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ミーはおフランスに取り憑かれ

 はじめましての人も、
 前から知ってる方も、
 ごきげんよう。

 偏光です。

 Pixivに投稿してきた小説以外の文章を、
 noteに移して行きます。

(文字数:約1500文字)


 イメージだけで決め付けてしまう事は、
 大抵の場合においてよろしくはない、
 と改めて思わされた話。

 5月のシャンソン教室は、
 我が敬愛するエディット・ピアフの、
 代表曲の一つであり、
 集大成とも言える一曲。
 『水に流して(Non, je ne regrette rien)』(1960年)

 2007年のフランス映画、
 『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』でも、
 ラストシーンに堂々と歌い上げられており、
 ファンの人気も根強い。

 この曲に関しては、
 大竹しのぶ氏が舞台『ピアフ』上で歌っている、
 越路吹雪氏の盟友、
 岩谷時子氏の訳がほぼ全てを表しているので、
 自ら訳してみようなどという、
 破廉恥な思いはさらさら抱けません。

 (余談ですが美輪明宏氏の訳も、
  そこまで言わなくていい気もするけれども、
  さすがに独自性に満ちて興味深いです。)

 抱けませんがしかし、
 頂いた楽譜に記載されていた「歌い方アドバイス」
 (出版物のコピーであり先生の御指導ではない。)

 「水の流れを表現している曲」には
 「ん?」と立ち止まった。
 フランス語の原題には「水」とか書いてないよね?

 気になったのでやっぱり今回も調べてみる。
 以下、ほぼ直訳。

  いいえ! 全く
  いいえ! 悔やんでなどいない
  私の身に起きた 最良も最悪も
  全て等しく私に相応しかった!

  いいえ! 全く
  いいえ! 悔やんでなどいない
  償われ 清められて 忘れ去った
  過去など知らない!

  思い出には火を点けた
  悲しみも喜びも 何もかもいらない
  愛した人達も 彼等の歌声も
  全て振り捨てて ゼロからやり直す

 うん。水の流れ一切出て来ない。
 むしろ火を点けて燃やしとるやないか。
 このタイトルはおそらくだけど、
 日本人の好みに合わせたイメージだろうから、
 そこに歌い方を合わせなくてもいいんじゃないのかなぁ。

 横で聴いていた配偶者(洋楽好き)が、
 ポツリと一言。

 「すみません。
  僕にはトイレの水に流している感じがします」

 失敬な。
 ああでも勢いとしてはそんな感じ。

 酸いも甘いも知り尽くした大人の女性が、
 過去と決別し押しも押されもせぬ姿で、
 自立した歌のように思っているけれども、

 最後の2行直訳。

  だって私の人生、私の命は、
  今日から始まるのよ、あなたと共に!

 「avec toi (アヴェック トワ)」?
 「avec toi」って言いました?

 いや怖いって。
 それ言われる「あなた」がものすごいプレッシャー。

 軽く調べてみたら23歳年下の歌手であり俳優、
 テオ・サラボと再婚した、
 その時の決意を滲ませた歌だと、

 されているんだけども、

 もう少し突っ込んで調べてみたら、
 テオ・サラボと結婚するのは、
 この曲が発表された2年後、
 ピアフがガンのため亡くなる1年前の事だ。

 それはテオ君腹をくくっているな。
 ちなみに遺産よりも負債の方が莫大で、
 彼はそれを全て返済し終えた。

 周知の事実としてすでに恋人同士だったかもしれないし、
 フランス人の結婚観は日本人のそれとは
 大きく異なっていそうな気もするけれども、

 だからこれは特定の個人に当てた
 「あなた」と言うより、

 「運命」とか「神様」めいた、
 何かしら大きなものを指す、
 「あなた」だったように思いたいなぁ。

 なのでやはり、
 岩谷時子氏の訳で間違いないと思うのです。

同じ箱:
谷村新司『昴』
歌い上げる感じ繋がり。
あと一人行く雄々しさみたいなものが。

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偏光
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