったのかなぁ」
微妙に傾けられたまま長く動かされる事も無く、展望台の双眼鏡たちは悲しげである。
東海地方の東海ではない。東に海が広がる、東海村は茨城県である。
かつてはこの地からこの国初の原子力の灯が、遠く大阪は吹田の万博会場を照らし、国中を未来への希望で湧かせたと言うのに。
「アイツも最新技術の結晶だったのになぁ」
はるか海辺に見える白い箱状の台を眺めて、双眼鏡たちはぼやき続ける。
「テレビカメラが来たってアイツだけは映さないようにしちゃって」
「今動いてないし実はアイツだけ、中の仕組み違うんだけどな」
(409文字)
プリーズ彼らにもねぎらい。
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