![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/105533084/rectangle_large_type_2_9d6290d4c6e91e075eb67f1fe1ef2be8.png?width=1200)
Photo by
colibri
半分ろうそく水鏡【毎週ショートショートnote】
卓越した職人の技により、きっちりタテ半分に作られたろうそくが販売され、「燃える様子が分かりやすい」と一時期小学生の教育用に注目を集めた。
「火」そのものを扱う必要が無くなった未来の話である。
小学生くらいまではまだ、炎のゆらぎに太古の動物的遺伝子が惹きつけられるようで、「うわー」「すげー」といかにも可愛らしい声を上げながら見つめている。中学生になってまで眺めているようなら嘲笑され、高校生になってまで興味を持つようなら危険人物と認識されるが。
「どうして半分しかないのにまっすぐ立って燃えてるのかなぁ」
「半分しか無くても材料に変わりがなければ燃えるだろう」
「半分は水鏡になっているんですよ」
販売店の奥から職人が苦笑混じりに呟いたが、父親はより強い苦笑で返す。
「水なんか、どこにもないじゃないか」
「あるんですよ。火が燃えるそばには、どこにでも」
嘲笑いつつ父親は店を後にしたが、子供はなお深く首を傾けている。
(408文字)
あるんですよ。強いて付け加えますれば、
材料のみで燃えるわけではないでしょう。
いいなと思ったら応援しよう!
![偏光](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/83331409/profile_6bbbd26db033641cbeb0234c79a7de75.jpg?width=600&crop=1:1,smart)